中国の子供生活調査レポート【2】子育て実態 ~家事分担、育てママの悩み~
前回の「3人っ子政策、ゲーム規制、学習塾規制…今、中国で何が起きている?」では、中国の子育てママの世代に特徴的な価値観やライフスタイルについてご紹介しました。今回は、その子育てママが抱える育児の悩みについて、マクロミルが実施した調査結果から迫っていきます。
調査で見えた、中国家族の育児・家事の役割分担
日本の場合、子育てママが産後に職場復帰するためには、子供の預け先を決めることが先決ですね。とくに大都市ではそもそも保育園不足ですし、何とか入園できても子供の発熱で連絡がくるのは母親宛てだったり。職場復帰をしても子供のことを気にしながら働いていて気苦労が絶えない方も多いのではないでしょうか。さて、昨年1,000万人超の赤ちゃんが誕生した育児大国の中国ではどうなのでしょうか。
中国では、子育てママの多くが出産後早々に仕事に戻り、出産前と同じように活発に働きながら生活を支えつつ、自己実現を続けています。それを可能にしているのは、まずは、親の存在。調査結果では、子どもの食事、送迎や遊び相手など、日々の生活の世話は、親が貴重な戦力になっていることが分かりました。日本では、「自分が病気や急用でどうしてもできないような場合に限って保育園の送迎を頼む」ということも多くあると思いますが、送迎だけでも親が代わってくれたら、そこだけでも大きな手助けですね。
そして、中国では旦那さんが買い物をして夕食を作ったり家事を主導したりといったことは普通のことだったりします(特に上海の男性はそうだと言われたりします)。
しかし、家族が子育てや家事に協力的だからといって、子育てママ自身にかかる負担が軽いのかというと、実際はそんなわけでもないようです。下記の図のように日々の世話から遊び相手まで、全てに渡って母親がメインで担当していることが分かります。「何だかんだ言ったって私が一番大変なのよ!」という子育てママの声が聞こえてきそうですね(笑)。
子育ての役割分担
そして、「勉強」の分担率が大変特徴的でした。母と父、夫婦でタッグを組み臨んでいる様子がうかがえます。では、一体どのくらいの時間、子供の勉強に付き添っているのでしょうか?
子供の勉強、幼稚園~小学校高学年で平均1日72分!
驚くべき調査結果が出ました。
幼稚園から小学校高学年の子供をもつ夫婦は、1日あたり平均でなんと72分間も勉強の監督をしていることが分かりました。比較的時間をかけない幼稚園児の親でも約半数が毎日1時間以上を費やしています。学齢が上がるほど費やす時間は多く、小学校の高学年児童の親は平均で98分、120分以上費やす親も約1割存在しました。
今、日本で子育て中の皆さんはこの結果をどうご覧になるでしょうか。仕事、飲み会、その後に帰宅し、それから勉強を教えるというのは、なかなかハードなこと。中国の親はとても教育熱心なことが分かりますよね。
1日あたりの勉強監督時間(母親+父親)
分かって欲しい!子育てママの悩み
教育熱心な中国の子育てママの心の中を覗いてみましょう。
昼間は外で仕事をし、帰宅後に家事をこなし、さらに子供の勉強を長時間みて・・・何でもできるスーパーウーマンの姿を思い浮かべます(笑)。
でも、そんな子育てママも悩みはきっとありそうです。どんな悩みを抱えているのか調査結果から見てみましょう。
子育ての悩み(上位10個)
子育ての悩みの1位は、「子供と過ごす時間が足りない」「子供への教育方法が正しいかわからない」が同率でした。
何だかしっくり来ませんよね。毎日長い時間、子供の勉強をみているのにも関わらず、子供と過ごす時間が足りないというのは、少々矛盾しているようにも感じます。
データを注意して見てみると「悩み」の内容は子供の学齢によって違いがあって、幼稚園児の母親は「子供と過ごす時間のなさ」に悩んでいるのですが、子供が小学校に上がると「夫婦間での教育の考え方や意見の違い」に、さらに小学校の高学年になると「子供とのコミュニケーション」に悩んでいることが分かりました。ここからは、子供がまだ小さい幼稚園のうちは、もっと子供と過ごしたい、そばにいてあげたい、それなのに自分は昼間は仕事で不在、夜は勉強ばかりさせてしまって・・・という意識があるのでしょう。
また、子供の教育の考え方や方針に、自信がないようです。学齢が上がると夫婦ともに子供の勉強が気になってくるものですが、その際に夫婦での考え方の違いから意見が合わずについつい口論するような場面も目に浮かんできますね。
では、中国の子育てママは大切な我が子に、どのように育ってほしいと願っているのでしょうか?
子育てママが子供に期待すること
教育熱心で、子供の勉強に毎日長時間付き添っている姿からは、子供に期待することは「知力や学力」につながることが筆頭に来るのではと思いきや、意外な結果でした。
子育てママは子供に対して、「責任感が強く、礼儀正しい、前向きで明るい子供」に育ってほしいと願っていることが分かりました。競争社会で勝ち抜いていくために学力は大切、だけれども、将来どんな変化があろうとも、一人の人間として社会への適応能力をしっかり身につけてほしい、という健全な親心が表れています。
その一方で、社会の中で責任を果たしていて礼儀正しく前向きで明るい人物・・・からは、理想的なリーダー像もイメージされるので、上昇志向が強い世代の子育てママとしては、わが子にはちゃんと出世もして欲しいという気持ちの表れでもあるのでしょう。
子どもへの期待(どのような子供に育って欲しいか)
ここまで、子育てママの育児の実態や悩みについて見てきました。次回は、視点を変えて子供の生活実態についてお伝えします。お楽しみに!
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