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2021年11月の記事一覧

葬り去れない私の間違いのこと

恥ずかしいことなんて山ほどある。 高校二年の部室で性行為を目撃されたとき確かに私は「これほどの恥は二度とない!」と思ったはずなのにそれ以降もガンガン積み重なっていった。 恥ずかしいことを思い出すとイオンのエスカレーターでもスタバのレジ前でも台所でも叫んでしまう。ここ数年いちばん強く叫んでしまったのは、映画館でだった。息を吸い込みすぎてひっくり返るような短く高い叫びで、だけどその瞬間スクリーンでは、ある映画予告とその音楽が大音量で流れていたから、両隣の息子たちにも客席の誰にも

少林寺木人拳で奇跡をおこせ!

子供の頃、地元に今は無き「○○東映」という東映の映画館があって、ときどき東映まんがまつりを観に行った。 「東映まんがまつり」はアニメや特撮ヒーローものが数本まとめて上映される子供向けのオムニバス映画で、アニメキャラやヒーローのオールスター勢ぞろい感とフェスティバル感がはんぱない、子供にとっては異様にテンションの上がる映画であった。映画館に連れて行ってもらえるというイベント感が、また気分を盛り上げる。 1975年、1976年あたりは観に行ったような記憶がある。 1975年の「

レジ袋が開かないまま立ち尽くす43歳

鍋の用意にスーパーに買い出しに行ってレジを終えると、予想以上に荷物が多いのでレジ袋をもらいました。 で、エコバックに荷物を詰めて残りのお肉などをレジ袋に詰めようとしたのですが袋がまったく開きません。なにをどうやってもレジ袋がぴったり張りついて開かないのです。 わたしは折ったり湿らしたり数分のあいだ格闘しましたが、あまりの開かなさに驚き、そして軽く絶望しました。まるで宇宙が終わったかのようにそこに立ち尽くしたのです。 まわりをみわたせば主婦や主夫の方、ビジネスパーソンなど

ザコでも生きられるんだ。

冷たい空気が漂う秋夜の星空の下。 ある一つの曲がオレを優しく包み込んでくれた。 昔からこの曲は好きだった。 しかし、もっと好きになってしまった。 特にLittle Glee MonsterがカバーしたJupiterがあまりにも良すぎるので聞いてほしいのです。 夜に似合いすぎるんだなぁ、これが。 人間って、弱いじゃない。 その中でもオレは結構弱い方だと思うんだけど。 一見強く見える人でも、実は心のどこかに弱さを抱えていたりするもので。 世の中に応援ソングや自己啓発本

無駄は、面白い

ダメだ。無駄遣いはダメだ。 ちょっとでも無駄遣いをしようものなら、全国の主婦たちから睨みつけられることだろう。 だから、無駄遣いはダメだ。 ホントだろうか。 確かに、無駄な出費は極力避けた方がいいのはわかる。 オレのように、計画性もなく、目先の甘い蜜に釣られて、ゲームに課金してしまうような無駄遣いは本当にやめた方がいい。 あっという間に金欠になるから。 いわば、経験者は語るというやつだ。 しかしどうだろう。 無駄遣いは、時に文字通りの「無駄遣い」にならないこともあ

優しい人

嬉しいことがあると、残しておきたくなる。 今日、コンビニで買い物をすませて家へ帰ろうとしたときのこと。出口を出てすぐに、指からするりとあるものがなくなったことに気がついた。 指輪だ。小指とひとさし指にはめていた、ひとさし指の指輪。するりとした瞬間に気がついたので、その場をすぐに探せば見つかると思った。けれど意外と見つからない。 大した指輪じゃない。高価でもないし、誰かからもらったわけでもない。けれど何となく「まあいいか」という気持ちになれなかった。 5本セットで買った

猫にやられている

最近、猫にやられている。 抱き上げようとしたらガブリと噛まれた。 「痛え」 噛まれたまま手を手前に引いたら、猫の歯が手に食い込んだ状態で親指の腹を移動した。その結果がコレ。 なんかもう噛まれることに慣れてしまった自分がいる。 保護猫として飼い始めて3ヶ月ほど。 未だに人の「手」が怖いのか、手を使って何かをしようとするとがっつり噛まれる。甘噛みのレベルではないのが困る。 TwitterやInstagramで流れてくる可愛いらしい猫の動画や写真を見ては「同じ猫なのだろうか?」と

みそ鍋と父親と。

金曜の夜、仕事が終わると、そのまま日向に直行した。 日向は父親が住んでる街だ。 着いたのが夜9時半。 駐車場に車を停めると、父親が窓を開けて顔を出した。 「お疲れさん」 「あぁ」だったか「おぉ」だったか、適当な返事をして車を降りる。 11月も末になるとさすがに風が冷たい。めったにこない街の夜だと、さらに寒く感じる。 「これ、」と父親にA4のペラ紙を渡した。 暗がりだったこともあり、父親は中身を確認できなかったようだ。「後で読む」と言って紙をとりあえずしまった。 家に入ると、

職場のマジックアワー

ウチの会社の定時は18時だ。 数年前と比べると、みんな帰るのが早くなったと思う。 気が付けば世の中では「働き方改革」なんてワードも出てくるし、国からは1年間に必ず5日は有給を消化することも義務化された。 早く帰るのはいいことだと思う。家に帰ればそれぞれの自由時間や、家族との時間が始まる。 そんな中で、決して毎日ではないのだけれど、職場で起こる不思議な時間がある。その時に残ってるのは大体3〜4人くらい。みんなあらかた仕事を終えていて、でも何となく残っていて、バカ話するくらいの

私は布団の海を漂う主婦

下書きしていたこのタイトルだけ見て何事かと思った。 時々自分の書いたものにビックリしたり、恥ずかしながら爆笑してしまうモフ虫です。 夜、布団に入るのが今人生の幸せランキングの上位に来るくらい幸せです。 娘が寝るタイミングで私も布団に入るのですが 夫には自分時間があるので0時くらいまではテレビのある方でゆっくりしています。 カーテンを閉めてうっすら暗い寝室。 カーテンはピンク。向こうの部屋の光がカーテンを通して温かみのある色もベスト! とりあえず、タオルケットに潜って感

あなたの6年間とわたしの6年間。

きゃらきゃら、と風に乗って楽しげな笑い声がこちらまで響いてきた。 信号を挟んだ道路の、十数メートル先の男女二人組。高校生...ではなさそうなので、勝手に中学生だろうと予想する。 二人は、腕を組んだり、手を繋いだりと、ひっついたりしているわけではない。 だがその空間は紛れもなく二人の世界で、カップルか、違ったとしてもそんな関係まで秒読みの二人なんだろう。 信号が変わり、少しずつ声が近付く。 「そんで、やまだっちがさあ、、、」 途切れ途切れに聞こえる声。こんなにも楽しそう

幼なじみ

かつて、あいつの家があった場所、 今は更地になっている、その土地の前に、佇んでいる人の姿が目に入った。 誰だろう、近所の人だろうか。 あいつの家が取り壊されることになったと、母から聞いたのは、ひと月前。 それまでは、あいつとその家族が引っ越して行ったあと、親戚だと言う一家がやって来て、住んでいた。 その一家も、子供の結婚やら、転勤やらで、とうとうその家を出ることになり、年期の入っていた家は、取り壊されることになったらしい。 工事に取りかかったら、あっという間だった

ポチッと症のステージ4です

ポチッとする癖がどうしても治らない。 ポチッとし過ぎるから月末が怖いんです。 先週末からアマゾンのブラックフライデーが開催されている。 複数のユーチューバー達が、何が狙い目なのか競って配信している。お願いだからやめてくれ。皆んな頭おかしいんか? お陰で僕の頭の中は常にお買い得品で埋もれている。危険ドラッグみたいなものだ。 ただでさえポチッとする癖があるのに、この1週間は更に酷い。指がおかしくなりそうです。朝起きてiPadを眺めてはポチッ、仕事で一息ついているときにポチッ、

『もしも一年後、この世にいないとしたら。』 ─生きづらいあなたへ─   #読書の秋2021

あなたの余命は、あと一年です。こう告げられたら、あなたは今からどう生きる? 私は毎日死と向き合っている。父の死をきっかけに、死とは何か、死ぬとはどういうことかを、考え続けている。 そして、いつしか死を考えることを通じて、生き方を考えるようになった。より良く生きるために死と向き合っている。それが今の私だ。 あなたは、何故?と思うだろう。 その答えは、死は生き方を映す鏡だからだ。 考えてみて欲しい。あなたの生があと1年と突然区切りをつけられたら、あなたは何をしたいと考えるだ