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喪女の美容室

好きな絵師と結婚した彼女のTwitterをずっと見ている。所謂ネットストーカーかもしれない。
存在を知られていない筈だし見て何か変わる訳でもないけど見ずにはいられない。2月からずっと見ている。

彼女はとても美容に興味があるようでキラキラとした投稿を目にする。(普通の女はこれくらい普通なのかもしれない。)

そんな彼女に少し前大きな変化があった。髪の毛がピンク色になった。
Twitterを見ていると転職をして好きな仕事になり服装規定のない会社に入ったようだ。(その前から派手な格好をしていたのが不思議である。)

黒髪の真っ直ぐな髪の毛から黒とピンクに変わった。インナーカラーと言うらしい。髪の毛に50000円ほどかかると言っていた。ブルジョワか。
日々の生活費で貯蓄もない自分と比べ、世の中は金持ちが多いと思っている。皆そんなに稼ぎが良いのだろうか。
絵師は度々ピンク色をモチーフにした作品を出している。私が目を奪われた作品の背景、最近の同人作品の外装、有名なキャラクターのテーマカラー、それぞれがピンク色だ。

だからピンク色に染めたのだと思った。
実際はTwitterのトップ画にあるアニメキャラクターを模している様だった。

喪女は美容室は愚か髪の毛を切るという行為が嫌いでずっと伸ばしている。記憶の限りではお店で買ったのは2年ほど前で今は気になる時に自分で切っている。

世の中の女は美容にお金を掛け小綺麗にし男を漁るのだと馬鹿にし、下に見ていた。しかしそれが普通であり社会で生きていくマナーなのだと気付かされた。

彼女を見て自分も美容室に行ってみようと思った。駅前のガラス張りのお店に入ってみた。中が見える為晒されるのは嫌だったが雰囲気が分からないよりマシだと思った。

入ると住む世界の違う様なギラギラとしたいかにもな風貌の男に声をかけられた。予約をしないと美容室と言うものは切ってくれないらしい。
いつもの1000円カットは待てば切って貰えたが、意識の高い店はやる内容を決めてネットか電話で予約をするらしい。その場で予約を勧められたので流されて予約をした。

髪の長さで値段が変わる事、指名や紹介の有無、カラー剤の指定等こと細かに聞かれるのだ。
何一つ分からないので良い感じにと伝えるとカットとトリートメントを勧められた。それで予約した。


そして先月、予約の日だったので行ってきた。
会話も噛み合わずシステムも分からず、シャンプーや化粧品を勧められ、2時間もずっと喋る美容師を眺めながら辟易とした。

よくわからないオイルを付けられて15000円だった。高いと思った。

彼女のインナーカラーはブリーチという工程を経てこの店だと35000円程するらしい。髪の毛如きに家賃程の金額は出さないと思った。

この金額が妥当で世の中の人は受け入れているのか、喪女だからぼったくられたのかは分からない。

ただこれで少しは彼女に近付けたのではないかと思う。

今日、数年前共に仕事をした人に会い、雰囲気が変わったと言われたので効果はあったのだと思いたい。会話があまりにもなくお世辞かもしれないが異性に声を掛けられるという事がこれ程までに心躍る物なのかと驚いた。

少しでも喪女の黒い感情が抜ければと思っている。

美容室にはもう行きたくない。

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