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クリップオンストロボの魔力

LIELOS以外の撮影も含めた中で、一番多用したライティングは?と聞かれたら、間違いなく「正面からのクリップオンストロボ直当て」と答えます。
カメラの上に取りつけて被写体に一発放つという、これ以上ないシンプルなライティングです。


ドキュメンタリー的な要素

ボックスやバウンスなどを使い、柔らかい光で丁寧に組むライティングをフィクションの世界とするなら、クリップオンを正面から放つライティングはノンフィクション/ドキュメンタリーの世界のニュアンスが含まれると思います。

原一男の衝撃的なドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』の後半で、主人公がある人物の家の中で怒り狂うシーンがあります。(だいぶ前に見たので若干記憶が曖昧な部分がありますが)

40年近く前の映画のため、カメラの性能的にも室内の暗いシーンを地明かりで撮るのが難しかったのか、登場人物に対して常に白熱灯のような強い光が直接当てられていたのがとても印象的でした。主人公の煮えたぎる心情を、正面からの一発の強いライトが炙り出しているように感じたからです。

被写体の力を放出する光

あくまで個人的な感覚ですが、正面からのクリップオンストロボは万能ではなく、被写体に力がある場合に、絵として成立しやすいのではないかと思います。

力というのは、人としての、存在としての力のようなものです。その人物が秘めている力を、強く固い光を当てることで外に放出するようなイメージです。

https://stock.adobe.com/jp/stock-photo/id/525453057

ライティングを忘れるライティング

そしてもうひとつ。クリップオンでの直当てライティングの良さは、矛盾するような言い方ですが、ライティングを忘れて撮影できることです。

スタジオでモデルの立ち位置を決め、何灯かライトを組んで撮影をすると、モデルの立ち位置やライトのフリが少し変わるだけで光の当たり方が変わります。
しかし、クリップオンストロボでTTLを使って撮った場合、その制限はなくなります。モデルが歩いても座っても、スタジオの端に行っても、基本的には光の当たり方は変わりません。

フォトグラファーもモデルも自由に動けます。つまり「立ち位置に立ってポージングを変えるだけ」の撮影に比べて、より出来事性が増す(フィクション性が減る)気がします。

https://stock.adobe.com/jp/stock-photo/id/525452832

クリップオンの魔力

限りなくシンプルで、けれど被写体が限定される。だからこそハマった時にはとても強い写真になる。

正面からのクリップオンストロボ直当てライティングには、そんな魔力があるように思います。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。



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