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優しく生きる

優しく生きるように、心がけてきた。

だってあまりにも世の中が冷たくて、
凍えそうだったから。

びっくりすることばかりで。

何故、そこまで冷淡に言い放てるのか。
きっと本人は何も気づかずに、
考えずに言葉を発しているのだけれども。

その人だけが、抱え込んでいるもの
背負っている大きな塊が
あるのかも知れないけれども。

だから、そう考えると、
その人は何も悪くなくて。

きっと社会の荒波に気づかないうちに
飲み込まれてしまっただけなのだろうと。

それでも、何度も、何度も
言葉の壁にぶつかり、
その度に、心が痛み、

砕けて泣きそうになった。

大人になるということは
一体どういうことなのか、何の為なのか
全くわからなくなってしまった。


だから、私と接する人には
優しさを渡そうと決めた日があって。

世の中がこんなにも、凍っているなら
私と接する人には、
何らかの優しさを手渡たそうと。

天文学的な、奇跡的な数字で
何故なのか、全くわからない理由で
せっかく、出会えた仲なのだから。


小鳥のさえずりがきこえる、
薫る春のように。

真夏の夜に見つける、
素早い流れ星のように。

ゆっくりと確実に季節を染める、
秋の葉っぱのように。

もみの木の着飾った姿が、
万人を楽しませるように。

私の個性で、心いっぱいの
優しさや、安らぎや、楽しさ、希望を
無償に渡せる人になりたくて。


でも、いつしか社会の決めごとに
本当に気づかないうちに同調して、
同じ旋律を弾き始めてしまった日があった。

その日から、私の個性も性格も、心までもが
他人のものになった。

人の目を異常に気にして、
思ってもないことに頷いて、
何故こんなことをしているのだろうと
思いながら、必死に周りの全てに合わせた。
必要とあれば、大きな態度も取ってみた。

気づいたときには、遥か遠くまで
ゾッとするほど高速度で、
幼い頃の私が見たら
酷く失望する道を駆け抜けていた。


それに気づいたのは、
やはり優しさのおかげで。

その人は自分が怪我をしているのに
誰よりも多く、人の為に走っていた。

すごく具合の悪いときも
またみんなの為に動けるように
早く良くなるね、と約束してくれた。

私の苦しみに
私よりも先に大泣きしてくれた。
あまりにもびっくりして、
こちらが泣くのを忘れてしまう程に。

こんなにも神さまのような子がいるのかと、
ちょっとドジな神さまが、間違って
地球に落ちちゃったのかなと思う程に。

見たことのない、
天然記念物を目の前にしている感覚だった。


初めてこんなに良い子に巡り合って
人生を見つめ直した。

完全に私の芯が崩れていた。
言い訳をしたいとも思わなかった。

本当になりたいもの、
やりたいこと、人生の意義。
理想は山のようにある。

これからも増え続けるだろう。

それらを絶対に、
もう二度と見失うことがないように。

人々と自然と、その他の
美しいものだけを吸収して、
汚れることのないように
力強く生きていきたくて。

そして、巡り合った人々の温かさで、
私が形成されていくことを
何よりの誇りとして。


これからは、どんな状況でも
精一杯の優しさを
人生の途中で出会った人に手渡していこう。










サポートは、感性の探求に使わせて頂きます。 *世の中に美しいものが一つでも増えたら 人々の心が、生活が豊かになる。 そう信じて、これからも作品をお披露目致します。