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37年前からこのたまプラーザの地で歯医者をやってます。

37年前からこのたまプラーザの地で歯医者をやってます。趣味は仕事で、表に出ることはほとんどありません。毎日忙しく働いております。これまで、およそ4万人近くの患者さんを診ているかな。ただしそれは、再初診も含めての通しですけど、ですからあんまり遊びに行く時間がないんですよね〜、はい。

私の親父も女房の親父も歯医者なんですね。女房の親父が自宅開業なんですよ。朝ごはん昼ごはん晩ごはん、大変なお母さんを見てたんで、自宅開業だけはやめてって言われてましてね。女房の親父の診療所を2年ぐらい手伝ってたことがあるんです。大田区の江原町っていう昔からの商店街でした。その時に、材料屋さんがチラシ持ってきて、それでここを見つけたんです。でも、もともと物件は探してなかったんですよ、実は。開業すると遊べなくなるのが嫌で、私大学病院に残って、ほかのとこにも勤めて10年くらいウロウロしてたんですけど、ま、子どもができたっていうのが開業理由ですね。

たまたまその頃、たまプラーザによくテニスに来てたんですね。だから駅周辺は知ってたんです。ま、当時は駅も平屋でしたし、もう田舎。ローカルの街っていう感じでしたね。でもここでいいんじゃないかなって、実に安易な選択なんです。初めて見に来たとき、夜来たんですよ。物件はまだ完成してなかったです。外壁とガラスは入ってましたけど。夜でしたからその日は中を見れなかったんですが、1時間ぐらいこの周りを歩きまして、もうそれで決めました。それで、じゃあ中を見せてもらおうかって、今度は休みの日の昼間に来て、でもまだ工事の途中ですから中はなんにもなくて。でも決め手は表がよく見えたから。僕の条件は、表が見えて、その景色がいいこと。診療所って結構どこも、腰ぐらいの位置からの窓が多いんですけど、ここだと床から30センチぐらいのところから天井まで、もう上から下まで全面ガラスです。基本的にはブラインドを縦にしておけば、景色はもう全面見えます。表が見れないとやっぱりこれね、何十年もやるのは精神的に無理だと思います、はい。もう朝8時から夜の10時頃まではここにいますからね。だから決め手はそれですよ、表が見える。あと、あんまりごちゃごちゃしてるところってなんか嫌で。たまプラーザは空間が広いっていうか、郊外のこの空気がいいというか。でもここは、当時から高かったですねー、いや、バブルの前です。たまプラーザって高いんですよ。条件がこう、いろいろあるじゃないですか、保証金とかそういういろんなもんが。高かったですねー。でもあの私楽天家なんで、ま、いっかなって。

好きな場所は…、うちの診療所の前って、欅並木なんですよ。これから、7月、8月あたり、どんどんどんどん枝が伸びてくると欅でトンネルができるんですね。欅が大きいから枝が垂れてくるんですよ。それでこうトンネルみたいになるんですね。ちょうど診療所からちょっと行ったところに、上が道路の橋が架かってるんです。その橋に向かって見ると、欅のトンネルが橋の上にかかって、そのマッチングが良くて、いい景色なんですね。でもその欅のてっぺんは、私が開業した37年前は2階の私の診療室までだったんですよね。現在は向かいの6階建てビルの、その上までいってますね、はい。やっぱり40年近い成長ってのはすごいですね、欅は大きくなりますね〜。

その欅のトンネルは、夕方ちょっと涼しくなってくる時に見るといいかな。あとは帰りに、車でちょうどその下をくぐる形になるんで印象的ですね。ここ10年くらい、そうですね、それが一番好きですね。

ただ最近その欅の枝の切り方が変わってきまして、結構バッサリ切るんですよ。冬、枯れてくると枝が落ちて怪我したりするっていうので、バッサリほんっとに短く。それでなかなかトンネルがですね、最近できなくなりましたね。でもワンシーズンでどんどん伸びるんで、それでも夏には結構そうなりますけど。うちは窓の真ん前に欅がいっぱい並んでますから四季の色彩は、もう目の前でどんどんどんどん変化しますね。秋はね、だんだんだんだん赤くなってきて、そうすると下がもう落ち葉で大変。みんなで箒ではいてます。面白いことに、木の立地条件によって日当たりが違うんで、新緑や紅葉や落ち葉の時期がずれます。全然違うんですよ。

そんなふうで、だから、患者さんの口の中よりか表を見ている時間が実は長いんです、なんちゃって、あはは。

いま現在、診療所は息子と一緒にやってます。あと娘と。多分息子はそのままやるでしょう。できれば、息子がそのまま引き継いで、たまプラーザを見届けるような形になってくれたらやっぱり嬉しいですよね。たまプラーザはこのままの空間を駅の周りに維持してくれるといいかな。散歩するのに非常にいい雰囲気ですよね。東急田園都市線の中では、多分この空間を持ってるところはたまプラーザだけかなと思います。今のまま、そのまま変化しないといいなと思っています。

インタビュー:2020年 夏

このおはなしは2020年No.007号に収録されています。

この度、2014年から発行を続けてきた冊子「街のはなし」1号〜9号を1冊の書籍にまとめることになり、クラウドファンディングを始めました。

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昭和のニュータウンの温故知新。
住民のまちづくりの努力の蓄積と街の成り立ちを共有したい。

100人のナラティブ・地域の変遷と社会の変化を伝える 記憶を記録する本
たまプラーザ「街のはなし」書籍化プロジェクト

すでにご寄付をいただいている方には、御礼申し上げます。とても励まされております。そして、これまでご協力・応援してくださったみなさまにも、オンラインの寄付を通して、書籍化プロジェクトの仲間になっていただけたら嬉しいです

街のはなしHPでもこれまでの活動を見れます。www.machinohanashi.com
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企画・文: 谷山恭子
写真:小池美咲

編集・校正: 谷山恭子・藤井本子・伏見学・街のはなし実行委員会

発刊:街のはなし実行委員会

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