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ブラックコーヒーの魅力はベトナムが教えてくれた

「ブラックコーヒーを飲めるなんて、大人だねえ!」

時々友人とお茶をすると言われる言葉だ。

コロナ以降、休みの日は大体近所のカフェでコーヒーを飲みながら過ごしている。今ではブラックコーヒー愛飲の私だが、ずっとブラックが好きだったわけではない。むしろ、ほんの数年前まではブラックが飲めなくて、カフェオレですらガムシロップをしっかり入れるようなキュートな味覚をしていた。

あんなに苦いものを、いったい誰がどうして好んで飲めるだろうか、とさえ思っていた。

しかし、ある時ブラックコーヒーの美味しさに目覚める。それは、ジメジメと汗がまとわりつくほど暑くて湿度が高い、ベトナムでの一杯がきっかけだった。
ベトナムに行ったのはGWのこと。長期休暇にアジアのリゾートでバカンスなんて、出世したな……なんて学生の頃の貧乏旅を思い出しながらダナンの海を眺めた社会人2年目はもう最近とは言い難い。

4・5月のベトナムはちょうど雨季なことに加え、1年で最も暑くなる季節。30分も歩けば、汗が吹き出し私の身体を覆い尽くし、全身ベタベタになってしまうくらい苦しい暑さだった。観光なんてそんな長い間できるものではなく、私たちは少し歩いてはすぐにカフェで一休みする状態に。

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暑さに負けた私たちがこの旅中よくお世話になったのが「コンカフェ」という、ベトナムの至る所にあるカフェだ。「コンカフェ」とは別にコンセプトの「コン」ではなく、現地の若者にとても人気のコーヒーチェーンの名前である。

共産主義の古き良きベトナムをイメージしたカフェとのことなのだが、少々アングラな雰囲気を醸し出しているので、パッと見ではなかなかに足を踏み入れるのは躊躇われた。店員さんは、緑色の軍服のようなユニフォームを着ていてちょっと怖い。

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だがよくよく店内を見渡すと、昔のポスターや蓮の花が描かれた雑貨などが並ぶ。レトロでカラフルなインテリアで店内が彩られていて、とてもポップなのだ。しかも、店舗ごとに内装も異なるようで、各地を回るごとにこのカフェに訪れるのもおすすめである!

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ベトナムはコーヒー豆の生産量が世界2位のコーヒー大国らしい。有名なのはコンデンスミルクがたっぷり入った甘い甘いコーヒーだろう。

私はこれが大好きで、このカフェでコンデンスコーヒーばかり飲んだ。暑さにやられ疲れ切った体に、甘さと冷たさがじわっと染み込んだ瞬間、生き返ったような心地がする。コンデンスミルクは確かにすごく甘いが、砂糖とは違いミルキーな甘さが苦いコーヒーとマッチしていて個人的にお気に入りだった。

しかしある日、連日の暑さに夏バテ気味だったのだろうか。あまり甘いものは口にしたくない、さっぱりしたい、と思う日があった。どういうわけだか普段ならひとくちでもういらない、と思ってしまうブラックコーヒーを頼んでしまった。暑さでぼーっとした私を、今がチャンスとばかりにブラックコーヒーが誘惑してきたのだろう。

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ひとくち、苦くて黒い液体がカラカラに渇いた喉を走る。なんとも言えぬ良い香りに包まれた。

その瞬間、私のブラックコーヒーに対する感想は一転した。まさか、すごく美味しいのだ!! 天地がひっくり返るほど美味しかったのをよく覚えている。

一瞬でそれを飲み干した。いつもならチビチビと苦しみながら飲んでいたのにも関わらず。香り、飲んだ時の苦味、後味のスッキリさ、全部素晴らしいと思った。暑い日にこれ以上ぴったりな飲み物はない、そう思うほど完璧だった。

ブラックコーヒーを楽しむことを覚えた私はその日以降の旅中、ブラックコーヒーとベトナムコーヒーをどちらも頼むようになったのだった。(甘いのも引き続き好きなので、選べなかった)

この時美味しいと感じたのが暑くて喉が渇いていたからだったのか、ベトナムのコーヒーが口にあっていたからなのか、それはわからない。後から調べたところによると、ベトナムのコーヒー豆は苦味が強いものが主流で、風味をしっかり感じられるらしい。個人的に、ブラックコーヒーの苦いのに酸っぱいところが解せないと思っていたので、もしかしたら酸味が弱いのが好きなポイントなのかもしれない。

しかし確かにこれ以降、ブラックコーヒーは私の愛すべきドリンクのひとつに加わった。今でも暑い日には、一番にブラックが飲みたくなる。

旅は人を成長させるというがどうやら本当のようだ。ベトナムで私はひとつ大人の階段を登ったのだった。

ブラックコーヒーを嗜む楽しみを教えてくれたベトナムにもう一度訪れ、次はもっと色々なカフェにを巡ってブラックコーヒーを楽しみたいというのが、今の私の願いだ。早くコロナが落ち着く日を心待ちにしている。


ちなみに余談だがコンカフェではヨーグルトコーヒーもおすすめメニューらしい。ちょっと勇気が出なくてお試しをすることはなかったが今考えればもったいないので、次は試したいと思う。

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