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「考えてる」ほど無駄な時間はない

「考える時間」をください

あるあるネタ

公共資産を活用したプロジェクトを検討していく場合、キックオフとして実施する職員研修などで発想がブレイクスルーすると、最初は非常にクリエイティブで前向きな議論が展開されていきます。

ビジョン・コンテンツ・与条件。。。(この検討もガチでやると相当に時間と労力がかかりますが、)少しずついろんなことが具体的になってくるにつれ「決めなければいけないこと」「変えなければいけないこと」「動かなければいけないこと」などが明確になってきます。前回のnoteで書いたようにヒヨる場面も出てきます。

これまでの前向きさが嘘のように「考える時間をください」という発言があちこちから出てきて急ブレーキがかかってしまいます。
悲しいですが、これも「あるあるネタ」です。

「考えている」時間の生産性はゼロ

やったことがないから、どうなるかわからないから、自分には荷が重いから。。。「考える」に値する不安があるから「考える時間」が欲しくなるのです。
その心理はわかりますし、(特に真面目な公務員の場合は)なんとかしようとするあまり「考えよう」とします。

考えれば考えるほどドツボにハマりますし、発想もネガティブに闇堕ちしていきます。何よりも「考えていた時間」は何も産んでいないので生産性はゼロです。

良い方向にいく可能性が低い

そして、プロジェクトはオーダーメイド型で有機的なものなので、「こうすればうまくいく」という絶対的な回答はありません。国の文書や先行事例も当てになりませんし、(先行事例の劣化コピーしかできず現場感覚のない)コンサルに頼っても当たり前ですが答えは見つかりません。

自分の「頭の中だけで考えている」限りは、時間をただ浪費するだけでしかなく、その思考回路も「どうしたらできるのか?」から「やらないための理由」探しにいつの間にか陥ってしまいます。
考えているだけで良い方向に行く可能性は限りなく低いのです。

考える時間≠何かする時間

「頭の中だけで考える時間」を「何かをする時間」に置換してみましょう。

根拠を整理する

まずは「考えていること≒悩んでいること?」の根拠が何に基づいているのか書き出して整理しましょう。

憲法・法律・条例・規則・要綱・内規・しきたり。。。といった法的な根拠が問題の場合、抵触している大半は要綱以下です。
条例なら改正すれば良いですし、規則なら市長決裁を、要綱以下であれば必要な手続き、しきたりだったらシレっと変えてしまえば良いのです。そして、法律でも大半の項目には「ただし書き」や「許可制度」がついています。日本人がそんなに厳格な法律を作るわけがなく、どこかに「逃げ道」が存在していますし、それが突破口にもなるのです。

誰かの反発・物理的な環境。。。といったものが「考える≒悩む」原因だとすれば(こちらの方が多いと思いますが、)あらゆる手段を使ってその人のハンコ(≠合意)を取れば良いのです。このやり方もいくつもあるのですが、ここで書くと超長くなってしまうので別の機会にw

調べる時間

抵触している根拠が明確になれば、それを突破するための手段を見つけていきましょう。考えようとしていたこと(≒悩んでいたこと?)は、ほとんどの場合、先行してやっている人・まちも通ってきた道です。

全国の類似の事例を調査すること(ネットで調べるだけでなく、直接担当者に聞くこと)、内部だけでなく外部の人も含めて信頼できる人に相談すること、こうした意味ではサウンディング型市場調査も有効な手段のひとつになるでしょう。
大切なのは学識やコンサルではなく、実際にプロジェクトに関わっている人たち(先行自治体の職員や民間のプレーヤーの方々)なのです。
日頃からアンテナを高くするとともに、積極的に交流をどれだけ図っているか、同志が何人いるのかが勝負となります。

判断する時間

個人としての判断は調べながら瞬時にする(できる・できるはずの)ものですが、重要なのは組織としての判断です。この判断は政策会議・庁議などまちによって呼び名は異なるでしょうが(民間であれば経営会議など)、こうした意思決定機関に躊躇なく諮りましょう。悪いことをしているわけじゃないんです。
「まち」のためにできることをするのがプロなので、「躊躇してやらない」ことは不作為と同等です。

また、意思決定機関が「時期尚早・なぜ今なんだ?・他のまちの動向をみてから」といった不毛な議論・結論にならない結論をしないために、「意思決定」のルールをしておくことも重要です。
公務員時代には市長・副市長・教育長と主要部長の計8名によるFM戦略会議を組織し、「会議は1時間以内、細かい議論はしない、やるかやらないかだけ決める」ことをルールとして、意思決定の迅速化と責任の所在の明確化をしていました。

この「判断する時間」をできるだけ短くすることも大切です。

プレーヤーをセットアップする時間

プロジェクトの質を左右するのは何より人です。そのプロジェクトに適したプレーヤーをセットアップしていくためには、一般的にはサウンディング型市場調査を行うこととされていますが、それだけでは足りません。サウンディングでも積極的に営業することが大前提ですが、それ以上に求められるのは担当者をはじめ、そのまちの人たちが日常的にまちへ出て、多様なプレーヤーと有機的なネットワークを構築していくことです。

そのようななかで当該プロジェクトに際し、誰とどのような関係でやっていくのか見出したり、行政であれば相応しい人たちを選ぶためのプロポーザルを実施する時間が必要となります。

資金調達する時間

民間であれば文字どおりプロジェクトを実施するための資金を自己資金・金融機関からの借入・クラウドファンディングなどにより調達しなければなりません。
行政であれば、関連予算(、民間と連携していくプロジェクトの場合は多くの場合債務負担行為)を設定していくことが求められます。

このために必要な資料を作成したり、議会審議などの時間が必要となります。

やらなければわからない

「手を動かす」ことで整理される

結局、「考えていること」が頭の中にあるだけでは同じところの無限ループor負のスパイラルに陥るだけです。上記のように、「手を動かす」ことでひとつずつ課題や方向性が整理されていきます。

変数をFIXしていく

「考える時間」が欲しくなるのは、プロジェクトの実現のためにはいろいろな事象が複雑に絡み合い、(しかも行政の場合は不合理・不純なものが多数含まれていることもあり、)多くの変数が存在するからでしょう。
だからこそ、手を動かしていきながらひとつずつ変数をFIXしていくことが大切です。法的なことやしきたりが整理されたら、事業スキームがある程度収斂されてきますし、イニシャル・ランニング・収支などの条件が見えてくれば現実的な選択肢が見えてきます。「何をしたいのか、なんのためにやるのか」のビジョンが明確になっていれば、迷ったときの立ち戻れる原点になります。

常総市の「やってから考える(≒やってからも考えない)」

拙著「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」(学陽書房)や毎年開催している日本PFI・PPP協会主催のPPP入門講座でも詳しく紹介している常総市。

決していろんな意味で恵まれた環境にあるわけではないですが、神達市長をはじめ職員の方々が「やってから考える」(やってからも考えない)マインドで全国初のトライアル・サウンディング、あすなろの里の再生(あすなろカフェ・RECAMP常総)、AI自動運転パーク、随意契約保証型の民間提案制度、豊田城の活用など、徹底的にできることを次々と進めています。

難しいことを考える前にやってみて(≒試行してみて)どうなるのか?直線的な思考回路が最大のポイントとなっています。

常総市以外でも、行政という非合理的な社会でリアルに試行錯誤している事例については、下記noteをご覧ください。

思考するより試行錯誤

思考しているだけでは何も変わりませんし、それは意識「だけ」高い系の派生でしかありません。

「考える時間」は要りません。大切なのは「動く」ことです。
失敗は手を止めて諦めた瞬間です。
まちは常に現在進行形なので、必死にもがき続けている限り、どこかに可能性があります。頭の中で考えているだけでは選択肢が時間とともに少なくなり、最後に残される選択肢は爆破か魔改造しかありません。

動いてさえいれば、試行錯誤さえしていれば経験知も蓄積され、理解者や仲間も生まれてきます。
いろんな状況のなかでひとつずつ覚悟・決断・行動して変数をFIXしていけば、少しずつ視界が開けるはずです。

だから、「考える時間」は無駄なのです。


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