見出し画像

北欧でジェンダー平等が進んでいる理由とは?

 「女の子なんだからその服装はやめたほうがいいんじゃない?」「男の子なんだから泣くなんて情けない」...あなたはこんな言葉を聞いて違和感を感じたことはありませんか? 

 今年発表されたジェンダー平等指数ランキングで日本は全153ヶ国中 121位と先進国としては最下位でした(120位はアラブ首長国連邦)。一方上位を見ると、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド...と北欧諸国が名を連ねています。 

 なぜ北欧はこんなにもジェンダー格差が少ないと評価されるのでしょうか? 今回は藤田さん、ソーレンさんにジェンダー平等へのこれまでの道のりと現状について伺いました。 

デンマークと日本を行き来されている 藤田さん、ソーレンさん、イベント主催 浦野さんの3人と、北欧社会の本質についてじっくりとお話するオンラインイベント「リレ・タンケ」。デンマーク語のLilleは「少し, ちょっと」、tankeは「考える」を意味します。
 今回は北欧のジェンダー平等の道のりと現状について紹介します。※この記事は、オンラインイベント「リレ・タンケ」の内容をまとめたレポートです。

決して昔からではなかった! アイスランドが辿った平等への道のりとは

 イベント冒頭、ソーレンさんからアイスランドにおける女性の権利獲得の歴史をご紹介いただきました。 

 それによると、アイスランドでは1915年に初めて国政選挙への女性参政権が一部認められ、1920年に全ての女性へと拡大されたそうです。 その後男女の賃金格差が問題となり、1975年、不満に耐えかねた女性たちが大規模なストライキを決行。首都レイキャヴィクに住む女性の9割が参加したといいますから驚きです!

画像4

画像5

1975年 ストライキの様子 ©︎Sagnir 24. október 1975 - kvennafríeða kvennaverkfall?(2009) https://timarit.is/page/5955815#page/n19/mode/2up

 これがきっかけとなり、職場での待遇も徐々に改善され、1995年には世界初となる女性のヴィグディス大統領が誕生しました。 藤田さんによると「アイスランドを含め、小国の北欧諸国にとって女性は貴重な労働力であったことも男女平等が進んだ背景」とのこと。 

 こうして見ると、アイスランドにおいて女性の権利は古くから認められていたのではなく、むしろ20世紀以降、女性側からの積極的な主張と行動によって徐々に獲得されてきたと言えるのではないでしょうか。

「北欧の平等もまだ発展途上」 デンマークの現状と取り組み

  「今まで北欧の進んだ事例についてご紹介しましたが、実はまだ発展途上なんですよ。」と話す藤田さん。後半では職場の女性管理職比率の現状と改善に向けた取り組みや、幼児教育についてお話して頂きました。 

 藤田さん曰く、デンマークでは管理職の6割が経済、ビジネス、エンジニア等の分野で高い教育を受けています。しかし、そうした高い教育を学んでいる学生に占める女性の割合は3割にしかすぎないそう。その背景として、「男は稼ぎ、女は子を養う」といった男女で役割分担をする意識が未だに社会に残っているようです。 

 その改善に取り組む団体の1つであるABOVE&BEYONDでは、様々な企業の女性や男性の管理職、さらには学生や NPO等を招き、ジェンダー平等について対話する啓蒙活動を実施。また、科学・技術・工学・数学(STEM)を学ぶ女性を増やすことにも積極的です。こうして社会全体でジェンダーに関わらず能力を発揮できる環境づくりをしているのですね。 

画像2

女性たちの側から声を挙げるのも北欧の特徴かもしれません ©️Above&Beyond https://www.above-and-beyond.eu/

絵本でジェンダー平等を学ぶ北欧の子どもたち

 その他にも、幼児教育における取り組みとして、ジェンダー平等の価値観を幼少期から育む絵本についてご紹介頂きました。

 本のタイトルは『KIMI』といい、女の子にも男の子にも使われる中性的な名前の子が主人公の物語です。日本で言えば「純(じゅん)」や 「翼(つばさ)」といった感じでしょうか。

 絵本に登場するお父さんとお母さんは見た目では男女がわからないように描かれていて、何かを判断する時に性を基準にしてはならないという考え方を子どもに分かりやすく伝えているのだそうです。 

画像1

絵本『KIMI』 どれがお母さんでしょうか? ©︎Actwish

 感想をシェアする時間には、参加者の方から「絵本でジェンダー平等を学ぶんですね!」との少し驚いた声も挙がり、新たな学びがありました。 

 いかがだったでしょうか? 今回は「北欧でジェンダー平等が進む理由とは?」と題して、アイスランドの道のりやデンマークの現状についてお伝えしました。自分たちの意志を積極的に社会へと主張・発信していくことや、絵本などのユニークな取り組みから学べることも多いかもしれません。

 次回は、上に紹介したような社会運動が、なぜ北欧で盛り上がるのかについてレポートしたいと思います。それではまたお会いしましょう! Vi ses snart! (デンマーク語で See you soon!)  ✒︎Written by Masato@北欧

【イベント登壇者紹介】

登壇者 プロフィール画像

藤田さなえ ... Actiwish LLC 代表。コペンハーゲン大学で日本語を教えていた頃、クロマン・ソーレンと出会う。現在は、北欧と日本を繋ぐワークや絵本を多用した講演・セミナーなどを行う。

クロマン・ソーレン ... Actiwish LLC 副代表。コペンハーゲン大学で日本語を専攻。通訳や、研究者・議員・メディア等の北欧の訪問、ツアーのアレンジなども行う。

浦野真理 ... 対話型ラボ ユニバーサルリサーチラボ(URL) 代表。AIベンチャー企業で研究職に従事する傍ら、2016年にURLをスタート。対話型の勉強会やワークショップ、映画会などを主催。

イベント詳細はこちらから!→ https://url2016.peatix.com/

A4一枚 PDF形式もダウンロードできます!保存用などにどうぞ!↓

表紙の写真 : アイスランドの首都レイキャビクで行われたLBGTフェスティバル ©︎Helgi Halldórsson / Creative Commons

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?