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森山和道氏の『ノイマン・ゲーデル・チューリング』書評!

森山和道氏といえば、日本で最も著名な「サイエンスライター」の一人である。1970年生まれ。広島大学理学部地質学科卒業後、NHKに入局し、ディレクターとして教育・芸能・科学番組の制作に従事した。1997年に退職後は、フリーライターとして、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。『日経サイエンス』や『SFマガジン』の連載書評でご存知の読者も多いだろう。

『ノイマン・ゲーデル・チューリング』書評

日本経済新聞に森山和道氏の『ノイマン・ゲーデル・チューリング』書評が掲載されたのは、2014年11月23日である。深く感謝を込めて、彼の書評を紹介しよう!

ノイマン、ゲーデル、チューリング。同時代を生きた3人は20世紀を代表する天才として知られている。

それぞれ多くの業績を残しているが、ノイマンはなかでも「ノイマン型」、すなわち今日のプログラム内蔵型コンピュータの原理概念の確立者として名前を残している。数理論理学者のゲーデルは、真であるが決定不可能な命題があること、ある公理系の無矛盾性がそのなかで証明できないことを示した不完全性定理で知られている。チューリングは命令集合をアルゴリズムと名付け、デジタル計算機の能力と限界を示す架空機械チューリングマシンを考案した。彼らの業績はいずれも密接な関係がある。そして3人とも底知れぬ知性の持ち主であり、他にも多彩な分野に本質的な部分で数々の業績を残している。

本書はこの3人の代表的な講演・論文を収録し、それぞれに解説と小伝を付している。彼らの講演は時に難解だが、一度は読んでおきたいと思っていた読者も多いのではないか。それだけに丁寧な解題が有り難い。

伝記部分は業績や才能とは別の側面を感じさせてくれる。彼らの人生は戦争と切り離せない。ノイマンは原爆開発のマンハッタン計画に携わり、冷戦時代は軍事顧問をつとめた。ゲーデルはウィーンを脱出して渡米し、アインシュタインと交流を持った。チューリングは英国で暗号解読に従事し、世界最初のコンピュータを生み出した。41歳の若さで亡くなった彼の死は今も憶測を呼んでいる。もちろん彼らについて初めて知る読者でも楽しめる。

3者それぞれの関係も面白い。ノイマンはゲーデルを誰よりも高く評価していたが、チューリングはゲーデルを「小物」と見なしていたという。だがゲーデルはチューリングの成果を評価していた。両者の業績はいわば裏表の関係にあるにも関わらず、このような関係だったことは不思議だ。もう少し詳しく知りたい部分である。

だが、やはりもっとも興味深いのは3者それぞれの考え方の違いである。数学は経験科学とは異なるが、人間の経験と切り離したところに数学は存在しないと考えたノイマン。それに対して数学的概念は人間精神とは独立して存在すると考えたゲーデル。いっぽうゲーデルは人間精神はどんな有限状態機械をも上回ると考えていた。だがチューリングは人間も有限状態機械であり、機械も考えることができると考察していた。この3人の話を一冊のなかで読めることが嬉しい。

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