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利益率50%超!たった2つのキーエンス流の営業準備とは?

私が勤めていた株式会社キーエンスは、平均利益率5%と言われる製造業ながら利益率50%超で高収益企業として知られている企業です。実際に社内にいた人間から見て、ここはすごいなと感心したポイントをご紹介します。
今回ご紹介するのが「訪問前準備の徹底」です。
キーエンスでは、外出報告書とロープレの2点を必ず訪問前日の18~21時の間に30分~60分程度かけて全件確認を行う。これが今考えるとキーエンスの強みの1つと言えます。

<ダイジェスト>
・訪問する前日に必ず外出報告書を作る、無しでは外出禁止
・何のために行くのか徹底的に明確に
・訪問目的は「購買」「余地」「キーマン」を知るため
・ロープレは実際の顧客で上司にやってもらえ
・ロープレしたら即実践

外出報告書(ガイホーと社内では呼ばれている)

上記は記憶を遡って書き起こしたサンプル
部門ごとにカスタマイズされており、必要項目が変わる。
こちらは、キーエンスの営業が訪問に行く前日までに必ず用意する外出報告書です。3000名以上いる営業全員がメンバー、マネージャー問わず行っています。逆に、この報告書が無い場合は外出が認められないほどです。
この外出報告書を作成する目的・ポイントとしては、訪問目的の明確化。
何のために訪問するのか、お客様は何を期待しているのか。そこを明確にして必要な準備をし、受注率を少しでも高める努力が求められます。
例えば、キーエンスの場合は主な訪問の目的は以下の3つに分類されてました。

1、商品を購入いただく訪問
2、次回購入タイミング、余地を知るための訪問
3、キーマンを探すための訪問

1、商品を購入いただく訪問
商品購入の場合は、利用用途・購入理由・購入時期などを明確にする必要があります。お客様がその商品をどういったことに使いたいのか?なぜ買う必要があるのか?いつまでに実施する必要があるのか?なぜその時期か?
特に大切なのは「なぜその時期か?」です。究極いつやってもいい事は、やらなくてもいい事だから訪問する意味も薄い、これらを把握することで、商談時に確認すべき情報を明確にします。


2、次回購入タイミング、余地を知るための訪問
購入タイミング・余地の場合は、年間の販売・予算計画や今後の商品展開など会社全体の動き、それに合わせた部門ごとの動き、さらにはその担当者の動きを把握し、いつまでにこちらが動けばいいのかを把握することが目的です。
そのためには、事前に会社Webを確認し、ニュースリリースや新商品情報、IRなどを確認。また同時にお客様の競合企業の情報も確認することで、その企業がおかれる環境や課題をぼんやりつかむことが必要です。そうすることで、商談時に「最近の課題はありますか?」とだけ言うのではなく、「10月に新商品のAが生産開始になると耳にしたのですが、競合製品Bに対抗するものですか?工場の第3ラインで生産するんですか?」と具体的な質問ができる。ポイントはなるべく具体的な質問を投げかけることだ。その方が、どんな回答をしたらいいのか相手も分かりやすく、回答率が抜群に上がる。


3、キーマンを探すための訪問
最後にキーマンの場合は特徴的でした。キーエンスでは、情報キーマン、選定キーマン、購買キーマンの3つのキーマンが必要になります。社内事情を把握し、話してもらえる情報キーマンから課題発見はスタートし、その後その課題解決にあたり、実行担当となる選定キーマンの把握。そして最後に購買・稟議に決断を下す購買キーマンが必要になる。

情報キーマン:主に間接部門に多く所属しており、他部門の情報にも精通している
選定キーマン:部門長であるケースが多いが、技術的に信頼を置かれている人物でもある
購買キーマン:直接関わることが少ないが、注文書などのやりとりや書類のハンコなどから探るケースが多い。


余談ではあるが、私もとあるお客様で懇意にしてもらっていた情報キーマンに足しげく通い、社内にある課題をとにかく拾っていた。休憩所で何気なく話す内容から、隣の部署のAさんが困っているという話を聞きつけるとすぐにAさんのところに行き、Aさんと一緒に現場を見て回って改善策を提案。
そして、仕様と予算が合意が取れたら購買部のBさんに一言声をかけておく。そんなやりとりが自然と新卒の頃から習慣として身につくようになる仕組みがキーエンスにはあった。

ロープレ
外出報告書と並んでもう1つ重要なのはこのロープレです。内容は商談のロープレだが、違いがあるとすると、実際明日に訪問するお客様を上司が演じることです。これを外出報告書の提出とセットで実施する。流れとしては、外出報告書のチェックが終わり、一番難易度の高そうな商談を1つ2つ選んで上司とロープレを行う。(熱心な上司は全件行うことも)
このロープレの良いところは3つ。

1、フィードバックの質が高い
2、営業のバリエーションが増える
3、すぐ実践できる


ひとつは、上司≒営業力が高い人物からのフィードバックが得られること。当たり前の話だが、下手な人に聞いても上達する手段なんか分からない。間違っても新卒同士でロープレはやってはいけない。
2つ目は営業のバリエーションが増えることだ。外出報告書作成を通じて自分も仮説を持っているため、テンプレートのロープレではなく、お客様ごとにアレンジした営業スタイルにトライできる。そのため、一般的なロープレと違い得られるフィードバックも圧倒的に多く、なにより営業としての引き出しが増える。
3つ目は、「前日」にやることだ。そのため指摘を受けた内容を翌日実践ですぐにトライできる。そして当日中に上司に報告してさらにアドバイスをもらう。架空の企業ではないため、ロープレ→実践→フィードバックの流れで学べることが格段に増えます。当日のみ上司が同行するより圧倒的にトレーニングになっていると思う。
正直この外出報告書とロープレが新卒の頃は本当に辛く、連日1~2時間絞られていた記憶がある。実際にお客様のところに訪問するより手の内が分かっている上司の方がよっぽど難易度が高かった。
以上のように、キーエンスでは訪問するまでに徹底した準備とトレーニングを行いお客様の訪問に臨んでいる。なんとなく訪問など許されない。この小さな差の積み重ねが利益率50%越えの強い組織を支えている要因のひとつであるのは間違いない。

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