「誰がやるのか」問題

デジャヴのような光景

課題認識はしたけれど。。。

最近、デジャヴのようにいろんな自治体で(偶然なのか?)同じような場面に遭遇しています。

最近の(意識していなかったですが連動する)noteからの延長にもなりそうですが、せっかく「明確な課題認識」に辿り着いたにも関わらず実践までが遠い。。。というあるあるネタ。
そして、どこでも似たような言葉が担当者から出てきますし、(自分が公務員だった時代と比較して圧倒的に業務量・質が増加しているなかで表面上の働き方改革・コンプライアンスなどの面倒な)状況は確かにわからなくもないです。

忙しい

「忙しくて新しいことに手が回らない」
限られた職員数で数多くのルーティンワークをこなしている現状は、確かに「忙しい」でしょう。しかし、プロなので「忙しい」のは当たり前です。多様な市民ニーズや業務をこなしていくことは最低限やらなければいけないことです。

ただ、忙しいことは「目の前にある課題」に対して時間を割かなくて良いことの言い訳にはなりません。

専門知識がない

「やろうとは思っているけど専門知識がない」
目の前にある課題、特に人口流出・空き店舗や空き家の急増・税収の激減・公共施設等の老朽化といった「まちの衰退」に直結する目の前にある課題は、これまでの行政が直面したこともなければ、国からの文書で答えが示されているわけでもありません。コンサルや学識経験者に頼っても無駄ですし、市民ワークショップでお茶を濁せるようなものでも、マニュアルどおりにケリがつくものでもありません。

頼るものがないから、「今」の自分に知識がないからといって、目を背けて良いわけではありません。

自分の仕事ではない

「事務分掌で位置付けられていない(引継書に書かれていない)から自分の仕事ではない」
前述のように、目の前で起きている「まちのリアルな問題」は旧来型行政の思考回路や表層的な行財政改革で太刀打ちできるものではありません。事務分掌に簡単に位置付けられるものでもありませんし、仮に記したからといって問題解決に直結するわけではありません。上司や幹部職は自己保身(や部下の苦悶を回避)するため目を背けようとするかもしれません。

自分の仕事ではないと現実逃避しても、何も変わりませんし事態は刻一刻と悪化していき、取れる選択肢が減っていきます(最後に残るのは魔改造か爆破w)。

「誰がやるのか」問題

気づいた人の責任

上記の根本的で共通する問題は「誰がやるのか問題」です。
自分の師匠でもある建築保全センターの池澤龍三氏がいつも言っていることですが「残念だけど気づいた人の責任。誰かがやってくれると思って待っていても、それが叶うことは(行政では)ない。気づいた人が自分でやるしかない。」
本当にそのとおりだと思います。

裏を返せば、「気づいているのに(言い訳して)やらない」のは不作為でしかありません。忙しいし、(当該分野の)専門知識もないし、自分の(与えられた)仕事ではないかもしれません。
難しいけれど、「誰か」がやらなければ絶対に良い方向には向かいませんし、現在進行形の課題で不可逆性のある問題だからこそ、「今」やることが最も効果的なのです。

忙しいからこそ

「忙しくてできない」と思考停止する前に、「忙しいからこそ」やってみることが大切です。
自分も公務員時代、ピーク時には(随意契約保証型の提案制度での協議対象案件が他のプロジェクトと重なったこともあるのですが、)約10本のプロジェクトを並行してやっていました。さすがに何がどこまで進んでいるのか把握が難しかったので、付箋などで毎日、状況確認をしていました。

このときに結果として良かったのは、「忙しいから細かいことを考えすぎない≒考える時間がない」「ある程度のところで見切りをつけて走らせる」「外部へ早くリリースして仲間をつくる」といったことを必然的に求められたことです。
同時に、検討時間が少ないからこそ「そのプロジェクトを検討するときは全集中」できますし、「他のプロジェクトでの課題を共通項として、それ以外のプロジェクトでも類似の課題を潰す」ことができました。

外部と連携

ひとりでやれる業務量はどうしても限られます。
だからこそ外部と連携するのです。外部は自分以外の人全てを含みます。課内・組織内の人もそうですし、もちろん地域プレーヤー・大手事業者・市民なども含まれます。
「自分の手足」として使おうとするのではなく、それぞれの主体にとってメリットのある形(庁内であれば「その課の業務・課題に貢献する、民間事業者であれば「ビジネスに直結する」、市民であれば「自分の生活が良くなる」など)とすることが大切です。相手の立場にたって関係性を構築することが、結果的に自分の作業量・業務範囲を最適化することにつながります。

専門知識もこうしたなかでフォローアップできます。
公務員時代にESCOを実施した際は、当時の流山市には機械設備の技術職が一人もおらず電気の技術職も数名で、数多くの空調・衛生・電気設備の更新工事に難儀していました。ESCOで設計・工事・維持管理運営にエネルギーマネジメントまで包括委託することで専門性を補完していました(恥ずかしながら当時はEHPとGHPの違いすらわかりませんでしたが、そうした技術的なことは教えてもらえば一撃でケリがつきます。)

包括施設管理業務もファシリティマネジメントを進めようと意気込んで財産活用課に異動したときに、前任者から「庁舎関連の10本以上の保守管理業務委託あるから、全部仕様書つくって入札にかける、よろしくね!」と渡されたのにブチ切れ、「アホか、こんなのまとめて委託すればいいだろ!」となったのが発端でした。

いずれも、(当時はまだサウンディングという言葉はありませんでしたが、)それぞれを構想段階から相談できて、ビジネスとして解決できる民間事業者とのネットワークを構築していたことが大きなポイントでした。

プロジェクトチーム

ひとりでは多くのプロジェクトを進めていくための膨大な業務量をカバーできないだけでなく、専門知識やマンパワーも不足します。そして行政であれば「自分の業務上カバーできない領域」も多く存在します。
ひとつのプロジェクトのために人事異動を発令したり、専門部署を組織してもらうことも困難ですし、時間もかかります。
そうしたことを考えたときに有効かつ現実的な選択肢がプロジェクトチーム、タスクフォースです。

前述の包括施設管理業務の際には施設所管課を中心に企画・財政・法務の担当者からなる施設管理協議会を組織し、優先交渉権者も一緒になって同じ場で車座になって契約に向けた協議を進めました。
随意契約保証型の民間提案制度では、それぞれの案件ごとに専門のタスクフォースを構成し、事業化を図っていきました。

この流れを受けて、現在まちみらいで支援させていただいている自治体では、プロジェクトごと、あるいは様々な案件が持ち込める案件協議の場を設置して、効率的かつ高度な専門性を持った進め方をしています。

プロジェクトチームによる検討
案件協議の場

やればなんとかなる

「やる前にいろいろと悩んだりできない理由を探す」ことは全く生産性がないですし、悩んでいたり目を背けている間に取れる選択肢も少なくなっていきます。

結局、(全てがうまくいくとは言いませんが、)難しいと思っても「やればなんとかなる」ことが多いです。
行政の場合は少なくとも自分の経験上、うまくいかなかったことがテクニカルな理由であったことは一度もありません。行政の職員は強烈に高い事務処理能力を持っています。やれと言われれば必ず期日までに成果をあげることができます。
しかし、心が折れてしまう場面に遭遇することが多いし、真面目すぎてあらゆることに正面から対応しすぎるから止まってしまうのです。

包括施設管理業務を自分たちで構築した自治体の職員が、必ず口にするのが「包括ごとき」です。やる前は難しいと思っていたり、検討過程で様々な困難に直面しても、事業化してしまえば「ごとき」です。
他のプロジェクトも同様です。必死になってやっていけば、最終的には落ちるところに落ちますし、落ちないものは落ちません。
ひとつずつ、悩みの元を「法律?しきたり?財政?地域?議員?。。。」と紐解いていけば、それぞれの事柄についてどこかで見切りをつけていけば、前に進めるようになるでしょうし、そのことが「前に進む」ことです。

「誰がやるのか?」あなたです!

共著の新刊が2022.11.21に発売されます。

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