【激変】天才・藤井聡太と将棋界について加藤一二三、渡辺明が語る。AIがもたらした変化の是非は?:『天才の考え方』
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長い伝統を持つ将棋界を、AIはどう変えたのか?トップランナーの加藤一二三、渡辺明の2人が語り尽くす
本書の、副題は「藤井聡太とは何者か?」だが、決して藤井聡太に関する本ではない。藤井聡太についても触れられはするが、あくまでも話題の一部という扱いだ。本書は共に「天才」として世間的にも知られているだろう2人の棋士、加藤一二三と渡辺明が、「将棋」をテーマに様々な話題について語り合う作品である。大雑把に言えば、加藤一二三が昔の将棋界を、渡辺明が現代将棋を語っていると考えればいいだろう。
話題は多岐に渡るが、その中でも「AIが将棋界にもたらした変化」に関する話に私は一番惹かれた。そこでこの記事では、その点に絞って内容に触れていきたいと思う。
AIによる変化を、渡辺明はどのように表現しているか?
AIによる変化を一番分かりやすく表現しているのは、渡辺明のこの発言だろう。
将棋研究のレベルが大きく変わったと、渡辺明は実感しているそうだ。そしてそれらは、「戦法の流行」「新手への対策」などから感じ取れるという。
特に「新手」に対するこの感覚は印象的だった。
私自身、さほど将棋に詳しいわけではないのだが、私よりもさらに詳しくない方向けに、少し「新手」の説明をしておこうと思う。
将棋には「定跡」と呼ばれる、「このような状況ではこう指すべし」という指針となる教えが大昔から連綿と受け継がれている。しかし時に、その「定跡」を覆したり、あるいは誰も想像さえしなかったような展開がもたらされたりするような手が生まれることがあるのだ。これが「新手」である。
かつては、対局中に「新手」が登場すると、その対策を講じるのにかなり時間が掛かった。だから、「新手」は少なくとも一定期間はその強さを発揮でき、結果として「生き残る」ことになるというわけだ。
しかし現代では、「新手」が生み出されたとしても、AIによる解析がすぐに行われ、対策がすぐに見つかってしまう。寿命がもの凄く短くなっているのである。そして、そのような変化について渡辺明は指摘しているというわけだ。
これらの文章だけでも、AIがいかに将棋界を変えたのか理解できるだろう。
「羽生世代」がタイトル戦に出られなくなっている理由
さて、AIによる変化に絡めて、本書では「羽生世代がタイトル戦に出られなくなっている」という話が展開される。「羽生世代」も、将棋ファンにはお馴染みの呼称だろうが、知らない人のために説明しておこう。
誰もが知っているだろう天才棋士・羽生善治を筆頭に、彼と同時代に活躍した棋士のことをまとめて「羽生世代」と呼ぶことがある。規格外に強かったからだ。私も決して詳しいわけではないが、佐藤康光・森内俊之・深浦康市などが「羽生世代」として名前が上がることが多いだろう。
私の知る限り、棋士をまとめて括る呼称として、「羽生世代」ほどよく知られたものは他に存在しないように思う。いかに「羽生世代」が別格の存在だったかが分かるだろう。
渡辺明もこのように、「世代のまとまりとして異次元の強さを誇っていた」と語っている。以前読んだ本には、「それまであまり行われていなかった序盤の研究を羽生世代が積極的に行い、序盤の研究をしていない先輩棋士たちを一気に引き離した」みたいなことが書かれていた。羽生以前・羽生以後と言っていいほどに、将棋研究のレベルが変わったということなのだろう。
さてそんな最強を誇った「羽生世代」の棋士たちが、タイトル戦に出られなくなっているという。
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