Lonesome Cowboy

70年代のロック、シンガーソングライターに始まり、カントリー、ブルーグラス、ブルース、…

Lonesome Cowboy

70年代のロック、シンガーソングライターに始まり、カントリー、ブルーグラス、ブルース、サザンソウルとアメリカンルーツ音楽に根ざした音楽をこよなく愛する1966年生まれ。アメリカ音楽の数々の「聖地」を巡る旅も体験。翻訳とPRツールデザインを生業としています。

最近の記事

ジェイムス・テイラー コンサート雑感(2024年4月6日 東京ガーデンシアター)

ジェイムス・テイラーは、私にとって特別な存在だ。14〜5歳の頃に初めて聞いて以来40数年、ジェイムスの音楽は常に私の人生のBGMだった。20歳前後の多感な時期、彼の曲はジャクソン・ブラウンの曲とともに、私の人生の「道標」だった。「Country Road」や「Riding On A Railroad」に自分探し・アメリカ探しの旅に出る勇気をもらい、疲れた時には「Yon Can Close Your Eyes」や「Don't Let Me By Lonely Tonight」に

    • L.ヘルム/J.キャッシュ/E.ハリス/C.ダニエルズらによる出色のコンセプトアルバム『The Legend Of Jesse James』

      前回の記事でエミルー・ハリスの2番目の夫ブライアン・アハーンについて、彼が関わった70年代の作品を軸に取り上げた。一方で、エミルーの80年代を語るとき無視できないのが、3番目の夫ポール・ケナリーの存在だ。今回は、このポール・ケナリーについて、彼を語る上で鍵となるアルバム『The Legend Of Jesse James』を軸に掘り下げたい。 アルバム『The Legend Of Jesse James』(邦題『ジェシー・ジェイムスの伝説』)は、1980年にA&Mレコードか

      • プロデューサー ブライアン・アハーンと「White Line」

        少し前にエミルー・ハリスの初期の曲「アマリロ」(Amarillo)について書いた際、彼女の当時のプロデューサーであり、その後夫にもなるブライアン・アハーンについて言及した。70年代のカリフォルニアにおいて、ロックサイドからのカントリーロックでもナッシュビル産のカントリーでもない、独自のカントリーミュージック・モデルの形成に寄与したという意味で、ブライアン・アハーンの果たした役割は大きいはずだが、その貢献度については(特に日本では)これまであまり語られてこなかったように思う。そ

        • 新譜レビュー:John Leventhal 『Rumble Strip』

          今回は、1月末に発表されたジョン・リヴェンサールのデビューアルバムを取り上げたい。「デビューアルバム」と言っても、彼はぽっと出の新人などではない。それどころか、プロデューサーとして19回もグラミー賞にノミネートされ、そのうち1998年にはプロデューサー&コンポーザーとして「ソング・オブ・ザ・イヤー」と「レコード・オブ・ザ・イヤー」も受賞している。90年代以降、「アメリカーナ」と言われる分野の一翼を担ってきたベテランミュージシャン。その彼が、71歳にして初めて発表した自身のアル

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          ボズ・スキャッグスとジェフ・マルダーの 一見意外な音楽的共通項

          前回、ボズ・スキャッグスの音楽的ルーツに触れた記事を書いた際、彼の実質的ファーストアルバム『Boz Scaggs』(1969年)を聞き直していたのだが、そんな中でちょっとした「気付き」があった。それは、ボズの根っこにある音楽性とジェフ・マルダーのそれとの共通点だ。例えば、アルバム『Boz Scaggs』には、一般的な彼のAORイメージからはほど遠いカントリーブルース的な要素が垣間見られる。ボズがヨーデル唱法を聞かせるジミー・ロジャースのヒルビリーブルース「Waiting fo

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          ボズ・スキャッグスの音楽を何と形容するか?

          ボズ・スキャッグスが来日する。ここのところ東京公演1回切りという海外アーティストが多い中、2月19日の東京から3月1日の福岡まで、なかなかのサービスぶりだ。ボズの来日は、1978年の初来日から今回で何と23回目になるという。それだけ彼が日本のファンに愛されているということだろう。 ボズのコンサートは今までに4回見た。最初に見たのは1983年。ジョー・ウォルシュ、マイケル・マクドナルドとのジョイントで、会場は大阪球場だった。どんな曲を演奏したかなど詳細は残念ながら憶えていない

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          テキサス州アマリロ

          みなさんが「テキサス」と聞いて思い浮かべる町はどこだろうか? 全米第4の都市で大リーグ・アストロズの本拠地であるヒューストン? NFLカウボーイズの本拠地で、ケネディ大統領が暗殺された街、ダラス? あるいは「ライブミュージックの都」(Live Music Capital of the World)としても知られる、州都オースティンだろうか? これら3都市とも、私にとってはそれぞれに興味深い街であり、実際にヒューストンは2度、ダラスは1度、少しの時間ながら訪れている。音楽的に一

          テキサス州アマリロ

          新譜レビュー:Sarah Jarosz 『Polaroid Lovers』

          今回は、先週(2024年1月26日)発表されたばかりの真新しいアルバムを紹介したい。シンガーソングライターであり、マルチインストゥルメンタリストでもあるサラ・ジャローズの7作目にあたる新作『Polaroid Lovers』だ。最初に言っておくと、このアルバムは従来のサラ・ジャローズのイメージからするとかなり異色のアルバムだ。今までサラのことを知らなかった人には、そのことを知っておいてもらいたい気はする。ただ、彼女らしくない作品かと言えば、必ずしもそうではない。サラ・ジャローズ

          新譜レビュー:Sarah Jarosz 『Polaroid Lovers』

          ウィリー・ネルソン 「Me and Paul」

          先日、ナッシュビルを訪れた際の古い話を書いたが、結果、自分自身がそれに感化されて、このところカントリーのアルバムを久しぶりによく聞いている。そんな中、今までさほど聞いていなかったウィリー・ネルソンのRCA時代(1965〜72年)のコンピレーションCDも引っ張り出してきたのだが(彼のRCA時代のアナログ盤は日本ではまず見かけない)、そのCDの1曲目「Me and Paul」の歌詞が今まで以上に耳に留まった。 「Me and Paul」はウィリーのファンにとってはそこそこ有名な

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          ナッシュビル紀行1987ー後編〜その頃のカントリーミュージック

          今から37年前の1987年にカントリーミュージックのメッカ、テネシー州ナッシュビルを訪れた際の旅行記。後編の今回は、到着2日目、カントリーミュージック・ビジネスの拠点であるミュージックロウを訪れた際の記憶から。(旅の前編については下記リンクをご覧ください) 1987年3月15日、日曜日。この日は朝からミュージクロウ(Music Row)に向かった。ミュージクロウと言うのは、ナッシュビルのダウンタウン(中心街)から少し外れたところにある、カントリー業界のレコード会社、出版社、

          ナッシュビル紀行1987ー後編〜その頃のカントリーミュージック

          ナッシュビル紀行1987ー前編〜ナッシュビルへの道

          今回はカントリーミュージックのメッカ、テネシー州ナッシュビルを訪れた際の古い記憶を辿ってみたい。先日のナンシー・グリフィスを紹介する記事の中で、彼女の出身地であるテキサス州オースティンがルーツ系音楽のライブミュージックのメッカであるのに対し、ナッシュビルはカントリーミュージック・ビジネスの集積地であると書いた。また、以前のクリス・ヒルマンの記事では、アメリカのカントリーミュージック業界はロックやポップとは別の市場として形成されており、その拠点がナッシュビルである点にも触れた。

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          新譜レビュー:『More Than a Whisper: Celebrating the Music of Nanci Griffith』 (Various Artists)

          今年(2023年)9月に発表された、故ナンシー・グリフィスの音楽を讃えるトリビュートアルバム『More Than a Whisper: Celebrating the Music of Nanci Griffith』を紹介したい。2021年に68歳で亡くなったナンシー・グリフィスは、80〜90年代を中心に活躍したテキサス出身の女性シンガーソングライター。一般的な知名度は高くないが、アメリカ深部の市井の人々の心情を掬い上げるような、真の意味での「フォーク」ソングを聞かせてくれた

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          ナンシー・グリフィス・トリビュートアルバム・レビューへの前書き(後編)

          今年9月に発表されたナンシー・グリフィスへのトリビュートアルバム『More Than a Whisper: Celebrating the Music of Nanci Griffith』を紹介する前にナンシー・グリフィス自身のことを知っていただくコラムの後編。今回は、私がナンシー・グリフィスを本格的に聞くようになった1993年の話から。(前回の内容は下記リンクをご参照ください) フォークソングライターたちに捧げられたカバー集『Other Voices, Other Roo

          ナンシー・グリフィス・トリビュートアルバム・レビューへの前書き(後編)

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          今回取り上げたいアルバムは、この秋(2023年9月末)に発表された新譜で、タイトルは『More Than a Whisper: Celebrating the Music of Nanci Griffith』。2021年に68歳で亡くなったシンガーソングライター、ナンシー・グリフィスの音楽を讃えるトリビュートアルバムだ。しかし、ナンシー・グリフィスと言っても、ご存じの方は少ないかもしれない。何しろ、ウィキペディアを見てみても日本語版ページがないくらいだ。そこで今回は、トリビュ

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          デニー・レインの訃報に想うこと

          今週初め(12月5日)、ウィングスの元メンバーでムーディーブルースの創設者のひとりでもあったデニー・レインが亡くなった。死因は間質性肺疾患、79歳だった。かつての仲間、ポール・マッカートニーも早々にSNSに追悼のメッセージを載せていた。 デニー・レイン個人の音楽については、私自身さほど入れ込んでいたわけではないし、ウィングス以降の彼の活動についても詳しくは知らない。ただ、ウィングスを多少なりともリアルタイムで体験した者として、彼の死はやはりショックだった。何しろ、ウィングス

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          ダリル・ホール with トッド・ラングレン コンサートレビュー(2023年11月21日 大阪 Zepp Namba)

          ダリル・ホールの来日は、2015年のホール&オーツでの公演以来。その時に見た大阪での公演は、ヒット曲オンパレードで非常に完成度の高いものだったが、その反面、ファンが喜びそうな曲だけを「パパッとやって終わった」という印象を受けた。観客との一体感や彼ら自身が楽しんでいる雰囲気があまりせず、何だか「ビジネスライク」な雰囲気を感じた。 ホール&オーツのオリジナルアルバムは、ファーストから83年の『Rock 'n Soul Part 1』までは全て(ついでに言うと、デビュー前の未発表

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