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32 未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!

<4章:解決>

No.91 辺境の星で育つと魔術のようなものが使えるらしい(沙織)


 ー時は西暦2018年より数億年先の地球 忍歴にんれき2020年 帝の城ー 

 ま、ま、参りました!

「いや、俺たち、帝は裏切うらぎれない!すまなかった、帝!」
全面降伏ぜんめんこうふくします!」

 大型恐竜たちはひざまずき、帝に降伏こうふくした。翼竜もだ。

 私は颯介そうすけを乗せたまま、小高い丘に舞い降りた。
 体がふるえるほど、感動する瞬間だった。山脈を埋め尽くした翼竜も草原を埋め尽くした大型恐竜たちも、全てが帝に降伏こうふくの姿勢を取った。

 その時、ナディアを乗せて同じく丘に舞い降りた五右衛門ごえもんさんが、天に腕を高く突き上げた。

「戻れ!」
「皆、ありがとう!」

 空高くまた巨大な穴が空き、そこにカラスたちは一斉に吸い込まれて行った。
 帝は手を振っていた。

「うわっ!なんだあれは?」
 颯介は最初のカラス登場の時はまだこの場にいなかったので、突然の五右衛門ごえもんさんの行動とその力に心底しんそこ驚いたようだった。

五右衛門ごえもんさんは、違う惑星わくせいの方でございました。」
 私は颯介に答えた。

「でしょう?でしょう?」
「でも、今の能力は何?魔術か何か?」
 颯介は五右衛門ごえもんさんに抱きつきかねない勢いで言った。

「いえ、私の親は地球を追われて私は子供の頃から辺境へんきょうの惑星で育ったのです。」
 颯介はぽかんとして言った。
「ロマン」

「そんなロマンがある話でもないです。私は数億年先の地球に生まれた人間ですので、多少は魔術のようなものが部分的に使えるようです。」
「何それ!」

 颯介の大興奮ぶりは止まらなかった。

「ね、沙織さん、キスはしたの?」
 隣に寄ってきたナディアが私に聞いた。

「え?」
 私は目が点になった。
「今それ気になりますか?」
 颯介そうすけもナディアに言った。

「なんか、ほっとしたら気になった。」
 ナディアはそう言った。そうか、ナディアはまさみさんと同じタイプなのかもしれないと私は内心思った。

「しました。」
「え?」
「何を?」
「だからキスです。」
「うっそー!!」
「颯介、声が大きい。」
 

 私たちはガグリア草原から城に戻った。
 軍の大群も整然と並び戻って行った。

 城には姉の琴乃ことのも駆けつけていた。





No.92  辺境の星の五右衛門、任務完了する

 私は任務にんむを果たせて、呆然自失状態ぼうぜんじしつだった。

 長かった。六歳で任務を与えられ、砂だらけの辺境へんきょうの星からこの地球に送り込まれて早二十二年。いまや気持ちも行動もすっかり忍びだ。

 私は沙織と共に通う寺小屋に通ったのだが、沙織は私のことを覚えていない。

 奉行所ぶぎょうしょで間宮沙織に再会したが、彼女は私のことを覚えていなかった。コスプレネットワークにSOSが来た時、私が真っ先に駆けつけた。それは何手目かの決まった打ち手だったのだ。

 魔術ではなく、忍術を使い続けて早二十二年。私は両方使える忍びになった。

 二十二年かけた任務が成功できて、私はひざからくずれ落ちそうなほどの開放感と安堵感あんどかんに満ち足りた。父と母と博士に早く会いたいと思ったが、この瞬間に未来の地球の行く末は変わったであろうと思い、思いとどまった。

 落ち着くまでは、この忍びと恐竜の支配する地球で待つべきだ。それまでは帝と沙織を見守ろう。



No.93   私の幸せ(沙織)

 サキと私は帝の帰りをまっていた。ふわふわの背中に顔を埋めると安心できた。大きなふわふわの尻尾しっぽをふりながら、サキは私の手をめていてとてもくすぐったい。

 先ほどまで姉の琴乃と話していたのだが、私は帰る前に帝に一言ごあいさつをしたくて、自室じしつで待たせてもらっていたのだ。クーデーターは阻止そしできたけれども一つ問題は残ってはいる。
 けれども今日はもうそのことは忘れたかった。

 帝は走って自室じしつまで戻ってきた。扉を開けると、サキと私を同時に抱きしめてくれた。

「沙織!」
「よかった。本当によかった。ナディアと颯介そうすけ五右衛門ごえもんさんに感謝しかない。」
「ええ、本当によかったでございます。」

 私は帝の胸に顔をうずめてとてつもない幸せを感じた。そのまま顔を持ち上げると、帝のお顔は近づいてきて唇にキスをされた。

 時が止まったようだ。

 ふわふわの白い尻尾しっぽが私の腰のあたりに何度も当たる。サキも嬉しそうだ。サキが大きく口を開けて、はあはあと言いながら私と帝に鼻をくっつけてきた。

「幸せだな、沙織。」
 帝は私の頭を撫でながら、そう言った。
「はい。」
 私もうなずく。

「沙織、そういえばシュッケー杯では白目しろめになっていなかったか?」
 帝がふと思い出したように言った。

 帝が五右衛門ごえもんさんにスライディングキックした時だ。
 あの時は私も秘術を使うのに必死でなりふり構わなかった。

「そんな沙織も可愛かった。」
 私は穴があったら入りたいほどはじいった。




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