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納品後もできることを問い続ける。社会課題解決におけるクリエイターのあり方【一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO】

互いに信頼し合える間柄であるからこそ、営利関係を超え、未来の可能性を共創できる。そう信じるわたしたちは、「恋に落ちるくらい好きになった相手としか仕事をしない」ことを大切にしてきました。

共に未来を創っていくパートナーでもある団体や企業の方々を紹介する本企画、『わたしたちが恋に落ちた、あの人』。社会課題解決の現場で挑戦されている皆さんの想いや葛藤、そして弊社とどんなコラボレーションが生まれたのか、対談を通じてお届けしていきます。

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今回お越しいただいたのが、2016年4月14日の熊本震災をきっかけに誕生した一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO代表の佐藤かつあきさん。対談相手は、morning after cutting my hairの代表かつBRIDGE KUMAMOTOの理事も務める田中美咲でお届けします。

/// LOVERS /// 一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO
2016年熊本地震をきっかけに設立された一般社団法人。「創造的な社会への架け橋になる。」ことをビジョンに掲げ、メンバーのそれぞれが本業を持ちながら、プロボノとして参加・運営。
熊本地震の被災地の屋根を覆った、廃棄ブルーシートを回収・洗浄してトートバッグにアップサイクルし、売り上げの一部を被災地に寄付する「ブルーシードバッグ®」は、これまでに3,500個を売り上げ、寄付は約300万円に及ぶ。
https://bridgekumamoto.com/

BRIDGE KUMAMOTOとは、田中美咲が代表を務め2020年に解散した「一般社団法人防災ガール」のときに出会い、さまざまな活動を共にしてきました。今回取り上げるのは、弊社とBRIDGE KUMAMOTOが共同運営した半年間限定のオンラインコミュニティ「Social Design Monster’s Labs」です。

ソーシャルデザインの制作者本人に裏話を伺ったり、海外の事例を用いて議論をおこなったり。クリエイティブの力で社会課題を解決したい人たちで集まり、デザインを共に考える全6回のプログラムです。

令和2年7月豪雨で感じた“クリエイティブの力”

ーー2021年8月から2022年1月までの半年間おこなったオンラインコミュニティ「Social Design Monster’s Labs」。その誕生の経緯を教えてください!

田中美咲:令和2年7月豪雨の時に、かつあきさんを中心にクリエイターのボランティアが集まるFacebookグループを立ち上げたんです。コロナ禍だったので、現地支援はできなくても「被災地のために何かしたい」と思うクリエイターがたった1日で100人くらい集まって。その時に改めて「クリエイティブの力」ってすごいなって思いました。

でも、災害が落ち着いてくると、その熱量は平時に戻って、だんだんとみんなが離れていく。仕方ないとは思いつつ、何かもっと継続的にソーシャルデザインの力で社会課題解決ができたらいいよね、長期的に繋がれる仲間ができたらいいよねってかつあきさんと話していたんです。

一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO 佐藤かつあきさん

佐藤かつあきさん(以下、敬称略):そもそもクリエイター向けのコミュニティをやってみたいなとは思っていて。でも、なかなか僕らだけの力では、いいアウトプットが思いつかなかったんです。そこで、morningに入ってもらうことで、ちゃんと形になりそうだと。欠けている大きなピースが埋まるというか。まずは、半年と決めてやってみようという話になって、その日に速攻でトップ写真を撮りました(笑)。

「日本にいる自分だからできること」を探した半年間

ーー実際に半年間やってみて、印象に残っていることはありますか?

かつあき:世界のソーシャルデザインの事例をみんなで見て議論した時間がすごく印象に残っています。自分1人で考えるよりも、明らかに視野が広くなって、理解も深まる。海外在住の方からは、ちょっと違った視点をもらえて僕自身がすごく学ばせてもらいました。

「Social Design Monster’s Labs」でおこなった3つのこと

美咲:海外では”メッセージ性の強い作品”として許容されるものでも、日本では受け入れられない可能性があります。「それってどうしてなんだろうね」とか「日本だったらどう表現されるんだろう」とか、日本でできることを中心に議論できたのがすごくおもしろくて。

今は国境や文化を超えてオンラインでつながることはできるけれど、やっぱり私たちが一番届けやすい場所は日本だと考えたとき、自分たちだからこそできることってなんだろうと考えるいい機会になりました。

かつあき:参加メンバーの中には、選挙のときに投票を促すイラストをmorningと作っている方もいて、すぐに実践してくれたことに感激しました。スピードの速さも、クオリティの高さも、選挙を楽しいものにしたいという想いの強さも、すべてが揃っていて、クリエイティブは最高だなって改めて思いましたね。

選挙も楽しく、ポップにいこう。GOVOTE🗳
”私たちが望む未来を私たちの手で” byイラストレーター引野裕詞さん
詳細はこちらのnoteから

納期のある仕事と、終わりのない社会課題

ーー「いいことをやっていても伝わらない」という課題を抱える企業や団体は多く、morningはそういった方々を応援したいという想いで生まれました。「伝わる」をもたらすクリエイティブ、「なかなか伝わらない」ソーシャル領域。マッチできれば、強い力を発揮しそうです。

morning after cutting my hair 田中美咲

かつあき:本当にそうなんですよ。社会課題解決においてクリエイターができることはたくさんあると思っています。ただ、若手が参入しづらい。というのも、クリエイターは「納期ありき」「締め切りありき」の仕事が多いんです。

でも、ソーシャルデザインは何か納品したとしても、終わりがない。関わり続ける必要があります。ずっと続けることを前提に、自分の生活も回していかなくちゃいけない。なかなかハードルが高いんですよ。

美咲:だからこそ「Social Design Monster’s Labs」のゲストの方々も、できるだけ参加メンバーの視点に近い方をお招きしていました。大手企業の大御所クリエイターではなく、“ちょっと先をいく先輩たち”というイメージ。距離が近い人たちのほうが「どうやってやりくりしてるの?」と、リアルな悩みを相談できますよね。若手が話しやすかったり、実際に現場で応用ができたり、そこは強く意識していたポイントです。

かつあき:美咲さんともよく話すんですけど、デザインは悲観的に見ると誰かを傷つける可能性を秘めています。9.11以降、その意識が特に強くなりました。「誰も傷つけないため」のデザインの普及はすごく大切であると同時に、見た人の心が動いたり、感動させるようなクリエイティブは減ってしまっている。どうしたらいいのか僕も答えが出ていないし、非常に難しい問題です。

でも、それをぶち壊す人は必ず出てくると思っていて、それは絶対に若手であると僕は思うんです。だから、そういう若者がのびのび歩けるように、経済的な悩みにしっかり向き合ったり、大人が余計な邪魔しない道を残しておくことが僕らの責任なのかなって。

若手クリエイターが活躍できる道を探して

ーー「誰かを傷つけないために」という気持ちが、結果として厳しいチェックリストのような、「しなければならない」に変わってしまっている現象は、最近よく感じますね...。でも、BRIDGE KUMAMOTOとmorningの共通する強みは「社会課題をポップに楽しく」表現できるところなのかなと思っていて。

かつあき:そうですね。僕らは、「一般社団法人防災ガール」の影響をかなり受けています。「防災をポップに、おしゃれに」と聞いたときに、「あ、これでいいんだ」と勇気をもらったんです。災害に限らず社会課題はシリアスな話ではあるけど、明るく楽しくやるスタイルがあってもいいじゃんって。

もちろん、考え得ることは考えたうえでですが。ただデザインするだけではなくて、それを印刷する紙は、インクは、電気は、ちゃんと環境配慮されているのか。誰かの生活を脅かしてはいないか。僕自身もすべて網羅できているとは思えないけど、できるだけ広く意識したうえで、相手も自分たちも楽しいクリエイティブを作っていきたいです。

弊社がPRをお手伝いさせていただいた、ゴミからできた万華鏡「REF」。
BRIDGE KUMAMOTOでは、ソーシャルデザイン手法で
社会貢献性の高いさまざまなプロダクトを開発しています。

美咲:私たちもBRIDGEメンバーとの取り組みには本当に学ばせてもらっています。先程「社会課題解決には終わりがない」という話がありましたが、終わりがないにも関わらず、morningしかり、やっぱり自分たちのリソースや資金で限界を決めてしまうことが多いんです。仕事するうえでは当たり前のことなんですけど、やりたいことは社会課題解決だと前提に立ち返ったとき、本当にそれでいいのかなって悩むことがあります。

それに比べてBRIDGEのメンバーは、ちょっと変な言い方ですけど、いい意味で納品のことを考えない(笑)。納品したあとも、できることを考え続けている。

かつあき:単発の受注発注ではなくて、ずっと関係が続いていくってことだと僕は思うんです。自己を犠牲にして続けろってことではないですが、社会課題を解決しようと思ったら、長期的な視点でものを見ることが大切ですよね。

ーー最後に、かつあきさんが今後1人のクリエイター、デザイナーとして挑戦していきたいことを教えてください!

かつあき:いろいろあるんですけど、最近は行政からの依頼も増えてきています。最初は単発のデザイン依頼だったとしても、だんだんと「都市整備のブランディングのアドバイスがほしい」など、もっと上流からの依頼がもらえるようになりました。

それは本当に小さな積み重ねでしかなくて、例えば、街づくりの仕事に関わりたかったら、市が管轄する地下道をグラフィックに落とし込んでみたり、世界の事例をお伝えして、それをこの場所でやるならどんなふうにできそうか一緒に考えたり。「クリエイターは、もっとソーシャル領域で活躍できること」を、どんどん示していけるような存在になれたらと思っています。

ご出演
一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO
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対談の様子をPODCASTでも配信中

こちらの対談は音声でもお聴きいただけます。文章は少し編集を加えているものですので、より詳しく、生の声で聴きたい方はぜひご視聴ください。


morning after cutting my hairでは、企業・団体の皆さんの価値観や大切にしている想いを細やかにヒアリングし、議論を重ねた上で、「本質的な社会課題解決」を加速させるご提案をさせていただきます。

何か迷うことやお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事が参加している募集

オープン社内報

SDGsへの向き合い方

Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。