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【小説】映るすべてのもの

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(生まれてはじめて描いた小説)鏡の声が聴こえる女子高生と鏡の物語
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記事一覧

【小説】映るすべてのもの #1

──耳をくすぐる気配がまた。こんな日はそう、はじまるのだ。  瑠衣が今日の下校時に見た、…

中山明媚
9か月前
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【小説】映るすべてのもの #2

「われわれ鏡一族が言葉を話せるということは人間にいっさいしられてはならぬのだ……」  と…

中山明媚
9か月前
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【小説】映るすべてのもの #3

つづく雨音とにじんだ涙のあとにさそわれ瑠衣はすうっとねむりにとけていった。 *** 「──…

中山明媚
9か月前
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【小説】映るすべてのもの #4

 7月。昼からだいぶすぎたというのに太陽の熱視線は天と地を無視しながら、おかまいなしに身…

中山明媚
9か月前
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【小説】映るすべてのもの #5

「ちゃんと水のんだのにな……」  ベッドによこたわり右手をひたいにあてながら瑠衣がぽつり…

中山明媚
9か月前
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【小説】映るすべてのもの #6

 スイカ最高。ひとくちめでじゅっと甘さがひろがり、ふたくち食べると、かけらとジュースにな…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #7

──今日なにがあったんだろう。  勉強机にひじをかけ両手にあごをのせたまま瑠衣は一日をふりかえった。 里穂の告白にこたえた言葉は嘘じゃない。里穂にはなぐさめの軽口にきこえたかもしれないが、今朝、瑠衣もじぶんの顔がいつもとちがって見えたことに違和感をもったのはほんとうのことだ。教室全体のしっとりと浮きだつような気配もひょっとしたらそれが原因のひとつだったのか、そんな考えが頭をかすめる。  じぶんの顔がかわいく見える病気?ウイルス?伝染病?けれど感情がウイルスのように伝染すると

【小説】映るすべてのもの #8

「明日やすみなんだからちょっとぐらいいいでしょ」  あれから母みゆきは結局、中森明菜のTA…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #9

「あら、また木くずが」  母みゆきはおおきな姿見鏡の右下、アンティーク調の彫刻部分に目を…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #10

「りほぴょーん! いっしょに写真撮ろー!」  朝っぱらから全身でうるさいのはクラスのボス…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #11

 母みゆきの鏡台が膨張していた。 注意ぶかく見れば敏感な人間にまでわかってしまいそうなぐ…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #12

「……」 「どうしたの! 卓ちゃん! もの思いにふけっちゃって」  瑠衣の卓上ミラーに元…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #13

 大人から見れば高校2年生とはきっとたのしい時期に映るだろう。 中学生のような子ども扱い…

中山明媚
8か月前
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【小説】映るすべてのもの #14

 高校になってはじめて見る里穂のポニーテールは中学のころより位置がすこしだけひくくなっていた。  髪のかたちをおなじにすると里穂がいつのまにか中学生の少女からひとりの女性にかわりかけていたことがよりはっきりとした。  教室にはいった里穂はじぶんの席にすわる前に瑠衣をさがした。うしろの席ですわっていた瑠衣を見つけて「えへへ……」とうれしそうにしていた。 「今日はポニーテールなんだ」 「うん! そう」 「早瀬さんのポニーテールってなんか新鮮!」 「中学生のころはずっとそうだっ