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「原作改変OKな人。原作改変NGな人。いろいろな漫画家の方がいる。どちらであっても、漫画家の意向は絶対に尊重されなければならない」漫画原作改変問題に思う(9)

■日本テレビ 春の新番組「たーたん」制作中止に
 日本テレビも、わざとやっているのかというくらい、次から次へといろいろと不適切な言動をとっている。
 西炯子(にしけいこ)さんによる小学館での漫画を原作とし、日本テレビで放映が予定されていた新番組「たーたん」が制作中止となった。
 小学館の漫画原作で日本テレビで放映――「セクシー田中さん」と全く同じ組み合わせだ。
 それなのに、日テレからは「セクシー田中さん」事件について、何の説明も無い。
 芦原妃名子さんが亡くなった件について、日本テレビは2024年2月15日(木)、「社内特別調査チームを設置する」と発表はした。
 だが、まず、この特別調査チームが、「社内」であることに、世間の非難が殺到した。
 第三者による外部調査チームではないからだ。
 身内による「なあなあ」の調査が行われるに決まっていると世間は見ている。
 そもそも調査自体が本当に行われるか、いや、調査チームそのものが本当に設置されたのかすら怪しい――そのような多くの声が上がっている。
 設置発表から11日が過ぎたが、何の動きも無い。

■「たーたん」制作中止は人のせい
 「たーたん」制作中止をプロデューサーからスタッフに告げたときの言葉として、次のようなものが報道されている。

「我々からしても、普通じゃない状況のことを出版社の小学館さんに言われて」
「僕らも茫然自失というか。こんなことはありえないので」
「悔しい気持ちでいっぱいで。皆さんは今『なんだよ』っていう、ぶつけようのない苛つきと悔しさっていうのがあると思うんです」

 要するに、小学館から「やめろ」と言われ、自分たちは頭にきているという内容なのである。
 なぜ、そういう事態が起きてしまっているのか、その原因を作ったのはほかならぬ日本テレビなのだが、そのあたりの自覚は無いようなのである。
 「普通じゃない状況」と小学館から言われるまで、日本テレビは今の状況を「普通じゃない」と認識していなかったのかと、良識を疑うのである。

 ただ、上の情報が外部に流出しているということは、日本テレビ内部の人間にリークした者がいるということだ。
 今の状況を良しとしない義憤でやったのか、それとも金目当てで売ったのか、それは分からないが。

■またも漫画原作改変が発覚
 さらに、やはりというか、「たーたん」についても原作内容を改変しようとしていたことが明らかになった。
 ところがこれが酷い。
 原作では女性が自殺を図る場面がある。
 その女性の職業は女優なのだが、その職業を漫画家に変更しようとしていたのである。
 その女性は、自分のことを、主人公の娘の母親と偽っていた。
 その女性が自殺を図るのだ。

 芝居で娘の母親を演じていたということを考えても、職業は原作通りの女優としておいたほうが自然だ。
 それをなぜ敢えて漫画家にするのか。
 漫画家 芦原妃名子さんが亡くなった直後に、こういったことを行おうとするなど、もはや人としての神経が疑われる。
 もちろん、この情報が明らかになるやいなや、ネットは大騒ぎである。

「漫画家に対する嫌がらせとして、自殺する女性の職業を女優から漫画家に変更した」
 多くの人が、この改変の意図を上のように読み取ったからだ。

■映像化に関して、内容の改変にはこだわらない漫画家もいる
 「マジンガーZ」や「キューティーハニー」の作者、永井豪氏のインタビュー記事がある。

【漫画家のまんなか。vol.3 永井豪】漫画家でいるかぎり、すべての漫画家から影響を受け続けたい

 要約すると、映像化されたものは自分の作品とは別物であり、原作使用をOKしたらあとはお任せ。イメージが違う場合もあるが、注文はつけない――永井豪氏はそのようにおっしゃっている。
 昭和の頃、石ノ森章太郎氏の漫画を原作とする特撮変身物と、永井豪氏の漫画を原作とするスーパーロボット物のテレビ番組が、大ヒットしていた。
 この頃、漫画と映像作品は違うのが当たり前だった。
 ファンもそれが当然、自然として観ていた。
 作者の漫画家の方々も、不本意であったとしても、それを受け容れていた。

■「ドラマになれば一気に認知度が上がるだろうな」と思う漫画家もいる
 ある漫画家の方が書いた文章にあったのだが、
「売れない自分の漫画がもしドラマ化されたら、一気に認知度が上がるだろう」
「作品も売れるだろう」
「いつか私も映像化されるくらいの漫画を描きたい」
と思う漫画家もいる。

 ここから先はその漫画家の方が書いていた内容ではないが、漫画家によっては、もし映像化されたら一気に作品が売れるだろうから、内容の改変にはこだわらないからもし映像化してくれるのならばしてほしい――という方もいるだろう。

■一度でいいから商業誌に自分の漫画を載せたい人もいる
 漫画家志望だが、漫画家になれない--多くの人々がそれだ。
 実は私もその一人。
 私も高校、大学の頃、漫画を描いていた。
 持ち込み、投稿をした。
 賞にも応募した。
 だが、ダメだった。
 昔も今も、才能のある人は、もう中学生でデビューしている。
 私には才能が無かった。
 いや、努力を続ければ、いつかは商業誌デビューできていたかもしれない。
 だが、食うや食わずの貧乏暮らしで、アルバイトで食いつなぎながら漫画を描き続ける――そんな根性は私には無かった。

■漫画が描けたらなあと思う人もいる
 漫画家を目指した時期があったくらいだから、私は子どもの頃からまあまあ絵がうまかった。
 まあ、うまい人というのは、絵でもダンスでもピアノでも毎日やっているのだ。
 だからうまいのだ。
 私も子どもの頃から毎日絵を描いていた。

 中には、漫画家になりたいんだけれど、どうしても絵がうまくならないという人がいる。
 そういう人は、デビューうんぬんの前に、せめてマシな絵が描けるようになりたいなあと思っている。
 だが、描けるようにならない。
 そんな人もいる。

■人はみな、無い物ねだり
 漫画が上手に描けない人は、漫画が上手に描けたらなあと思う。
 漫画が上手に描ける人は、漫画家としてデビューしたいなあと思う。
 漫画家デビューした人は、売れたいなあと思う。
 自分の漫画が売れるなら、内容にはこだわらないから映像化されればなあと思う人もいるだろう。
 ただ、どうせ映像化されるなら、自分の原作どおりに映像化してほしいなあと願うだろう。

 人はみな、自分に無いものを求める
 人によって無いもの、求めるものは異なる。

「自分が持っていないものをあなたは既に持っているのに、あなたはそれ以上を求めるの?」

などと攻撃するのは間違っている。

 たとえば、漫画家になれなかった人が、プロ漫画家の誰かに対し、

「漫画家デビューできてるだけ、いいじゃん」
「売れてないからって文句言うなよ」
「映像化が原作通りじゃないからって文句言うなよ」

などと攻撃するのは間違っている。
 その人が漫画家になれなかったことと、その漫画家の誰かがプロになれたことは、全く関係ないことだからだ。

■映像化は漫画家のためを思っては行われない
 究極の極論を言えば、漫画の映像化は儲けるために行われる。
 儲けることが第一目的である。
 そのために、これまで多くのケースで漫画家の意思はおろそかにされてきた。
 だが、儲けるために人の命がないがしろにされては絶対にいけない。
 今回のセクシー田中さん事件、芦原妃名子さんのいたましい死を機に、業界の改善が進められなければならないのだ。

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