健忘録【5】

私は骨髄移植の際、骨髄を破壊するタイプのフルドース(マックス量)の抗がん剤で移植前のコンディショニング(前処置)を受けた。

アレルギーも多かったので、始めたら止められないその抗がん剤の嵐を乗り切るため、毎日ステロイド(デキサメタゾンを20mg??)を投与してから抗がん剤を入れていた。

吐き気止めも、もうガンガンに入れまくっていたおかげで、正直超大量抗がん剤投与中は一度も吐かず、食事も普通食(無菌)を移植の前々日までは完食していた。移植当日も、完食はできずとも普通食を食べていた。

しかし、初回の抗がん剤投与は別の病棟で行われた。

これはね……

正直、ただの普通の抗がん剤だったんだよね。

当然、大量に抗がん剤を入れる骨髄移植前の前処置の本当に何分の一とかいうほど、投薬自体の副作用はマシなはずなんだよね。

でも、それは、吐き気止めを正しく投与した場合の話。

実は不慣れだったその病棟での抗がん剤投与では、夜通し吐き続けた。

ゾフランという今や知らない人がいない制吐薬は知っていて、使ってくれたのだ。

しかし、イメンド(NK1受容体拮抗型制吐剤)は使用できなかった。

あっちゃー……

というわけで、一昔前の抗がん剤のキツイ嘔気嘔吐を味わう苦い経験をしてしまった。

二人部屋だったのだが、相方は個人保険(プライベート)のお客さん……

日本では、医療者の態度は何処も良いんじゃないかな?

自費個室やVIP室だと、もっと良いのだろうか??

日本では、態度をお金で買わずとも、皆良い……という印象を受けている。

他がそうではないとは言わない。

どこも優しいよ。

けど、プライベートというのは、特別なお客様として、医療職の人もコメディカルの方々も本当にワンランク上のお客様対応のおもてなしに注力している感じなのだ。

まぁ、夜中にテレビがついている時、一般患者ならば、わざわざ見てるか確認などせずに皆が寝静まった消灯後の夜中などテレビを看護師が切ってくれる。

しかし、その時は、部屋の角にあって、部屋のどこからでも見やすくて、部屋全体を照らすそのテレビというのは大敵と化した。

相部屋の人も、隣で夜通し嘔吐され続けてたら、不快なのかもしれない。

気持ちは分かる。

けど、ただでさえ嘔気・嘔吐がある中で、夜も明るくて眠れない。

嘔吐の合間に少しでもうとうとして休まることすらできない。

途中から、頭も割れそうに痛い。

睡眠不足だと、100%頭痛に襲われる体質だからしょうがない。

すると、嘔吐もさらに悪化する。

当然、もう水など飲めていないし、何も食べられていない。

だから、胃液しか吐かなくて、喉も痛い。

テレビがまぶしい。

寝たい!!

頭痛い

抗がん剤で気持ち悪い!!

ずーっと続く、変な悪循環突入だ。

ヤメテくれー

ということで、看護師さんが見回りに来たタイミングで、テレビを消してくれるようにお願いした。

ここが、もう泣かずにいられない瞬間。

プライベートのお客様患者…… だから、わざわざ寝てるお隣さんを起こして、テレビを消して良いか尋ねたのだ……

チーン

だって、今寝てたじゃん!!

見てないじゃん!!

つーか、ここ病院!!

夜中のテレビなんて、見てようが見てなかろうが、消しましょうよ!

戻ってきた看護師さんには、見てるから消せないと告げられた……

私としては、もうタオルとか、アイマスクとか、背を向けるとかいう方法で無視できないほど眩しくて、煩いし、頭も痛いし、眠れないし、気持ち悪いし、吐くし……という無限ループで話す余力すらない。

苦境に立たされてしまった。(泣)(涙)

夏だけど、クーラーが効いていなかった院内の病室は暖かい。

けど、もう布団を頭からかぶる他、方法が思いつかない。

頭から分厚い病院の布団をすっぽりかぶって、布団の中でバケツで吐きながら、合間合間でうとうとした。

次に看護師さんが見回りに来てくれた時には、「こんなに辛いのならば、テレビは消さないと!」、と気がついてくれた。(独り言でこれを声に出していたので、その時の言葉はこの通りだ。)

それでも、相手を起こして断りというか、テレビは消さなければいけない理由をお客様患者に説明してくれた。

((看護師に、「そんなに辛いならば、そう言ってくれればいいのに!」 と言われた。本当、そうだよね。もっともな意見だと思う。なんか、辛すぎて、会話もろくにする余力がなかったのよ……あと、命の危険や絶対にその瞬間伝える必要があること以外、ナースコール押せない性格なんだよなぁ....... 瀕死になる前に呼んででも伝えないとだよなぁ......))

ようやく、魔のクソ明るいテレビは消えてくれて、私は平穏な夜の病室で嘔吐の合間にうとうとできる平安のひと時を手に入れられたのだったとさ。

普段、めっちゃ良くしてくれている看護師さんで、知り合いっぽくもなっていた。優しいし、とても良い人です。

これは、この看護師さんが何か悪いことをしたから起きたことではないと思っています。個人主義国でのプライベート保険というものの充実の弊害とでもいいますか?

本当、誰が悪いとかではないです。

((看護師に、「そんなに辛いならば、そう言ってくれればいいのに!」 と言われた。本当、そうだよね。もっともな意見だと思う。なんか、辛すぎて、会話もろくにする余力がなかったのよ……あと、命の危険や絶対にその瞬間伝える必要があること以外、ナースコール押せない正確なんだよなぁ....... 瀕死になる前に呼んででも伝えないとだよなぁ...... そういう意味では、自分が悪いっちゃ悪い......))

ただ、ちょっと過剰なまでに特別なお客様のおもてなしが病院でなされちゃったエピソード。

あとは、私は幸い抗がん剤治療は基本的に大体は吐き気もばっちりコントロールできていたけれども、初回の時だけは結構辛かったというエピソード。

皆、それぞれ色々あると思いますが、今日も楽しいことを何か見つけられることを願っています。

今を大切に生きよう!



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