新しい私へのリセット習慣: 健康編
始めに
毎度のことながらアスミさんの記事に触発されて書く記事です。台湾での私の健康とお金についてです。病気や障害のある人々の海外生活やそれにかかる費用についてもっと語られるようになると良いなと思っています。台湾は医療機関や制度の質が非常に高く、かつ安いと私は感じているので、台湾で生活したい誰かの参考になれば嬉しいです。
子供の頃は自分の体形が他人にどう見られているか、日常的に強く意識していていました。でも22歳の時にバセドウ病になってから、大切なのは他人の目ではなく、自分で自分の体を見直すことなのだとやっと気付きました。自分の体が本当に医学的に健康なのか、自分でコントロールとケアできているのか、自分の体について正しい知識を持っているのか、そもそも自分にとって健康とはどういう状態なのか、考えるようになりました。30by30の記事でも書きましたが、健康は私が30歳までに達成したい目標の1つです。
バセドウ病の診断が初めて下されてから5年経ち、今もまだバセドウ病で、健康ではなく、しかも海外で闘病しないといけない。ここで書くのは台湾でバセドウ病と闘病中の私の健康方法で、定期的/長期的に行なっているものです。私の経験になるので、それぞれの症状や治療については病院で検査の上、お医者さんの指示に従って下さいね。
健康に関する質問
半年前から回答を溜めてしまっているask.fmにも健康に関する質問をたくさんいただいています。質問のいくつかを下記に載せます。個々に回答する代わりに、この記事で全ての質問をカバーできるように健康について書ければと思います。
1. 燈里さんこんにちは。先日パセドウ病と診断されました。いままで、体調が悪かったり、変だなあと思っていたことが病気のせいだとわかり、私のせいじゃなかったんだと思う反面、どう付き合っていくべきか不安です。まわりの人達にはパセドウ病を軽視されていて、それくらいじゃん病気なの?わたしだってそれなら病気だよという感じです。その前もそうやって言われてきたのに、病気とわかっても怠惰だと言われます。相手にする必要はないとわかっていますが、学校にもいく体力面での元気がもうありませんし、クラスメイトや特に先生にそう言われるのでもう行きたくありません。燈里さんに少しアドバイスと元気をもらいたいです。
2. こんにちは。燈里さんは朝が苦手とツイッターなどでおっしゃっていましたが、夜に活動している感じでしょうか?自分は持病(難病)を持っていてその影響で朝起きるのがきついのでやめるかと思ったのですが、夜遅くまで起きていて肌が荒れるなどはありますか?また燈里さんはどうやって病気に対するネガティブな感情(なかったらすみません)と向き合ったり、それらを受け入れたりしていますか?書かれる文章やツイートなどもですが、燈里さんのアップする燈里さんや友達の写真を見るとこちらまで幸せな気持ちになります!勝手に励まされています、ありがとうございます!
3. こんにちは。燈里さんはいわゆるSNS疲れを経験することはありますか?私はSNSを使うことに楽しみを感じますが、同時に精神が疲れることもあります。使用を控えようと思うのですが、FOMOのせいでなかなか踏み切れず...何か考えなどあれば、シェアしていただけると嬉しいです。
心身へのトリートメント
西洋医学
バセドウ病は薬での治療になるので、アパートの隣にある内科クリニックに通っています。薬の副作用が強いのと、お医者さんによる処方量の定期的な調整が必要なので、毎月血液検査をする必要があります。
台北の西洋医学のお医者さんは英語が流暢な人がほとんどなので、中国語が話せない私にとって助かります…。いつ行っても待ち時間ゼロでお医者さんに時間的にゆとりを持って診察してもらえます。特に今の私の担当医は聞き上手なので、診察で私の状態を丁寧に聞き取って下さって安心します。土日含め毎日21時半まで開いていて、バイト終わりや夜型生活でも通えて便利です。
6ヶ月分の台湾国民保険が4494元(16000円)。
月に1回の血液検査と診察、1カ月分の処方箋で合計200元(700円)。
東洋医学
友達がお勧めしてくれた、学校の隣の東洋医学のクリニックに通っています。このクリニックは23時まで開いていて、お医者さんの患者への向き合い方を尊敬しているので気に入って通っています。
脈診と私の状態を聞いて漢方を調合してもらいます。バセドウ病自体は西洋医学の薬で治すのですが、病状として出る不眠、目眩、疲れ、気怠さ、腎臓と脾臓に効く漢方を出してもらっています。見た目は乾燥した腐葉土、泥を飲んでいるとしか思えない。でも定期的に飲めばエネルギーが湧いてきて体の調子が良いので頑張って飲んでいます…。
月に1回の診察と1ヶ月分の漢方で合計190元(700円)。
眼科
日本にいた時にバセドウ病患者特有の眼球突出を怖がられたことが何度もあります。この目の変形がバセドウ病の象徴のように思われていますが、実際に目が突出する人はたった10%だそうです。男性か煙草を吸うバセドウ病患者に多い傾向だと聞きました。
運悪く私はその10%の1人なので、眼球突出によって逆さ睫毛、ドライアイ、そして眼圧が上がって視力が落ちました。バセドウ病を先に治さない限りは目も引っ込まないので、薬を飲みながら眼科にも通っています。アパートの隣の眼科で、先生は英語で診察して下さって、全く待たされず、毎回目薬を2本処方してもらっています。
2ヶ月に1回の診察と処方箋で合計150元(500元)。
皮膚科
子供の頃からストレスや疲れが溜まると、すぐにヘルペスや急性湿疹が顔中や手に広がって掻きむしってしまいます。鬱陶しいので、アパートの隣の皮膚科に駆け込んで軟膏を出してもらいます。皮膚科の軟膏は素晴らしい、3日で綺麗に治ります。
6ヶ月に1回の診察と軟膏で合計150元(500元)。
マッサージ
家の隣のマッサージ屋さんが毎日夜中0時まで開いていて、値段が安いので通い始めました…。夜バイトが終わってシャワーを浴びた後パジャマで行ってそのまま寝る。いつも本かパソコンを見ていて肩こりが酷いので上半身だけマッサージしてもらいます。
2週間に1回30分300元(1000円)。
サプリ
- マルチビタミン&ミネラルとビタミンC
具体的な効果を期待しているというよりは、気休めに惰性で続けています。体調によって定期的にサプリの種類を変えています。DHCのバージンココナッツオイルやロイヤル化粧品のインナーEXも好きです。
- メラトニン
安眠用のサプリで、寝る1時間前に1粒飲むと眠りが深くなります。
- のど飴と喉膏
私は喉が弱く、風邪はいつも喉の痛みから始まります。私の仕事は常に歌ったり呼びかけたり1人で話し続けないといけないので、すぐに声がガラガラになります。そして週末はテキーラのショットを連続で飲んだり煙草を吸ってしまう…。無糖ののど飴や喉膏は必須で、特に商品にこだわりはありませんが、セールでまとめて買っておいて毎日何かしら摂取しています。
マルチビタミン&ミネラル: 4ヶ月分1700円、ビタミンC: 15日分20元(70円), melatonin: 100粒10€(1200円)、のど飴: 12元(40円), 喉膏: 15本80元(300円)
運動
私はバセドウ病で脈が早くなっていて、階段を登るだけで心臓がバクバクするので、激しい運動をしないようにお医者さんから言われています。心臓に負荷をかけないで私ができる簡単な運動が以下です。
- 歩く
アパートから最寄り駅までの1kmを歩きます。台北は町並みが面白いので歩いていて飽きません。途中でお茶を買ったり古本屋やスーパーに寄ったり音楽を聴いたり歌ったり電話しながら歩くのが好きです。夜1人でも安全で、小さい町なので偶然友達に出会うこともあって楽しい。
- ストレッチ
朝起きた時と寝る前ベッドで3分だけストレッチします。肩こりや普段の緊張から体がガチガチに凝っているからです。体に少しでも柔軟性があると気持ち良い。
カウンセリング
病名がつくような精神疾患があったり具体的な問題があるわけではないのですが、ちょっと気になったことがあった時にカウンセリングという形で第3者の人に話を聞いてもらっています。
利用しているカウンセリングサービスは以下2つです。普段の病院は英語対応で問題ありませんが、カウンセリングだけはどうしても日本語で受けたいので、オンラインのサービスがあって助かります。
- omamorii
lineのチャットで臨床心理士に相談できるサービスで無料です。相談を書くと24時間以内に返信してもらえて、対話しながら一緒に考えたり言語化を手伝ってもらえます。
気軽に利用できるという理由で、何となく自分の怒りや攻撃性について相談してみたら、予想外に泣き泣き子供時代を遡ることになって自分でも引いた…存在しないことになっていた記憶が端から掘り起こされて慄いた…。あれだけ根暗で内省的な手帳を作りながら、全然自己理解できていないことがよく分かりました。受け止めてくれる言葉が温かすぎて何度も音読しました、多謝。
- 海外心のヘルプデスク24時
海外在住者向けの日本語での相談デスクです。海外滞在を経験した心理カウンセラーや相談員に話を聞いてもらえます。通話かメールを選べます。
私は海外生活について特に悩みはないのですが、「ウィークリー相談」がたまたまぴったりだったのでお電話しました。中華圏の旧正月について話そう、という企画で、とりとめもなく話したのを聞いてもらえて安心感がありました…。海外在住者が気軽に相談できるよう積極的に取り組んでいるプラットフォームで大好きです。私は台北に日本人の知り合いがいないので、日本語での会話が恋しくなったらまた利用しようと思います。
- cotree
まだ利用したことはないけれど、上記2つのカウンセリングよりも規模が大きく本格的で、相談内容も方法も臨床心理士も選択肢が多いのでずっと気になっています。今のところ上記2つのカウンセリングで満足していますが、より支援が必要になったら利用してみようと思って常にリストに入っています。
その他の健康法と回答
スキンケア
夜型生活の肌荒れについて質問がありましたが、私は夜型でも睡眠時間が長いからか、昼間室内にいて紫外線をあまり浴びないからか、普段化粧しないからか、運良く肌荒れは感じません。
10ステップスキンケアが意外と2年続いていて、徹夜後や生理前でも肌が安定するようになった気がします。lushのスキンケア商品が大好きで、お店で必ず店員さんに相談してその場で試してから選んでいるのも良いのかもしれません。質問者さんも自分に合うスキンケア方法や商品を探してみて下さい。何より小さな肌トラブルでも早めに皮膚科に相談するのをお勧めします。
スマホ
私のスマホの使い道はカメラと外出先での連絡が主なので、スマホを見るのは1日2時間以内にするようにしています。その影響かスマホにかかる料金は月500円以下です。中毒性のあるものや余計なアプリはスマホにダウンロードしていません。ゲームは全くやらないし、写真や動画も撮りっぱなしで加工しません。
FOMO, 時間と労力の無駄で、私は自分の現実の生活に集中したいので、SNSから意識して離れるようにしています。友達は皆インスタグラムを一番アクティブに使っているようですが、私は氾濫するイメージが無理なのでアカウントを持っていません。フェイスブックはスマホにメッセンジャーだけDLして連絡用に使っています。ツイッターは大好きですが、友達と特に好きなアカウント数人をリストに入れている他は、実はほとんど他人のツイートを見ていません。フォローする人は300人以下で定期的に整理しています。
酒
週末しか飲まないようにしています。
シャワー
1日家に閉じこもることもありますが、必ず毎晩シャワーを浴びパジャマに着替えるようにしています。寝付きと翌日のスタートが楽になるので…。とは言え髪が長すぎてシャワーとドライヤーが面倒臭いから、最低限体は毎日洗って、髪は2日に1回ドライシャンプーで楽しています。
香りが良いlushのHoney I Washed The Kidsという石鹸とNo Droughtというドライシャンプーの組み合わせだとシャワーのやる気が出る…。
掃除
清潔は健康の条件のような気がするので、2週間に1回業者の人にお掃除に来てもらってアパート全体を徹底的にピカピカにしてもらっています。
学業との両立
バセドウ病の症状の一つは非常に疲れやすく気怠さが続くことです。薬を飲み始めて3,4ヶ月経つと甲状腺ホルモンが安定するケースが多いそうなので楽になると思いますが、それまではしんどい状況が続くかもしれません。
私は辛い時期は先生に事情を説明して診断書を提出して、授業を休む代わりに家でできる課題を出してもらいました。体力が全くなく1日中ベッドで過ごす日もあれば、よく休んだ後数時間動ける日もあったので、予想できない自分の体調とペースに合わせて自主学習するよう先生に配慮してもらいました。私はこれを機にリモートでのバイトも始めました。
「病気との付き合い方」「病気に対するネガティブな感情への向き合い方、受け入れ方」
she isの12月の企画記事でも触れています。
質問に応じて上の記事に付け足すとすれば、病気に対する他人の評価についてです。病気によっては誤った認識や不理解からスティグマが付いてくることがあります。近代史を振り返ると、その代表的な例がエイズやハンセン病、精神疾患です。偏見をもとに個人から忌み嫌われるだけではなく、国の政策として隔離されたり不妊手術を受けさせられたりプロパガンダに利用されたり正しい予防・治療法への入手権を奪われてきました。
これらの病気と私の病気は状況が全く違うので、単純に比較することはもちろんできません。でも、質問1のように病気に対して嫌な反応を受けた時、質問2のように自分が病気に対して嫌な感情を抱く時、抑圧されてきた患者・回復者達を思うようになりました。当事者が残した詩や文学、写真、音楽、絵画がたくさんあります。また、それに呼応する非当事者による研究論文、映画、現代アート作品も次々に生み出されています。病気とそれに付随する差別への憤り、悲しみ、不安、絶望、糾弾、闘い、生きたいという意思、病気と生きる日常、仲間、生活の知恵、美学、賛歌、願い、誇り。彼らが切り開いた道の上で足跡を感じながら、私も同じ道を裸足で歩いている気がします。
もしかしたら私も病気という共通点があるから、彼らの声に一層共鳴するのかもしれません。もしそうだとしたら私は病気になって良かったと思う。病気への不安や孤独や不当な扱いを感じた。他人の病気について傾聴する大切さを実感した。過去の病人達の言葉が私の声となった。これが今後他の病人への共感や思い遣りに繋がるかもしれません。他の病気に対する差別にも敏感になれるかもしれません。もっと深く他人を理解できるかもしれない。「自己責任」なんて誰に対しても絶対言えない。だから20代の今、病気になって良かった。
健康は確かに幸せなことだと思いますが、不健康だからと言って不幸ではありません。私達のアイデンティティは病気だけではありません、病名は私の名前ではありません。I am more than my disease. だから病気だけに囚われないようにしています。これも過去の患者・回復者達の生き様から教えてもらいました。
生きていれば誰でも何かしらの病気は避けられないと思います。周りの人々も皆必ず病気に罹ります。今話題のコロナウイルスのように、これからも新しい疾患が生まれ、病気や人種に対する差別が浮き彫りになるかもしれません。その時どう向き合うのか、自分の病気を通して学んでいるところです。
「いつか私の痛みがあなたに跡を残すだろう」
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