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今、たまプラーザも開発から時が経って、まちが更新されていってる。大胆ですが、空いている土地なんかを自然に還していくみたいな、「原始化していく」みたいな、「田園と都市の混ざり合い」がうまくいくといいのかなって思ってます。ひとつの妄想ですけど。

私がいつもいるのが、WISE Living Labっていう建物で、その中の共創スペースっていうところです。ちょっとぜいたくなぐらい広くて、ここにひとりしかいない時は、本当にぜいたく。2016(平成28)年の8月31日に、仮オープンして、それからどんな大雨でも大雪でも、出勤の曜日の日は通っています。

あの空間から、外を眺める。
この4年間、あの景色をずっと見てきた、って思いますね。お向かいが団地ののり面で、のり面の下半分ぐらいがコンクリートの壁で、上半分が芝生みたいになってるんですね。で、さらにその上にこんもりと木があって。だからこう、眺めたときには、のり面の半分から上は、緑と空、みたいな感じで、すごくすがすがしい。本当に色がきれいなんですよねー。新緑の時はすっごい黄緑の、明るーい黄緑がきれいで、だんだんこう緑が濃くなってって、で、ハッと気がつくと、あ、そろそろ枯葉だ、みたいになってきて。ユリノキ通りのあのユリノキの葉っぱが、ものすごい落ちるんですよ、一気に。もう膝丈ぐらいになる時がある。その、枯れ葉が一気に落ちる前がドキドキするんですけど。その風景が大好きというか、とてもいいなと思ってます。

季節としては、やっぱり秋がきれいなのかなー。黄金色っていうか、一瞬だけど全部が黄金色になるんです。まあだから、街の中で一番好きな場所はそこかな、と思ってます。

さかのぼると、2012(平成24)年に、横浜市さんと東急さんが、郊外住宅地をもっとこれから良くしていくためにも、協力していきましょうっていうことで「次世代郊外まちづくり」が始まりました。住民の皆さんが大勢参加されてワークショップやグループディスカッションを毎回運営するファシリテーターとして私、入ったんですね。そして「まちづくり基本構想」がまとまった後に「住民創発プロジェクト」といって、住民の皆さんの発意からの活動を支援・サポートしようっていう枠組みができて、その窓口を担当して、そして関わり方がどんどん変わってきて、まちづくり拠点として共創スペースがオープンして、その運営担当っていう形になりました。私、いつもこう、団地の壁を見上げながら、この壁の奥には、あんなに大勢住んでるのに、その人たちとあまり知り合えてないんだなっていうのを思ってるんですよ。もしもあの壁の向こうにオフィスがあったら、もっとすごく出入りがあるのかなとか。こちらからもっとこう仕掛けていって、若い世代とかがちょっと寄り道してくれるような、大勢の人がちょっとずつでも関われるような場所になっていくといいなっていうのはいつも思ってます。

共創スペースはただの貸しスペースではなくて、「次世代郊外まちづくり」の拠点として、住民、行政、大学、企業、学校と、今までまちづくりのプレーヤーとしてやってきた人たちも、あるいはやってこなかった人たちも入ってこられる拠点にしようと。「次世代郊外まちづくり」の目的にあった課題解決や価値創造を目指す場なんだという方針が徐々に明確になっていきました。なので本当に、いろんな人が来てくれてるんですね。子どもも、ちっちゃな子連れのママさんも、高校生、大学生、企業の人も、入れ替わり立ち替わりいろんな取り組みの話し合いとかで。今まで二者で解決できなかったのが四者とか五者、いろんな人が混ざり合うことで、創造的なプロセスを生み出そうっていう場面がすごくつくれてる場所だと思います。一昨年、共創企画としてこの場所を貸し出して「チッチェーノ・チッタ」っていう、役所とか警察署とか小学校とか商店街とか、もういろんな人を巻き込んじゃって大人と子どもで街を作ろう、っていうイベントが開催されました。駐車場も、隣のカフェの前のウッドデッキも、カフェの中の一部も、もう使える場所は全部使ってもらいましたが、ぎゅうぎゅうでした。こんなに多世代が、本当の意味でコラボできる場って実現できるんだなって、その風景は本当に感動的でしたね。一番印象的な使われ方でした。そういう風景が作れるっていうことが、あの場所のミッションだと感じました。

実は私、田園都市線の人たちは、もう毎週末ファーマーズ・マーケットみたいなのをやってるんだと思っていたんですよ。でも最初この街に来たときに、あんまりそういうのやってないんだなって知って、ちょっと意外だったんですよ。田園都市なんだけどそんなに田園ぽくないんだなって。むしろ街なみは整然としていてきれいで、あまり「農」とかいう感じもしなくて。でもちょっと行ったらすごい自然があるじゃないですか。そういうことがあまり暮らしに染み出していないっていうか。最初の基本構想づくりワークショップの頃に、住宅街の中の土が固くなっちゃってるようなちっちゃな公園を畑にしちゃえば、とか、クルドサックのその真ん中の所、もともと緑なんだからちょっとハーブとか植えて、街路樹も桃とかマンゴーとか実のなる木を植えればいいんじゃない、みたいなアイディアも出てたんですよ。

今、たまプラーザも開発から時が経って、まちが更新されていってる。大胆ですが、空いている土地なんかを自然に還していくみたいな、「原始化していく」みたいな、「田園と都市の混ざり合い」がうまくいくといいのかなって思ってます。ひとつの妄想ですけど。

インタビュー:2020年 夏

このおはなしは2020年No.007号に収録されています。

この度、2014年から発行を続けてきた冊子「街のはなし」1号〜9号を1冊の書籍にまとめることになり、クラウドファンディングを始めました。

シンカブル(Syncable)からご寄付いただけます。

昭和のニュータウンの温故知新。
住民のまちづくりの努力の蓄積と街の成り立ちを共有したい。

100人のナラティブ・地域の変遷と社会の変化を伝える 記憶を記録する本
たまプラーザ「街のはなし」書籍化プロジェクト

すでにご寄付をいただいている方には、御礼申し上げます。とても励まされております。そして、これまでご協力・応援してくださったみなさまにも、オンラインの寄付を通して、書籍化プロジェクトの仲間になっていただけたら嬉しいです

街のはなしHPでもこれまでの活動を見れます。www.machinohanashi.com
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企画・文: 谷山恭子
写真:小池美咲

編集・校正: 谷山恭子・藤井本子・伏見学・街のはなし実行委員会

発刊:街のはなし実行委員会

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