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久留米青春ラプソディ

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僕のアホで、くだらくて、それでいて愛おしい青春期のお話。
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#ヤンキー

久留米青春ラプソディ vol.11

久留米青春ラプソディ vol.11

<<vol.10の続き>>

Y尾を待つ間、僕らは歩いてD君を探しつづけた。

商店街の脇の路地裏や暗がりの駐車場など、思いつく場所を片っ端から探した。

しかし、D君は見つからない。
さらに言えば、もうほとんど商店街周辺には人さえ歩いていない。

祭りの後の微かな余韻だけ残して、もう街は眠りにつこうかとしていた。

その静寂を切り裂くように、T君の電話が鳴った。

僕らは急いで駐車場に戻った。

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久留米青春ラプソディ vol.10

久留米青春ラプソディ vol.10

<<vol.9の続き>>

タンクトップ君の右の拳が僕の顔面をとらえる。恐らく右眼あたりだろう。

その強い衝撃とともに、背後のレンガの壁で後頭部を強打。

多分一瞬なのだが、TVの砂嵐のように視界が壊れる。

でも、不思議なことに痛みは感じない。頭は驚くほど冷静だ。

倒れてはいけない、絶対に。
僕はそれだけを考えていた。

相手がこういう集団の時、倒れてしまったら「顔面キック」という恐ろしいパ

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久留米青春ラプソディ vol.9

久留米青春ラプソディ vol.9

夏が終わる。

1年で1番大好きな季節。
もうそりゃ、ダントツで。

夏の何が好きって、そりゃ全部が好き。

家から出た時のモアッとした空気も、突然の雨の匂いも、セミの泣き声も、見上げるほどの入道雲も。

そんな夏の終わりに思い出す出来事がある。

それは、18歳の夏のお話。

夏のある日。
僕は高校の友達、T君とD君とお隣の県、佐賀で開催される夏祭りに出かけた。

僕には2パターンの友達がいて、

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