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小説

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超短編小説。短編小説。漢字一字シリーズなど。
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#短篇小説

僕たちは

僕たちは

僕たちは幸せになるはずだった。
二人で一緒にいられたら嬉しくて楽しくて幸せで、二人なら何にでもなれるし何でも出来ると思っていた。

僕はユリコを幸せにできなかった。
ユリコは自分の体を傷つけるのをやめられない。
常に暗いオーラを放ち瞳はどんよりとして、まるで屍のようだ。
溌剌としたユリコはどこに消えたのだろう。

僕たちは、もう、目を合わせて会話をすることも手を繋ぐこともない。

一緒にいると自分

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休日

休日

 休日まで、他人の視線 同性、異性の を意識して服やメイクを選んでいる自分だと気が付き、いやだなと思った。
 着たい服を着る。メイクもやりたいように好きにやる。インスピレーションを大事にしたい。変わっていることがいいとは思っていない。自分の心のままに自由に楽しくしたいだけ。

 鏡に映った自分は、圭の好みを意識している服、メイク、髪型。似合っていない。何ていうか、誰だかわからない。私じゃないみたい

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命日

命日

 今までとても幸せだったし運が良かったから、これから先、何か不幸や不運なことが起こるのじゃないかという気がしていました。だから、自分が地獄に落ちたようなつらい目にあった時、やっぱり来たか…と思ったのです。辛くて泣きながらも、冷静な自分もいたのです。

 今は涙も枯れ果て、自分は死んでいるような感じで、痛みや空腹とか何も感じません。眠りから自然に目が覚めてぼんやりと思います、まだ生きているんだな、と

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ついてない日ついてる日

ついてない日ついてる日

 今日はなんか疲れたなぁ。上司の尻拭いに奔走した日。連絡を取りたい人とは入れ違いで話せなかった。折り返しの電話もない。
 帰りの電車は、先の駅のホームで非常ボタンが押されたため安全確認の為、遅延。次に乗った電車は手前の駅で救護活動の為、遅延。仕方がないが、お腹がへったな。お昼はプロテインバー1個だった。
 やっと駅に着き、おりたら、雨。雨は降らないと聞いていたので傘はない。いつもは折りたたみ傘をカ

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死の淵で見えたもの

死の淵で見えたもの

 数メートル吹っ飛ばされ、アスファルトに叩きつけられた。全身がばらばらになったような衝撃と激しい痛み。冷たい身体から生温かいものが流れ出しているのがわかる。とても寒い。指一本動かすことが出来ない。空には星がみえたが数秒で見えなくなった。真っ暗な中、かすかに何か聞こえるような気がしたが自分の意識が遠のいていき、何もわからなくなった。

 自分は灰色の空間にいた。若くて溌溂とした女の子が見えた。外国の

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何でもない日。みんなの12月某日④さようなら2023

何でもない日。みんなの12月某日④さようなら2023

 僕はクミの勤務先の最寄り駅で待っている。十二月の寒い寒い夜。クミは僕の姿を見つけるなり顔が曇った。マスクをしていても、わかる。

「こんな遅くまでお仕事大変だね。お疲れさま」

「いいかげんにして。警察から注意、警告を受けたでしょ」

 クミは低い声で言い、僕を睨みつける。

「引っ越したの?あのマンションから」

 クミは答えない。

「もう一度だけ話がしたい。最後だから。お願いします。」僕は

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何でもない日。みんなの12月某日③

何でもない日。みんなの12月某日③

二年前の十二月、夫は、妻(私)と自分の母親と犬を残して突然消えた。私達は三人と犬で穏やかに幸せに暮らしていた、はず。そう思っていたのは私だけだったのだろうか…。

 私と義母は仲がいいし、犬は私達三人の癒し。ミックス犬のミロは夫と私が仕事でいない間、義母と仲良くお留守番。義母はミロがいるから淋しくないそうだ。ミロの散歩は平日は私、休日は夫と二人で。一緒にいる時間が一番少ないのに、ミロは夫に一番懐

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何でもない日。みんなの12月某日②

何でもない日。みんなの12月某日②

 あの人は、「奥さんからお小遣いを3万円しかもらえないんだよ〜」と幸せそうに言う。よくよく聞けば、申告すればいくらでももらえるそうだ。

 「ディズニーランドに家族で行って子供を長時間抱っこして歩いて筋肉痛になっちゃって」、とか笑顔で話す。そんな話は、需要がないから。

 誰かが元気がなかったり、失敗して落ち込んでいたら、話を聞いてあげたり、励ましたり。人の気持ちに敏感なのだろう。皆に気づかいをす

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