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【あがり症】緊張の第1波と第2波

あがり症克服のために
トライアンドエラー
(セルフ人体実験ともいう)を
繰り返した、ロン毛のあがり症です。


今回は、
「緊張の第1波と第2波」
をテーマに投稿します。


さっそく、
「緊張の第1波と第2波」とはなんぞやと?


これを理解するためには、
脳の一器官である“扁桃体”の働きを
知っておく必要があります。


もはや、
私のnoteのレギュラーメンバーと化した
“扁桃体”ですが(笑)、

簡単におさらいしておきますね。


“扁桃体”のおさらい


人は自分の身に迫った脅威を
脳の一器官である“扁桃体”で察知しています。


例えると、このような感じです。

扁桃体は、迫ってくる自動車との衝突の可能性や、恐ろしげな通りがかりの人といった脅威を感知すると、視床下部と脳幹へただちにメッセージを送り、ストレスホルモン系と自律神経系を動員して、全身の反応をまとめ上げる。

〜中略〜

私たちが危険について意識的に自覚しないうちに、入ってくる情報が生命の維持にとって脅威になるかどうかを判断する。何が起こっているかに私たちが気づいたときには、体がすでに動きだしている場合がある。

体はトラウマを記録する P103
ベッセル・ヴァン・デア・コーク


このように、“扁桃体”は、
無意識のうちに身に迫った危機を察知し、
身を守るための行動をとらせます。


ちなみに、その“扁桃体”が
危険を察知するための脳内の情報伝達ルートは、
2ルートあると言われています。


それを、私なりにかみ砕いて
スライドにしたのがこちら。

エモーショナル・ブレイン P195
(ジョセフ・ルドゥ)
図6-13を参考に作成


第1のルートは、外部からの刺激に対して、
「無意識」のもと瞬時に反応(緊張)するルート。
(ただし、よく間違える。)


第2のルートは、外部からの刺激に対して、
「意識・思考」のもと反応(緊張)するルート。
(正確だが、反応が遅い。)


今回は、説明を分かりやすくするため、
第1のルートによる緊張を「第1波」、
第2のルートによる緊張を「第2波」

と表現しました。


今回は、これら「第1波」と「第2波」の
緊張のメカニズムについてお伝えしますね!


あがり症改善のために、
マストで知っておきたい内容です。


是非、読んでみてください!


今回はこちらの文献を引用しながら
進めていきます。


私の知識を深めるのに役立った一冊です。


緊張の第1波


こういった経験、ありませんか?


例えば、朝礼でのスピーチや、
会議でのプレゼンの出番が近づいてくると
“無意識”のうちに緊張が沸き上がってくること。


私は、もちろんあります、、、


現在は、かなりマシになりましたが、
以前は本当にひどかったです。


以前は、自分の話す出番が近づくと、
ウンザリするほど強い緊張がやってきましたから。


さて、なぜこんなことになるかというと、
”扁桃体“が、「人前で話す」という
危険な状況を察知したからですね。


この無意識に沸き上がる緊張が、
「緊張の第1波」となります。

緊張の第1波


この「緊張の第1波」、
先ほど紹介した文献にはこう書いています。

ネガティブな感情的情報を感知すると、すぐに一次的脅威モード (primal threat mode)が活性化される。生物として、安全を最大限にし、危険を最小限にすることに関連したスキーマであるため「一次的」と呼ばれている。いったん脅威スキーマが活性化されると、認知活動を支配するため、心配性の人にとっては知覚された脅威以外のものを処理することが困難になる。
※スキーマ=枠組み

セラピストのためのエクスポージャー療法ガイドブック P102
ティモシー・A・サイズモア

脅威モードは「その言葉通り」、まず自律神経の覚醒を引き起こし、強い感情によって暗示される危険性と同じように、実際の危険性を高く推論する。このような強力な身体感覚は、抵抗することが困難であり、人は身体感覚を減少させるための対応策を積極的にとろうとする。

セラピストのためのエクスポージャー療法ガイドブック P103
ティモシー・A・サイズモア


ひらたくいうと、人前で話す場面が迫った
時には、無意識のうちに
身構えた状態になるということ。


そして、一旦そうなれば、
脳の働きは”人前で話す”という危機への対処に
総動員されるということですね。


それとともに、自律神経が活性化し、
心臓がバクバクしたり、
呼吸が速くなったり
もします。


ここで知っておきたいのがコレ


不安の強い方がこの状態になってしまうと、
他に注意を向けることが困難になるということ。



これです。


過去の私が、まさにその状態でした。


当時、不安の強かった私。


「第1波」の時点で身体の反応が強く現れ、
圧倒的な緊張にのみ込まれていました。


こうなると、
「他に注意を向けるなんてとんでもない」
状態になってしまいます。


当時の私にとっては、人前で話すことが
それだけ脅威になっていたということですね、、


しかし、これはあくまでも私の場合。


人それぞれ反応は異なっています。


この第1波が来ても、
“なんとも思わない方”もたくさんいるでしょう。


というか、そもそも第1波があることに
気付いていない方がほとんどだと思います。


私が思うに、この無意識に湧き上がる
緊張の「第1波」にのまれるか、のまれないかが、
一つの分岐点
だと思います。


ちなみに、この第1波は、
“正確性”よりも“スピード重視”です。


仮に、無害なものを誤って察知したとしても、
“察知しないよりかはマシ”というのが
扁桃体の役割です。


ですので、次のステップとして
思考が働きだし、自分を取り巻く状況等の
把握を行うことになります。


緊張の第2波


繰り返しますが、第1波はスピード重視。


正確性は求めていません。


ですので、第1波の直後に思考が働きだし、
自分を取り巻く状況等を正しく把握しようとします。


この時の思考によって生まれる緊張が、
「緊張の第2波」となります。


緊張の第2波


文献にはこのように書いています。

学習された恐怖の歴史、認知的中核信念、そしてスキーマが、一次的脅威モードの引き金と処理を「プログラムする」。しかし、いったん活性化されると、一次的脅威モードの活性化の結果として必然的に生じるこの二次的再評価で、心が状況を処理し、評価し始める。二次的プロセスは、Clark & Beck (2010)によると、より意識的でコントロールされており、良くも悪くも一次的脅威モードにフィードバックを与える。もしこの精緻化プロセスによって、最初の脅威の評価に対する説得力のある代替案を出すことができなければ、不安は悪化するだろう。これは、過度の不安を抱える人にとっては、一般的な事実である。
※スキーマ=枠組み

セラピストのためのエクスポージャー療法ガイドブック P104
ティモシー・A・サイズモア


ひらたく言うと、
瞬時に訪れる「第1波」の後に、

・自分の緊張度合いはどうか?
・自分は話せそうか、話せなさそうか?
・自分を取り巻く状況はどうか?


といったことを思考し、評価するということですね。


その結果、「話せそうだ」と
自信を持つことができれば、自分の状態を
立て直すことができるかも知れません。


しかし、そうでなければ、
逆に不安を強めてしまう場合も。


引用文の中に、

「説得力のある代替案を出すことが
 できなければ、不安は悪化するだろう」


と書かれています。


このことは、私の経験に照らし合わせても、
おっしゃる通り!としか言いようがないです。


特に、もともと不安感の強い方の場合は、
この時の自分の思考によって、
不安を強めてしまう
場合があります。


たとえば、

・緊張してはいけない。
・声が震えたらどうしよう。
・頭が真っ白になったらどうしよう。

といった思考。


これはメチャクチャ危険です。


なぜなら、不安を強めるから。


不安が強まれば、交感神経が活性化し、
身体の反応がより強くなりますね。


結果的に、自分の思考によって、
自分の緊張をどんどん
高めてしまうことになります。


これが、いわゆる、
「緊張の悪循環」です。

緊張の悪循環


ちなみに以前の私がどうだったかと言うと、、、


この悪循環にハマりまくってました(泣)


前段でも書きましたが、

以前の私は、
第1波の時点で身体の反応が強く出て、
緊張にのみこまれていました。


その強い身体の反応を自認すれば、
そのあとに出てくる思考も、
おのずと、それに影響を受けたものになります。


まさに、先ほど書いた「良くない思考」を
自動的に立ち上げまくってました、、、


その結果、悪循環にハマり、天井知らずで
自分自身の緊張を高めていましたね。


チーン。。。


つまり私は、

無意識で沸き上がる「第1波」の緊張の後に、
自らの思考による「第2波」の緊張にも、
のまれていたということです。


今思い返しても、悲惨な状態でした。


まとめ


今回は、「緊張の第1波と第2波」と称して、
“無意識の緊張”と、”意識・思考下の緊張”
についてお伝えしました。


実はこのことは、今から60年以上前の
1962年に出版された本にも書かれています。

以前紹介した、クレア・ウィークスさんの
 「不安のメカニズム」です。
 個人的超オススメ本です。)

最初に何らかのきっかけで引き起こされた「恐怖の発作」が、一瞬にしてあたりを焼け焦がす閃光のように強烈で、そのショックが大きいと、あとで「恐怖に対する恐怖」が付け加わりやすくなります。恐怖の発作に襲われた人は、その「閃光」から逃れようと、怖がって身を縮めます。これはごく自然の反応なのですが、実はそのせいで、次の恐怖が付け加わってしまうのです。この二つの恐怖を、それぞれ「第一の恐怖」「第二の恐怖」と呼ぶことにしましょう。つまり、「第一の恐怖」とは、何らかの「危険」が生み出したもともとの恐怖であり、「第二の恐怖」とは、第一の恐怖がもたらした 身体の異常な感覚(よくあるのはパニック感)に対する恐怖です。過敏になっている人は、そもそも恐怖を引きおこした危険そのものよりも、恐怖がもたらした身体的な異常感覚に対して、より大きな不安を感じがちです。

不安のメカニズム P29
クレア・ウィークス


クレア・ウィークスさんは、
第1波を「第一の恐怖」
第2波を「第二の恐怖」と表現されています。


この本が出た当時、

脳科学や情動についての研究がどれだけ
進んでいたのかは分かりませんが、

氏の鋭い洞察力に脱帽の思いです。


そして、わたしがメチャクチャ共感するのが、
続いて書かれるこの言葉。

すでにその人が持っている過敏という厄介な性質が最初のショックを長引かせるため、「第一の恐怖」と「第二の恐怖」という別々の二つの恐怖が、一つの恐怖に感じられてしまいます。そして、この二つの恐怖を見分けることができないために、自分が第二の恐怖を付け加えたことが、病気の回復を遅らせているのだということに気づきません。さらに、第二の恐怖の発作が襲ってくるたびに、その人は知らず知らずのうちに自分をどんどん過敏にしていきます。こうした人にとって最大の敵は、実は「自分に今、何が起こっているか理解できていないこと」なのです。この敵を倒せば、戦いはずっと楽になります。

不安のメカニズム P30
クレア・ウィークス


ホント、ここに書いている通りなんですよ~。


もう、脱帽しかないです。(本日、2回目の脱帽)


重度のあがり症の方の一番の敵は、

「自分に今、何が起こっているか
 理解できていないこと」


なんです。


まさしく、過去の私がそうでした。


得体の知れない恐ろしい身体の症状と対峙し、
ボロクソにやられていましたから。


それもこれも、

「自分に今、何が起こっているか
 理解できていないこと」

が原因です。


原因が分からなければ対処のしようも
ありませんから。



さて、少し話は変わって、
“孫子の兵法” に登場する言葉に、

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」

というものがあります。


その意味は、
「敵と、自分のことをしっかり把握していれば、
 百戦戦っても敗れることはない。」

ということ。


緊張のメカニズムを学び、
自分の身体がどうなっているのかを知る。


悩まされていたものの正体が分かれば、
一気に気持ちが楽になります。



“暗中模索”はしんどいです。


まずは、正しく知ることからはじめましょ!


私の体験談が
皆さんのあがり症克服の
お役に立てれば幸いです。

(関連リンク)
無意識に湧き上がる緊張はどこから来るのか?
役に立つ話:「恐怖条件付け」について
表情に反応する脳みそ
自己暗示によってセルフイメージを高めても、
効果がなかった話
45秒でわかる:成功体験が大切な理由

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