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俺ガイルを読んだら、嫌われる勇気が身についた話 Part2

「嫌われる勇気」×「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」のPart2です。まずはPart1の記事から見ていただけると幸いです。

【完全理解】俺ガイルを読んだら「嫌われる勇気」が身についた話 Part1

前回の8巻の内容(アニメ第二期3話~5話)の続きを書いていきます。今回の俺ガイルからは、嫌われる勇気に関する「共同体感覚」、またそれを落とし込むためにエドワード・L・デシの「モチベーション理論」を引用しています。

それでは具体的に書いていきたいと思います。

1:【あらすじ】ヒロイン2人の生徒会選挙の課題解決法 

…なら、あなたのやり方には何の意味があるの?

選挙の応援演説で比企谷八幡が失態し、課題である「一色いろは」の信用を保ったまま生徒会選挙で落選させる策に対し、ヒロインの1人、完璧主義の雪ノ下雪乃が憤りを感じていました。

今回に限って言えば、とりあえず回避。投票で不信任になった後、補欠選挙については手を引いて自然の流れに任せる。それが正解だ。
今回に限って? いいえ、違う。

比企谷八幡は過去の文化祭、修学旅行の依頼に対しても他者から見ると自己犠牲と呼ばれる手段を取っていました。

そこで、ヒロイン2人も別行動で本課題の解決手段を悩みながら結論を出します。

それは、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣が生徒会選挙に立候補し、一色いろはを落選させるという方法でした。

先生からの評判も高く、生徒からも優秀と思われている「雪ノ下雪乃」、学校内の上位カーストの存在感と社交性の高い素敵な女の子である「由比ヶ浜結衣」

この2人が立候補することは、確実に一色いろはの信頼を保ちつつ落選させる方法でした。この方法ならば「一色いろはも対抗馬が優秀だから落選して仕方がない」となるので、比企谷八幡も自分が確実に嫌われる保証がない以上、認めざる得ない策となりました。

しかし、この方法は別の問題を生み出します。それは「比企谷八幡、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣が所属する奉仕部が空中分解する可能性が高い」ということです。これは、2人のどちらかが生徒会長となった場合、奉仕部に現実的にキャパを割けず、部活動がいずれ無くなるということでした。

図1

そして、比企谷八幡は思います。

誰かに役を押し付けてしまうのは、苦しい。大切に思っている物を守ろうとして、その結果手放してしまう。そんな彼女の姿を見ることは、それはとても苦しいことだ。

自分が実施しようとしていた自己犠牲を雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣が行う。この方法に、比企谷八幡は矛盾を抱え、苦悩するのでした。

2:【あらすじ】比企谷八幡にできることは、なんだ

ぼっちは人に迷惑をかけないように生きるのが信条だ。誰かの重荷にならないことが矜持だ。故に、自分自身でたいていのことはなんとかできるのが俺の誇りだ。

そんな比企谷八幡でも今回の件は、どうにか解決したいと思います。しかし、突破口が見つからない状況です。ここには2つの問題があり、

単純に解決する手法が自分独りで思いつかない

②自分が実施してきた方法だけに感情面で折り合いがつかない

この2つが問題として挙げられます。そこで、比企谷八幡は悩んだ挙句に、15年一緒に過ごしてきた唯一頼れる妹「比企谷小町」に相談します。比企谷小町は、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣とも交流があり、状況を即座に理解します。

そっか……、お兄ちゃんらしいなぁ。でもね、それを理解できるのは小町だからだよ。
馬鹿だなぁこの人って笑って済ませられる。ほんとにしょうがないなぁって思える、それで、……ちょっと悲しくなる。

15年過ごした比企谷八幡の妹は唯一の理解者でした。そのため、兄、比企谷八幡の動かし方も理解しています。

小町、雪乃さんも結衣さんも好きだな。だから、あの部活がなくなると困る。だって、今なくなったら、やっぱり疎遠になっていくと思うもん。

そこで、最後の一言が比企谷八幡の背中を押します。

だからさ、小町のために、小町の友達のために、なんとかなんないかな。
…妹のためじゃしょうがねぇな。

このことにより、先ほどの2点目の問題点である「自分が実施してきた方法だけに感情面で折り合いがつかない」を解決します。


そして比企谷八幡が認識している課題が「奉仕部を崩壊させないためには、何をすれば良いのか」と変わります。そして、最後に彼は思考します。


比企谷八幡にできることは、なんだ。


3:モチベーション理論の観点から「因果性のない外的動機づけを行う」

感情面で折り合いをつけた比企谷八幡は、このあとに本課題を解決(?)していきます。続きに関しては、本noteには記載しないので、是非、アニメやラノベ原作をチェックしてみてください。

さて、ここで比企谷八幡の行動を分析してみたいと思います。単に「ひねくれているから」の一言で片づけることもできますが、ここから学べることは「直感でやりたいことがある。でも自分の過去の行動が引き金となり、素直になれず認められない」だと思っています。まずは「エドワード・L・デシ」が提唱するモチベーション理論を引用すると、モチベーションには2つあるようです。

図2

このように「外発的動機づけ」と、「内発的動機づけ」にわかれます。では、今回の比企谷八幡は、どちらを使いモチベーションを上げたのでしょうか。

結論から書くと「外発的動機づけ」→「内発的動機づけ」という順番でモチベーションを上げています。

比企谷八幡は、過去の自己犠牲的な行動により、感情の折り合いがつかず「内発的動機づけ」が不可能な状態でした。そのため、まずは「妹から評価を貰える」ということを、外発的動機づけとして行います。その後に、感情面での折り合いをつけて、内発的動機づけに繋げていくとい行為に移ります。

図3

これを私は「動機の天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)」と、呼んでいます(隙の生じぬ二段構えだからです。引用は「るろうに剣心」の主人公の技)。


4:嫌われる勇気の観点から「共同体感覚の3条件は、どれが欠けてもならない」


そして、「嫌われる勇気」の観点からはいかがでしょうか。ここで着目するべきポイントは、

比企谷八幡が認識している課題が「一色いろはを生徒会選挙で落選させる」から「奉仕部を崩壊させないためには、何をすれば良いのか」と変わることです。

これは前回の記事で、比企谷八幡は人間関係を仕事で捉える癖があると記載しました。

このとき、比企谷八幡は雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣を「交友、もしくは愛」の関係と捉え始めます。そして、その先の延長線上にある関係の「共同体感覚」を無自覚ながら求めにいきます。

ここに、出てくるキーワード「共同体感覚」とは何でしょうか。この「共同体感覚」というのは、人が全体の一部であること、全体とともに生きていることを実感すること、そうした感覚のことをいいます。簡単にいうと、人々が根源的な欲求として抱える「ここにいてもいいのだ」という所属感です。比企谷八幡も、この共同体感覚を求めており(作品のテーマとなっている部分)、その一つのステップとして彼女たちとの関係を進めようとします。

そこで、この「共同体感覚」を満たす条件として以下の3つが挙げられます。

図4

上記の内容で、比企谷八幡が今まで満たしていたのは、1の「自己受容」、3の「他者貢献」の点です。

かつての俺のやり方はけして犠牲なんかではない。まちがってなどいない。数少ない手札を切り、効率化を極め、最善を尽くした。

それは作中表現の比企谷八幡の思考から読み取れます。しかし、この記載は以下に続いていきます。

自分の行為は、客観が存在した場合、その完璧性は崩れる。憐れみや同情の視線によって、それは陳腐なナルシズムにさえ映ってしまう。憐みと同情は他者を貶める感情だ。
だが、憐みと同情以外の客観性もおそらくは存在し得る。
目の前でまざまざと見せつけられて、初めて自覚した。
ーただ傷ついてほしくない。

また、この言葉こそが先ほど記載した、比企谷八幡が交友、愛の関係と捉えて、シフトしていく描写となっています。但し、ここで欠落しているのが2の「他者信頼」。比企谷八幡は、ずっと独りぼっちで今まで誰も頼らなかった、また頼られもしませんでした。そのため、この他者信頼という理解が乏しいところがあります。

結論から書くと、この8巻の段階では、まだ他者信頼(ヒロイン2人が該当)ができません。この後は、ヒロイン2人に相談せず課題を解決していきます。そのため、8巻の最後はハッピーエンドではなく、どこか違和感のある終わり方となっています。

そこで9巻と繋がって「本物」の関係について模索していくストーリーと繋がっていくのです。


ここで学べることは、このアドラー心理学が提唱する「共同体感覚」を身に着けるためには、この3条件を全て満たさなくてはならないということです。「自己受容」、「他者信頼」、「他者貢献」は全て必須条件であり、どれが欠けても「共同体感覚」の取得に繋がらないということとなります。

比企谷八幡の青春劇は、惜しいとこまでいくも、まだ一歩及ばない。それが俺ガイルの8巻の魅力だと思っています。

最後にまとめますと、Part1では「自己承認欲求の捨て方」、Part2では「共同体感覚の取得のための捉え方、そして取得するために弊害となる感情の整理・モチベーションの上げ方(動機の天翔龍閃)」について記載しました。


では、「自己受容」、「他者信頼」、「他者貢献」を取得するためにはどのようにやっていけばいいでしょうか。特に今回は「他者信頼」の部分ですね。

…それは、今後の「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」で学んでいければと思います。アニメ3期の内容に該当してしまうので、今回は一度、ここで区切らさせていただきます。

何が言いたいかといいますと、ここまで整理した上でアニメ3期(2020年7月9日放送開始)を一緒に見ていきましょう。私の好きな作品なので、皆様にも見ていただきたいと心から思っております。可能なら、この記事を読んだ上でアニメ1期、2期の復習をしてみてください。

新しい発見があるカモしれません。


参考書籍

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている 8巻 著者 渡航

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 著者  和月伸宏

人を伸ばす力 著者 エドワード・L・デシ

嫌われる勇気 著者 岸見一郎、古賀史健

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