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Libya Updates #30: October 2020 Week 5


こんにちは🕊
今週も1週間のリビアをめぐる動きを整理しました。

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■リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 和平へ向けた合意

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国連リビア特別ミッション (UNSMIL) は23日、GNAとハフタル勢力側が「永続的」な停戦合意に達したことを発表した。
合意では、3ヶ月以内に全ての軍勢力や外国の傭兵が撤退することを決定。その他、リビア全土で封鎖されている道路の開通や空の移動も再開することなども定めた。


両勢力は5日間、スイスのジュネーブで協議を重ねていた。

合意について、ステファニー・ウィリアムズUNSMIL暫定特使は「リビアの平和と安定のため、今回の合意は大事なターニングポイント」と話している。
11月9日からは、チュニジアの首都チュニスで両勢力により政治分野の対話が行われることも予定されている。


■GNAの反応
GNA政府のシラージュ首相は同日、今回の停戦合意が今後、更なる和平へ向けた協議につながるとして期待を示した。
同時に、ハフタルについては「リビア人に対して戦争を犯し、地雷や集団墓地を残して撤退していった者を黙認するわけにはいかない」と非難の姿勢を貫いた。


一方、フィナンシャル・タイムスの報道によると、GNAのバーシャーガー内務大臣は「外国勢力の干渉がリビアの停戦にとって最も大きな壁となる」と語った。
大臣は「外国勢力が諦めれば、ハフタルは脅威ではなくなるだろう」とも言及。ロシアやUAEを念頭に置いたものだと見られる。


■UNSMILの反応
UNSMILは自身が仲介した今回の合意を歓迎。
ウィリアムズ暫定特使は27日、ロイター通信に対して今後、両勢力が国政選挙の日程を定める見込みであることを明らかにした。


■国際社会の反応
国際社会の評価は大きく分かれる格好となった。
米国国務省やドイツ外務大臣のほか、ハフタル勢力を支援するエジプトの外務省は合意を歓迎する声明を発表。
一方、GNAを支援するトルコのエルドアン大統領は「信頼できない」として、停戦が続くことに懐疑的な姿勢を見せた。


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リビアではこれまでにも停戦合意が結ばれ、直後に破られることが続いていた。
今年1月と6月にもそれぞれリビアのGNA政府とハフタル勢力の間で停戦へ向け協議が行われたほか、3月には両勢力がパンデミックを受け停戦に合意。だが、いずれもすぐに戦闘再開へつながった。

専門家などからは今回の合意についても、期待とともに今後の動きを慎重に見る声が上がっている。
リビアの研究者でジャーナリストのムスタファ・フェトウリ氏は、今回の合意が分裂状態にある同国を再び一つにするための「最初のステップ」であるとし、今後の協議を円滑に進める助けになると話す。
ただ、軍事部門の交渉のほか、トルコなどリビアに関わる国の動向にも中止が必要そうだ。フェトウリ氏は来週行われる予定の米国大統領選の結果も影響すると見ているという。


2. 市民の暮らし

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この間、苦しい生活を強いられてきたのは市民だ。
ベンガジに暮らすアリーさん一家は2014年、情勢不安に伴い第3の都市ミスラタに避難。帰ることができたのは2018年だった。

「地雷が4発、爆発するのを見たことがある」
ナシラ・アブドゥラ・アリーさんはいま、母と4人の兄弟とともに破壊された町のアパートに暮らしている。

アリーさん一家は小さなスーパーマーケットを経営していたが、避難している間に破壊された。
それでも、一家のアパートはまだ暮らしができる状態にある。近所の人たちのなかには、家すらも壊されている人たちがいるという。
「戻ってきたときは、とても幸せだった。家にいられるのは、美しくすばらしいことだと感じた」


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ハフタル勢力が2019年4月に始めた軍事侵攻による犠牲も計り知れない。
タルフーナで今月、発見された集団墓地からは、新たに12人の遺体が見つかった。

GNA政府は7月以降、タルフーナで少なくとも8か所に集団墓地があることを突き止めており、これまでに女性や子どもを含む200名以上の遺体を発見している。
同地区は6月にハフタル勢力がトリポリ周辺より撤退するまで、GNA勢力との間の前線だった。この時、ハフタル勢力を支持する現地の民兵組織「カニヤート」が多くの市民を連れ去ったとみられている。

GNA政府は現在、行方不明者の特別チームを作り捜査を進めている。ただ現場では、現地で農業を行っている人なども捜査へ駆り出されている状態だという。

作業の映像などはこちらから。


3. 新型コロナウイルス

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市民の暮らしをさらに追いやっているのが新型コロナだ。
リビアでは29日 (現地時間) 時点で、累計58,874人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は7,249人日に平均約1,000人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は823人で、1週間で58人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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リビアの人口は689万人ほど。

国際連合人道問題調整事務所 (OCHA) によると、10月中旬の時点で感染者数の最も多い地域は首都トリポリ。続いて第3の都市ミスラタ、トリポリ西部のズリテン、第2の都市ベンガジで多くの感染が確認されている。

情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃も多発。6月から7月頃には市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいた。


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