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評論風フィクション「学校教育史 近未来編」(5)新自由主義が生んだ究極のシナリオ 「選択可能な時間」の意義

(4)子どもたちの放課後            -「選択可能な時間」の確保-

生徒たちの放課後の過ごし方は千差万別である。
学習塾に通う者もいれば、地域のスポーツクラブで汗を流す者もいる。
また、学校から配布された家庭用の端末を使って学習に取り組んだり、親しい者とゆっくり会話をする時間を充実させた者もいる。

もともと子どもというのは、かけがえのない個性と無限の可能性を秘めている存在である。それらを最大限に伸ばすために大人は最大限の努力を惜しんではならない。
大人にできることの中で、最も重要なことの一つが子どもたちの選択肢を増やすことである。こどもの興味・関心は個々にさまざまである。子どもたちが自分の興味・関心に基づいて積極的に活動できる十分な時間を確保できる環境づくりは大人に課せられた重要な責務である。

中学生を対象にした内閣府の調査(昨年度実施)結果によれば、「放課後の過ごし方を自分の意志で決めているか」という質問に対して、8割の生徒が「決めている」あるいは「ほぼ決めている」と回答している。
この結果でも明らかなように、今回の改革の大きな柱の一つである「選択可能な時間の確保」については先進国と比較してもまったく遜色のないレベルに達している。

思い出していただきたい。
かつて中学校で放課後の時間を有意義に過ごさせるために、全校生に必ず何かしらの部活動に所属するよう強制されていた時期があったことを。
校内暴力や非行問題がその背景にあったとはいえ、学校が子どもたちから放課後の時間まで奪っていたのは紛れもない事実であり、政府見解にある通り、このような束縛はいわゆる「時間泥棒」と非難されても仕方がない。
また、明らかな人権侵害であったことを私たちは率直に認めなければならない。

「学歴主義」を超越した「選択可能な時間の確保」

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現代の学校教育にはさまざまな課題が、長い間解決されないままになっています。今すぐにでも本気で改革を進めなければ、この作品にあるような学校が…

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