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アート・シンキング系の書籍14冊読んだ上で、一番のオススメを紹介します(2020.6月時点)


はじめに

先日、「アート・シンキング」と「ティール組織」の出版から勝手に読み解く「会社のあり方」が変化していく方向性とは?という大それた記事を書きました。

この記事に先駆けてアート・シンキング系の書籍の出版履歴についてAmazonで調べていました。

■アート思考の書籍の調べ方
 
(1)Amazonの書籍カテゴリー、ビジネス書カテゴリーそれぞれで
(2)アート思考というキーワードを入れて、
(3)出てきた書籍のうちタイトルに「アート思考が入っている」ないしは、「ビジネスパーソン向けのアートの本だとわかるもの」をリストアップしていく

その結果、私調べによると該当する書籍は26冊ありました。
(2020年6月末までの出版物が対象)
 
そこからさらに分類すると以下のようになりました。

アート × 地域活性:4冊
教養としてのアート × ビジネスパーソン:8冊
アート × ビジネス:14冊
 
※アート × 地域活性はビジネスパーソン向けか?と言われるとグレーだと思いますが、一応入れておきます。

このうち「地域活性」と「教養としての」はビジネススキルとしてアート・シンキングを活かすことに直結していないと見なし、省きました。
 
そのため、残った14冊を読みました。それがこちらです。

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今回の記事は、この14冊の中で私のオススメを紹介します。

書籍を内容別に分類してみた

まず最初は内容別にグルーピングしたものを紹介します。大まかにどんな内容が書かれているかのヒントになれば幸いです。

(1)アート業界のこと(アーティスト、歴史など)について知りたい

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上段1列目左から
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考
ハウ・トゥ アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法
アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法
東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!
上段2列目左から
ビジネスの限界はアートで超えろ!
世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること
アートイノベーション : 日本的感性を取り入れたビジネス革新
アートに学ぶ6つの「ビジネス法則」

(2)アート・シンキングの事例を知りたい(厳密には著者がそう判断している企業)

海外事例編については、事例といっても著者の主張を裏付けるために部分的に判断し、引用したものという印象が強かったです。それに比べて、国内事例については直接取材した企業のことを紹介しているので情報の厚みが違うように思えました。

・海外事例編
左2冊はさらり。右2冊の方がしっかり紹介しています。特に右端のエイミー・ウィテカー著の書籍は、企業だけではなく個人(偉人)の事例についても紹介しています。

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世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
ビジネスの限界はアートで超えろ!
世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること
アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術

・国内事例編直接取材→分析→分類、体系化している

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アート・イン・ビジネス -- ビジネスに効くアートの力

・コラムとして日本人6人(会社員、起業家、その他)の事例を紹介している(本編との関連性はない)

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アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術

・最新デジタルテクノロジー × アートな国内企業の事例(こちらの書籍は、どちらかというと教養本でした)

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・アート×テクノロジーの時代 社会を変革するクリエイティブ・ビジネス

・実際に主体となってアート・シンキングプロジェクトをやった立場からの事例(事例紹介がメインではなく、筆者の考えるアート・シンキング全般について書いている書籍です。)

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アートイノベーション : 日本的感性を取り入れたビジネス革新

(3)アート・シンキングとお金について知りたい

アートと資本主義
(教養本のそれとの違いは、ビジネスとのつながりについて書いていることでしょう)

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アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法
東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!
アートに学ぶ6つの「ビジネス法則」

アート・シンキングとお金
(ポートフォリオ思考・知的財産権の所有に関連して1章、ビジネスモデルに関連して1章あてています)

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アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術

(4)アート・シンキングの本質に迫りたい

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個人的おすすめ書籍トップ2+1

総合的にオススメの2冊を紹介します。

なぜこの2冊なのか。
簡単にいえば、「読みやすい文体」「感化される内容」「良質な情報が多い」からです。 
 
私は読書には知識を増やす読書と、感化される読書があると思っています。厳密に2つに分かれているというよりも重なっているイメージ。
 
この視点で捉えたときに、この2冊は知識が得られる本というよりも
心に響く、触発されるものが大きく、それがまさにアート・シンキング的だと感じたのです。
(もちろん、他の書籍に触発される人もいると思いますのでこれはあくまで私の主観です)
 
また、これは仮説ですが、なぜこの2冊が感化される気がするのかというと、著者の方々がそれぞれアート、アート・シンキングというものを咀嚼し、ご自身なりの意見を持つレベルまで昇華されており(内在化)、それが故に書籍から一貫したメッセージ性を感じるからかもしれません。
  
それ以外の書籍は、アート、アート・シンキングを内在化しているというよりは、客観的に眺めて語っているように感じますし、一貫したメッセージに至っているというよりは情報を並べているという印象です。(どちらが良い悪いではありません)
 
私としては、アート・シンキングは分かる以上に、感じてほしいと思うのでその体感をより得られると思えたこの2冊を推しています。もちろん、2冊とも情報量が多く、かつ、それが単なる知識ではなくご自身で咀嚼され、知恵として昇華された内容が多い印象でした。

一番は2冊とも読むことをオススメです!その際は、13歳のアート思考→How to art thinkingの順番がオススメ。
 
どちらかと言われたら
>美術の歴史とアート・シンキングについて知りたい場合は「13歳からのアート思考」から

>アート・シンキングとビジネスについて知りたい
場合は
「How to art thinking」から読むことをオススメします。

また、+1とした1冊についても紹介します。それはこちらの本です。

なぜ、トップ3とせずに+1にしたのかというと、アート・シンキングにまつわる書籍かというと疑問が残ったためです。
  
帯にアーティストの思考法と書かれているため該当書籍として選んだのですが実際に読んでみると、アート・シンキングの書籍というよりもメタ・デザイン・シンキングといった印象が強かったのです。
 
そのため、ちょっと位置付けは違うかな?と思ったので+1という扱いにしたのでした。

そもそもタイトルにデザインって書いてあるじゃん!って話ですね 汗
また、アート・シンキングはメタ・デザイン・シンキングではないのか?どう違うのか?といった別テーマが出てきちゃいますが今の時点では、重なる部分はあるけど、違うと捉えています。
 
その理由は、社会に問題提起するという目的ありきのデザインだからです。
この記事でいうアート・シンキングはビジネスとの接続という方向性はありながらも、終点が未定のものとしてスタートするものとして捉えているからです。

それでは、なぜこの書籍をそういう形ででも取り上げたかというと上記の2冊と同様に、感化されるものが大きかったからです。
 
もっと言えば、先の2冊とは違うベクトルに心が動かされたのがこの書籍でした。
 
どういうベクトルかというとポジティブな意味での感動というより、怖さ、おぞましさを伴うような、「うっ」という声が出るような、どちらかというとネガティブな意味での感動です。
 
それはおそらく、私たちが倫理観と呼ぶような無意識の前提(人間としてのタブーに思えること)を超えようとする試みを著者のアーティスト自身が実践されているだけでなく、同じテーマの事例が多数紹介されているからでしょう。

私は岡本太郎氏が好きなのですが、彼は著書『今日の芸術』という著書の中で、芸術の三原則をあげています。

芸術はきれいであってはいけない。
うまくあってはいけない。
心地よくあってはいけない。

また、書籍『自分の中に毒を持て』では鑑賞者に与える好ましい影響として以下のように書いています。

人間の、本当に燃えている生命が、物として、
対象になって目の前にあらわれてくれば、
それは決して単にほほ笑ましいものではない。
 
心地よく、いい感じであるはずはない。
 
むしろ、いやな感じ。
いやったらしく、ぐんと迫ってくるものなのだ。
そうでなくてはならないとぼくは思っている。

こういった価値観を芸術とするならば、この書籍が私に与えた影響はまさにアート的であると感じましたし、このような感情をぜひ味わってもらいたいと思い、紹介しました。

目的別おすすめ書籍(おまけ付き)

特定の知識を得たいという場合は以下の書籍がオススメです。

なぜ今アート・シンキングが大事なのか?を知りたいという方

アート業界について特に知りたいという方

アート・シンキングを活用している日本企業の事例を詳しく知りたい方

以上が私が読んだ中でそれぞれのテーマに関して一番情報量が多かったのでオススメです。

>アート・シンキングではないのですがアートとは何か、どんな効用があるのか?を学問的・体系的かつ、イラストも入れながら分かりやすく書かれているこちらの書籍も導入としてはいいのではないでしょうか。
(こちらも、そもそもそういうタイトルやん!というツッコミが入りますね 笑)

今回は私の視点でオススメさせてもらいましたが、すべての本がそれぞれ個性的で他の本にはない発見を得られるものだったので、アート・シンキングの知見を得たい方は全部読んでみてもいいと思います。

おまけ①

今回の対象本ではないですが、私のオススメ書籍トップ2が言わんとしているアート・シンキングをビジネスで体現・実践されていると感じた会社の書籍を紹介します。それはこちら。ピクサー創業者であるエド・キャットムルによる自叙伝であり経営について語られた生々しい本です。

創造性は、どこにつながるかわからない道を歩くことを求める。そのために、既知と未知の境界に近づかなくてはならない。(p293より引用)

特にエドのこの文章はアート・シンキングというプロセスの1側面を表現しているように思えました。ビジネス・組織とアートシンキングというテーマについて深めたい方にオススメしたいです。

おまけ②

マサチューセッツ工科大学 のC・オットー・シャーマー博士によって生み出されたU理論というものがあります。

U理論とは?

過去の延長線上ではない変容やイノベーションを個人、ペア(1対1の関係)、チーム、組織、コミュニティ、社会のレベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論
こちらのサイトより引用

この理論は、約130名の起業家、ビジネスパーソン、発明家、科学者、芸術家などからなる革新的なリーダーへのインタビューや経験を元に生み出されたものなのですが、アート・シンキングを「過去の延長線上にない方向・成果を生み出すためのプロセス」と捉えるならば、そのためのあり方とやり方を体系的に学ぶことができるのがU理論と言えます。ちなみに抽象度が高い領域が多いためか、人にとっては「何を言っているのか分からない」という感想を持つようですが、アートシンキングというカテゴリーにおいてはまだベースとなる方法論が確立されていない中で、近似する1つの体系を学びたい方には一度触れてみることをオススメします。

さいごに

ビジネスパーソン向けの「アート」系の本がやたら増えた気がするという、直感を確かめてみようというところから、私のアート・シンキングをめぐる旅は始まりました。
 
発売3カ月で5万部を超えたベストセラーである『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』の著者は、アート・シンキングについてこのように言っています。

「自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探求をし続けること」だと言えるでしょう。

この定義を用いるのであれば、私自身が気になったことを調べ、考えこうしてアウトプットしているプロセス自体をアート・シンキングと呼べるのかもしれません。
 
14冊読んだ上で、今何を感じているかというと「美術史、面白そうだな」「アートと資本主義もっと知りたいな」ということです。
 
上記に関連する書籍群はまた別の森のように広がっていますので、すぐに手を出すのは躊躇しますが、気になったことをそのままにしないと決めている私は、きっとまた旅を続けるのでしょう 汗
 
withコロナの状況において、また大人の学び直しの重要性が叫ばれているように思います。
 
購買意欲を煽るには不安感にアプローチすることが多いため、私たちはややもすると「正しさ」に基づき、「役立つ」と思えることを選んでしまいがちです。
 
しかし、私たちはこれまで忠実にそのように判断・選択・行動してきました。
 
その上で疲れたり希望を見出せずにいるとしたら、私たちに必要なものは「正しさ」ではなく、「楽しさ」であり、「意味がない」けど、気になることを選んでいくことなのではないでしょうか。
 
その方向性の扉を開き、道を広げてくれるきっかけになるのがアート・シンキング、アートの世界だと思います。
 
今回の記事があなたの何かのきっかけになれば幸いです。

おまけのおまけ

今回ご紹介したアート・シンキング関連本14冊を読んでそのエッセンス8つ抽出してみた、という記事を書きました。ご興味あればぜひご覧ください。








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