待鳥園子

激甘な溺愛を主に書いています。アイリスIF2大賞銀賞受賞。 自ら動く系ヒーロー救うヒ…

待鳥園子

激甘な溺愛を主に書いています。アイリスIF2大賞銀賞受賞。 自ら動く系ヒーロー救うヒロインと甘い口説きをするヒーローのラブストーリーを書くのが好き。 異世界中心、たまに現代ものも書きます。

最近の記事

神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第六話

#創作大賞2024 #恋愛小説部門 第6話「藤棚」 「何をやっておるんだ! お前は!」  いきなりの九頭竜の襲撃を受け、戦闘態勢に入り緊張感のあった天狗族も、ようやく落ち着きを取り戻した頃。  那由多に連れられて帰って来た私は、地面に降り立った途端に鼓膜にキーンと響き渡る大声を聞いた。全く予想していない出来事だったので、呆気に取られてしまった。  そこに居たのは大天狗相模坊さまほどの大きな身体を持つ、黒い翼を持ち鴉の嘴のような面を付けている天狗だった。 「親父……」  那

    • 神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第五話

      #創作大賞2024 #恋愛小説部門 第5話「舞姫」  先に翼を出して飛んで行ってしまった彼らに続こうとして、身体のサイズがより大きい大天狗の相模坊さんは私が唖然として驚くような巨大な翼を出した。 「……聖良さん。この城の中に居れば、問題はないと思いますが……白蘭! こっちへ! 彼女を安全な場所へ連れて行け」  私は彼が自分の娘を呼んだ声を聞いて、私は微妙な表情になってしまったと思う。だって、ついこの前に私は白蘭さんに、わかりやすく嫌がらせを受け、理不尽な理由で罵倒されたか

      • 神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第四話

        #創作大賞2024 #恋愛小説部門 第4話「看病」  そして、翌日。私は、見事に風邪を引いてしまった。 暖かくなる季節だとは言え、川に落ちて空を飛んで一目散に帰り、すぐにお風呂に入ったとは言え、身体は芯から冷えてしまっていたのだと思う。 相模坊さんの居城は当たり前の事だけど、和室ばかり。なので私はお日様の匂いのするふかふかのお布団に入り、ぐったりして寝込んでいる。 甲斐甲斐しくお世話してくれる優しい小天狗さんは、何かあればすぐに備えられるようにと、部屋の中で待機してくれる

        • 神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第三話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 第3話「説明」  天狗族は古来より、嫁取りをする際には人里から娘を攫ってくることが多かったそうだ。  だが、かくりよへと自分勝手に攫って来ることに、悪いという罪悪感が彼らにも芽生え、ある一定のルール、嫁取りに必要な花嫁争奪戦に関する厳格な掟を設けることにした。  花嫁が最後の決定を下せば絶対で、それは覆ることはない。  嫁取りを望む天狗の参加者は、一族の中でも位の高い者から順に選ばれる。期間は二か月間で、花嫁本人が望めば期間を延長する事

        神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第六話

        • 神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第五話

        • 神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第四話

        • 神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第三話

          神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第二話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 第2話「彼」  私が早とちりしてただけで花嫁争奪戦と呼ばれるものは、本来ならまだ始まっていないらしい。 だけど、厳しい天狗族の掟に定められている通り、花嫁争奪戦を前にした三人には、何か熟さなければならない大切な役目があるらしい。 そして、争奪戦の景品の花嫁である私はというと、彼らが相模坊さんと何かしているその間、特に何もすることなく暇だった。 着替え用の可愛い着物を小天狗と言われる相模坊さんの家来に何着も用意して貰ったけど、一通り袖を通

          神隠し、約束を舞った、恋探り。~二枚目天狗たちの花嫁争奪戦~ 第二話

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第六話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 06 出会い(side Lancelot)  上手くいかなかった初恋で心に残るはずの大きな傷は、他でもない恋をした相手その人によってあっさりと消し去られた。  不思議な事に彼女を愛して付き合っていたという事実は記憶にあり覚えているのだが、その時の気持ちがすべて消えてしまったので目の前で背中を向けて去られても、何の悲しさも湧いて来ない。彼女自身が、それを望んだから。  何の頼りにもならなかった役立たずの若者は助けを求めていた彼女に捨て

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第六話

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第五話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 05 交換条件 「ごめんなさい。ディアーヌ!」  ジェルマンに海に攫われて帰って来てから翌日のこと。私は早朝から、いきなり自室にやって来たラウィーニアに、開口一番大きな声で謝られ驚いた。  もちろん。彼女は私ととても近い親戚だし、幼い頃から慣れ親しんでいる。ハクスリーの邸に来訪する頻度は、他のお友達と比較してもとても高い。  けれど彼女は、礼儀作法を完璧にこなす公爵令嬢だ。  来訪の前には先触れの手紙は欠かさないし、時間はきちん

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第五話

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第四話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 04 想い通じ合う  いきなりぎゅうっと抱きしめられた力は強く、ランスロットの温もりの中にはどこか柑橘のような匂いも混ざっていた。香水と思うには足りないし、彼が昨夜使った石鹸の匂いなのかもしれない。 「あっ、あのっ……」  自らの腕の中にある、戸惑っている私の顔を見下ろす顔は無表情だ。けど、なんだか怒っているような気もする。こうしてとっても間近で、まじまじと見ないとわからない程の気配だけど。 「すみません……勝手に」 「そうでは

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第四話

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第三話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 03 失った記憶  仕事上の事故とは言え、自分の婚約者を庇ったために起こったランスロットの異変を重く見たコンスタンス様は、すぐに城から筆頭魔術師リーズを呼び寄せた。  関係者なんだから自分も一緒に聞くと私は言い張り、リーズの詳しい説明時にも彼らの傍に居た。私とランスロットの二人の関係を知ってか知らずか、言いづらそうにしている彼の口からこの事態が明らかにされた。  あの黒いもやもや……ランスロットが受けた呪術の正体は彼の持っている恋愛

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第三話

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第二話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 02 元彼のこと  私のとても優秀な出来る従姉妹のラウィーニアは幼い頃に王太子妃候補の一人として選ばれた時から、毎日城に通い厳しい教師たちに囲まれて勉強漬けだった。めでたく候補ではなく、王太子妃となる事が決まった今でも、それは当たり前のように続いている。  そんな彼女からランスロット・グラディスの訓練姿を一度見に行ってみましょうよと誘われたのは、彼と初めてちゃんとした会話を交わせた夜会から少し経っての出来事だった。  あの後も彼から

          破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜 第二話

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十九話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 29 白旗  そろそろ寒くなって来た晩秋の日の、深夜の零時。  私はいつもの週末のように、芹沢くんの部屋にお邪魔していた。  私がごろごろしながらスマホでSNSを見ていると、季節限定のアイスがタイムラインに流れて来た。  これは食べるしかないと私は今からコンビニに買いに行きたいって言えば「こんな時間に一人で行くなんて、絶対ダメ」と言って、黙々と試験勉強してたはずの芹沢くんも付いて来てくれることになった。  私たちが付き合い始めた

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十九話

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十八話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 28 未熟(side 司)  あの人がどうなったかというと、またSNSで全肯定してくれる支持者、フォロワーと呼ばれる何十万人に対して可哀想な自分への同情を誘うようなコメントを出して、今も延々慰めて貰っているようだ。  そんな関係性に何の意味があるのか、俺には良くわからない。何が楽しいのか、本当に理解はし難いが。それは別々の人間なんだから、仕方ないことなのだろうか。  付き合っていた当時には、俺はあの人のために出来ることはしていたつも

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十八話

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十七話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 27 ごめんね  ようやく芹沢くんの部屋に帰って来られた私たちは、部屋の中に入っても言葉少ななままで、いつも二人が寛ぐふわふわのラグの上へ並んで座った。 「芹沢くん?」  私は落ち込んでいる様子の芹沢くんが、そんな打ちひしがれた表情になっている理由がわからなかった。  これでもう、彼を悩ませていた出来事はすべて解決しているはずなのに。まだ……何かあるのかな。 「水無瀬さん……びっくりした。まさか、あの場所に水無瀬さんが、来ている

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十七話

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十六話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 26 解決 「み……水無瀬さん、何してるの……どうして」  背後に居る芹沢くんはこんなところに居るはずがないのに出て来た私を見て、驚いて呆然として言ったようだった。  それは……そうなってしまうだろう。まさか、芹沢くんは私が自分を尾けてこんな所にまで来ているなんて、絶対に思っていなかったはずだ。 「絶対! やだやだやだ。絶対、芹沢くんと別れたくない!! どんなに、人から非難されたとしても! 変な写真ばら蒔かれて、どんなことを言われ

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十六話

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十五話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 25 尾行  立ち姿を表す言葉が素敵でしかない芹沢くんが、大学の最寄り駅の改札を出た。  こんな時にも推しの彼の後ろ姿を堪能している私はというと、現在尾行中。  昨夜、本日土曜日にどうしても会いたいと電話でお願いしたら、芹沢くんからごめん無理なんだと辛そうな声でそう言われた。  この時に、巷で良く耳にする『女の第六感』というものを、私は初めて感じた。  彼は、私に何か重大な隠し事をしている。  話を聞くことは出来ないけど、気に

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十五話

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十四話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 24 匂わせ 「水無瀬さん。芹沢くんと、さっさと別れなさいよ。全然似合っていないのが、自分ではわからないの?」  ただ講義の合間に一人でテラスに座っていただけの私は、いきなり前の席に座ったミス優鷹の蓮井さんに、結構な剣幕で詰め寄られていた。  芹沢くんが私を守るために周囲に広めた誹謗中傷すれば訴える件についてなんだけど、こういったことを私に直接言ってくる分には、そういった犯罪行為には当たらないらしい。  だから、そういう奴が万が一

          0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜 第二十四話