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南の島ひとり旅。おじさまバス運転手さんの微妙なお誘い(2013年44歳)

晩夏。すでに夏バテでグッタリなのに、更に太陽ギラッギラな「南の島(国内)」へ。

そう、毎年熱中症になりかける私には、無謀にも程があった。
だがしかし、いつもの「風水開運ひとり旅」で幸運をゲットをするには、この月の吉方は「南」。
南は、より暑い南の島しかないので、仕方なかった。

そして、同時にこの旅は「人生最大の暗黒期」中の「傷心旅行」でもあり、とにかくひとりになりたかったのだった。

と言うことで、初日。
船にて島に上陸後、早速とある観光施設を訪れるため、港のバスロータリーへ向かった。

案内板に従って、目的の路線バス乗り場に辿り着くと、すでにバスが待機していた。
……が、その車両というのが、なんともデラックス!
ゆったりシートがずらりと並ぶ、大型観光タイプなのである。

「…お、おお!?これでいいのか!?団体さん用なのでは?」
バスの行先表示を確認する。……うん、こう見えて路線バスのようだ。
一応、運転手のおじさまにも確認。目的地を告げたところ、「行きますよ」とのことだったので、安心して「左列の真ん中より少し前」に着席。
南国特有のゆるりとした空気を味わいながら、ぼんやり発車を待った。

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待つことしばし。時計を確認すると、あと少しで出発時間。
乗客は未だ私1人である。
そこへマイクの声が響き渡った。
「観光で来たの?」
突然のマイクトークに驚く私。それでも「はい」と返事をすると、運転手さんは更にいくつか質問をして来られた。

『……いや、車内マイクで世間話て!』
私は困惑しながらも、ごく短く返答をし続けた。
……のだが、何しろこっちはマイク無し。おまけに、もともと通りにくい声が“背もたれの高いデラックスなシート”にどんどん吸収され、いくらボリュームを上げても、運転席まで明瞭に到達しなかった模様。
聞き返すことが多くなった運転手さんは、いよいよ私に促した。
「話しにくいから、前に座ったらいいよ」

「…………」
いやいや、こちらとしては、特に聞きたいことも話したいこともないので、その義理はない。
とは言え、この先いちいち大声を振り絞ったり、何度も答え直したりするのにエネルギーを消耗するのも惜しいので、声がかろうじて届きそうな少し前の席へ。
運転手さんは、その移動をバックミラーで確認すると、再びいくつか話を投げかけ、ようやく業務モードにチェンジ。
バスを発進させ、港を後にした。

バスは、コバルトブルーの海と生命力あふれる緑を横目に、グングン進んだ。
空は快晴。まさにドライブ日和である。
『なんて自然が美しい!なんて気持ちの良い日なんだー!……ひとり時間、最高!』
私の胸は高鳴った。

ところが、なんと運転手さん!ここに来てまさかのトーク再開!(もちろんマイクオン)
おまけに、どんどん話題は増殖。島内の観光案内や身の上話、更には選挙の話などなど、次から次へと絶好調であった。(しつこいがマイクオン)

私は、この「おじさまワンマンショー@カラオケボックス」的状況を打破してくださるであろう、新たな乗客をひたすら心待ちにした。
……しかし、全くその気配がない。
なので、大変失礼ながら半分ほどを聞き流させていただいたのだった……。(と言っても、マイク音なので耳残りはするのだが……😓)


こうして、10分程が経過した頃。
停留所名を告げる車内放送とともに、運転手さんの「次だよ!」と言うマイク声が響いた。
色んな意味で、なんとありがたいお言葉!
私は『待ってました、この時を!』とばかりに、いそいそと降りる準備をした。
そしたらそこで、運転手さんは付け加えられたのだ。
「戻るときは、▲時▲分のに乗れば俺が運転してるから、その時間に乗るといいよ!」

『は!?』と顔をあげる。すると、
「それ以外は違う人だから、この停留所を▲時▲分だからね」
と更に念押しされたのだった……。

私は、シンプルにお礼だけを告げ、バスを降りた。
そして、施設で観光を終えた後、▲時▲分の「1本後」のバスで港に戻ったのであった。



余談
それにしても、何だろう…?
「女ひとり旅」って、そんなに寂しくて暇そうに見えるのだろうか?
私の場合は、いつも「風水開運旅行」なので、パワースポットに行ったり開運行動をしたりと、やりたいこと(やらねばならぬこと)が決まっているから忙しいのだが……。
しかも、ひとりの方が気楽で自由だし、ひとりだからこそ小さな発見や気づきも沢山出来て、めちゃめちゃ楽しいのだが……。