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Libya Updates #15 JULY 2020 Week 3


こんにちは🕊
今週もリビアを巡る動きを整理しました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいる。

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1. 戦闘

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トリポリ南部にあるタルフーナで、ハフタル勢力側の民兵組織が拷問に使用したと見られる「独房」が発見された。
リビアの放送局が放送した内容によると、独房は一人の人間がしゃがんでやっと入れるくらいの大きさで、入り口は鉄のドア。独房の上部には熱を使って温められるような部品が取り付けられており、レポーターは「人間のオーブン」と例えた。


放送は現場にいた人の声も拾っていた。「人権団体はどこにいるのか。世界はどこにいるのか。タルフーナに来て、自分たちの目で今起きていることを見るべきだ」

GNA軍は7日、タルフーナの病院でこれまでに女性や子どもを含む208名の遺体が見つかったことを発表している。同政府はハフタル勢力が殺害を行ったとして捜査を進めている。
同地区はハフタル勢力が6月にトリポリより撤退するまで、GNAとハフタル両勢力の間の主戦場だった。


GNA勢力とハフタル勢力の間では6月から和平へ向けた交渉が進められているが、停戦は実現していない。

ロシアのラブロフ外務大臣が8日、即時停戦に向けトルコと交渉を進めていると発表したことについて、GNA側は合意を拒否する見方を示した。
GNAの外務大臣は、ハフタル勢力が平和や政治的解決を望んでいないと指摘。並行して行われている国連主導の和平交渉を同勢力が妨害し続けていると非難した。


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ハフタルは11日、同勢力が続けている南部の油田の封鎖の解除について、一定の条件が達成されることを求めた。この中には石油収入の分配が「平等」になることなどが含まれているという。

リビア国有石油会社NOCは5日、南部にあるサハラ油田が外国の傭兵らにより占領されていることを非難している。

ハフタル勢力を支援してきたHoRは13日、エジプトに対して介入を歓迎する姿勢を示した。

シシ大統領は6月20日、軍事作戦を展開する準備ができていると発表。GNA政府へ支援を続けるトルコを牽制することが狙いと見られている。
大統領は同月6日には会見で独自の停戦案を発表。ハフタルとHoR政府のスポークスパーソンのアグイラ・サレ氏が同席した。


元よりハフタル勢力を支持してきたエジプトだが、さらなる接近の動きが見られる。
ハフタル側につく部族の指導者らは15日、シシ大統領と面会。両者の協力方法を模索した。


停戦へ向けた交渉も水面下で行われていると見られる。
ハフタルは今週、米国の軍・政治部門の高官と面会。「これが停戦に合意する最後のチャンス」と話していたことが分かった。


2. 国際社会の動き

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GNAの最大の支援国であるトルコは13日、ハフタルがシルトから撤退しない場合、軍事行動に出る準備ができていると宣言した。


ハフタル勢力を支援するロシアのワグナー・グループの傭兵らが今週、シルトから撤退したことが明らかになった。
トルコの発言が影響した可能性もあるという。


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フランスのマクロン大統領は15日、シシ大統領との電話会談で、エジプトがリビアの「治安維持や安定」のために果たしている役割を評価した。
両国はリビアに対する「外国の違法な介入」を防ぐことについて話し合ったという。トルコを牽制する狙いがあると見られる。

リビアの現状について、フランスは「国連のもとでの対話でのみ解決される」との姿勢を維持。一方、ハフタル勢力ともつながりを持っていると考えられてきた。ハフタル勢力が支配下に置く東部の石油資源のほか、リビア周辺地域の安全保障を懸念していると考えられていた。
マクロン大統領は数週間前の合同記者会見で、ハフタル勢力が軍事侵攻をおこなったことについて非難しており、方針転換をしたのではないかと見られていた。


一方、イタリアのディマリオ外務大臣は16日、GNAのシラージュ首相と会談を実施。封鎖されている油田の開放のほか、ハフタル勢力がトリポリ撤退の際に残した地雷の撤去について話し合った。

両国はリビアを経由して地中海を渡る移民・難民についても議論したとのこと。


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シリアのアサド政権がリビアへ傭兵を送る可能性が浮上した。
情勢をモニターしている団体や報道によると、シリアの首都ダマスカスからカイロへ7月16日から毎週、シリア交通省が3便の飛行機を飛ばすことが根拠。エジプトとシリアの間の往来の需要は大きくなく、これだけの本数が運行することは不自然だという。
直前にアサド政権はハフタル勢力を支持する姿勢を示している。


3. 新型コロナウイルス

感染拡大が続く

リビアでは16日(現地時間)時点で、累計1,589名の新型コロナ感染者が確認されいている。前の週から新たに321名の感染が確認された格好だ。
死者は43名で、1週間で8名の増加。


情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月からは、地雷の爆発に市民が巻き込まれる事態が相次いでいる。

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参考
リビアの国連人道問題調整事務所OCHAのスタッフ、ジェニファー・ボス・ラトゥカさんのブログ記事です。
「リビアでの生活は新型コロナ以前からロックダウン状態だった」というタイトルで、同国の戦闘が人びとの移動の自由を奪ってきたことを綴っています。


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Also read:

リビアの4月からの新型コロナの感染拡大状況を整理しました。
6月20日は世界難民の日でした。リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。

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