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Libya Updates #22: September 2020 Week 1


こんにちは🕊
今週のリビア情勢をまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 国内の動向

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リビア軍は8月30日、ハフタル勢力側へロシア、シリア、イエメンなどより傭兵が送られていることを確認したと発表。派遣先は前線となっているシルトとアル・ジュフラ地区だという。

GNA政府は同月21日に停戦を宣言し、ハフタル勢力を支援する東部トブルク政府 HoR のアグイラ・サレ氏がこれに合意。だがハフタル側はGNAが「宣言をアピールに利用している」として拒否している。


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GNA政府も混乱状態にある。
シラージュ首相は28日、ファティ・バガシャ内務大臣の解任を発表。前の週に発生した市民の抗議運動への内務大臣対応について「捜査を行う」としている。

抗議運動には市民数百名が参加。GNA政府の腐敗のほか、停電や断水など生活水準の悪化を訴えた。政府は26日、「ウイルスの拡散を防ぐため」として24時間の外出禁止令を出している。

リビア情勢に詳しい専門家らは、シラージュ首相とバガシャ内務大臣の間には緊張が高まっていることを指摘してきた。ハフタル勢力の軍事侵攻の対応を巡りバガシャ内務大臣が影響力を強めていることに対して、首相が危機感を感じていたという。

バガシャ内務大臣はトリポリ東部にあり、リビア第3の都市であるミスラタの出身。同地域の武装勢力はハフタル勢力をトリポリから掃討するにあたり大きな役割を果たしており、ワシントン・ポストの記事によると、内務大臣の解任はGNAとミスラタの勢力との関係に影響を与える可能性があるという。


さらにトリポリでは1日、自爆テロと見られる爆発が起こった。地元TVは小型オートバイに乗った犯人とみられる人物が高速道路で爆弾を爆発させたと報じている。
テロ攻撃であれば、1年ぶり以上の発生となる。

22日に起きた抗議運動でも、市民に対してGNA政府を支援する武装勢力が実弾を撃ったことが分かっている。関連は不明。


2. 国際社会の動向

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トリポリ南部の軍士官学校で今年1月、候補生26名が犠牲となった爆撃について、BBCの取材でUAEの提供したドローンが使われた可能性があることが判明した。

ハフタル勢力が行ったと見られているが、同勢力は関与を否定。他の勢力による迫撃砲や、学校内で襲撃が起きた可能性を示唆していた。だが同放送局が爆撃後に残された武器の部品の写真を調査したところ、高度な武器が使われたことが判明。ハフタルの主張が嘘である可能性があるという。

爆撃は1月4日、50人の士官候補生が訓練を行っている時に発生。生存者はBBCに対して「仲間が亡くなっていき、最後の呼吸しているのを見ていたが、何もすることができなかった」と話している。


ニューヨーク・タイムズもリビアでUAEのほか、ロシアがハフタル勢力につき影響力を強めていることを指摘している。

ロシアは軍用機350機をリビアへ送っているほか、民間軍事会社ワグナー・グループなどを通して5,000名以上のロシアやシリア出身の傭兵を送っているとされている。
一方、GNAを支援するトルコも武器のほか、数千人規模のシリア人含む傭兵を送っていることが分かっている。


3. 新型コロナウイルス 

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リビアでは3日(現地時間)時点で、累計15,156名の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は3,322名。1日に約470名の新規感染者が確認されている計算となる。
累計死者数は250名で、1週間で40名の増加


感染者数は5月まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、1週間の新規感染者数が前の週を大きく超える状態が続いてきた。

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リビアの人口は665万人ほど。
情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民らが地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいる。


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リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。

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