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中国の子供生活調査レポート【6】子育て実態 ~中国の子供は健康か?~

連載の最終回となる今回は、21世紀の未来を担う中国の子供の「健康」について、調査データから読み解きます。


我が子の健康、悩みは「目」「口」「肌」

上海で育児奮闘中の子育てママ1,200人に「子供の健康」について調査しました。何に悩んでいるのか、ズバリ聞いてみた結果は、「目(視力低下)」「口(口腔・歯)」「肌(乾燥/アトピー)」がトップ3でした。

子供の健康に対する悩み
(上海に住む、幼稚園児・小学生の子供を持つ母親 1,200名/2021年3月調査)

近視の子供が多いのはなぜ?

お悩みはダントツで「目」ですが、中国の子供たちの視力はどのくらいなのでしょうか。
2018年の調査で近視率を見てみると、6歳児は15%、小学生は36%、中学生は72%、高校生になるとなんと81%でした。日本の子供たちも視力低下のイメージがありますが、実態はどうでしょうか。文部科学省の「学校保健統計調査(令和2年度)」によると、中国と同様に年齢に連れて近視は多くなり17歳で64%にのぼります。しかし、中国はそれをさらに大きく上回っているのです。高校生10人のうち8人が近視になるとは驚きですが、この状況では子育てママの一番の悩みであることも納得です。

中国 子供の学齢別近視率
(「statista」のデータを基にマクロミルがグラフを作成/2018年調査)

そもそも、どうしてこんなに近視が多いのでしょうか。
5歳~17歳を対象にしたアンケート調査によると要因は様々あるものの、読み書きする際の姿勢が悪いこと、長時間のオンラインゲーム、スマホでの動画の見過ぎが上位の3つにあがっています。なるほど、こうしてみると共通点は、どれも近くのものばかりを見る生活習慣にあると言えますね。    

政府はこの現状を看過しているわけではなく、2016年に制定された「健康中国2030規則綱要」という健康と栄養に関する法律で、学校での健康教育や子供の近視を制御する措置を盛り込んでいます。ただし、子供たち自身が自分の大切な目を守る習慣を身につけるように教育されても、それだけでは根本的な解決にはならないでしょう。なぜならば、第3話でお話ししたように「受験戦争」の現実は厳しく、日々机について長時間の勉強に追われているため、目を休める時間が持てないからです。

中国の「塾禁止令」「オンラインゲームの週3日規制」は視力回復に繋がるか?

昨年、この問題の解決につながりそうな大胆な政策が打ち出されました。
そう、「塾禁止令(教育産業規制)」です。「受験戦争」の低年齢化が過熱して、1歳前から子供を塾や習い事に通わせる親が増える中で有料の塾や家庭教師を原則禁止に。まさに「元から絶つ」政策です。

さらに、就学児童に対しての取り組みとしても、小学校1・2年生の宿題とペーパーテストを禁止、上級学年の宿題を半減させるよう指導。今までは宿題が多すぎて平日は遊ぶ時間がほとんどなかったわけですが、これからは学校から帰ったらすぐに友達と外で遊ぶのが当たり前になるのでしょうか。
そうなれば、子供の宿題にかかりっきりになっていた子育てママたちも楽になりますね。また、中国の宿題はタブレットで行うのが普通なので、宿題が減ることで目への負担も減るはずなので一石三鳥!となるでしょうか。

そして、もうひとつびっくりの政策は、「オンラインゲームの週3日規制」です。
オンラインゲームに熱中している子供たちも、遊べるのは金曜日、土曜日、日曜日、しかもそれぞれ1時間だけになりました。オンラインゲームに費やしていた時間が減ればその分だけ目の休息になるでしょう。

子供の近視の要因
(「statista」のデータを基にマクロミルがグラフを作成 /n=1760/2018・2019調査)

我が子の健康対策。まずは運動、そして野菜の摂取

続いて子育てママが子供の健康のために取り組んでいることを聞いてみました。「よく運動をさせること」と「野菜を摂取させること」が群を抜いてトップ2でした。運動すれば体力増進になるし屋外であれば自然に遠くを見るので目には優しいですね。専門家によれば、屋外で運動することで近視の発生率は低下するそうです。また野菜をより多く摂ることで食生活が改善され免疫も高まります。近視予防効果のある野菜飲料や自然素材のサプリメントは益々人気が高まることでしょう。

子供の健康の悩みに対する対策 上位10項目
(上海に住む、幼稚園児・小学生の子供を持つ母親 1,200名/2021年3月調査)

子供専用商品を使いたい!オーラルケア、スキンケアは日本ブランドがNo.1

子育てママは、わが子の「目」に続き「口」「肌」を気にしているという調査結果でしたが、専門の医師も虫歯予防や皮膚アレルギーやダニ対策への踏み込んだ啓発をしています。それに呼応するように 、上述の調査では、オーラルケア商品やスキンケア用品については「子供専用」のものを使いたいというニーズが見えて来ます。中国では、子供が口に入れたり、肌につけるものは高品質で安心安全なものを使わせたいという意識が高く、国産よりも輸入品、中でも日本製品には高い使用意向があります。「オーラルケア」「スキンケア」に関する商品の原産国ブランドの評価を比較すると、日本ブランドがトップでした。子供の成長段階や用途に合わせて作り分けた商品提案や丁寧なモノづくりなど、まさに日本企業の強みが評価されていることがわかりますね。嬉しい事実です。

オーラル/スキンケア商品で好きな国のブランド
(上海に住む、幼稚園児・小学生の子供を持つ母親 1,200名/2021年3月調査)

ここまで6回シリーズ連載で、子育てママの観点から中国の子供の生活実態をレポートしました。
第2話でも考察しましたが、中国の子育てママは愛してやまない大切なわが子に対して、「責任感が強く、礼儀正しい、前向きで明るい子供」に育ってほしいと願っています。先行きが見通せない世界の中で将来どんなことが起きても、「大丈夫。健康第一、元気が一番よ!」という声が聞こえてくる気がします。

今回の連載では「中国」の「子供の生活」に焦点を当てましたが、国が違えば人々の価値観やライフスタイルなど文化的な背景は異なり、また市場は常に変化します。読者の皆様が、海外調査を通じて現地の生活者のインサイトにより深く迫り、時機を得た的確なマーケティング活動で「新たな価値」を創造されることを祈念し筆を置きます。

この記事を書いた人

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