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Libya Updates #21: AUGUST 2020 Week 4


こんにちは🕊
今週のリビア情勢を整理しました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 停戦宣言

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GNA政府は21日、停戦を宣言。シルトとアル・ジュフラの非武装化を要請するとともに、来年3月に議会と大統領の選挙を行うことを呼びかけた。
これに対してハフタル勢力を支援する東部トブルク政府 HoR のアグイラ・サレ氏が合意。国連主導の軍事部門での和平交渉を進めることを提言した。


国連リビア特別ミッションは両者の合意を歓迎した。


フランス外務省も宣言を評価。紛争当事者に対して持続的な停戦を求めた。


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停戦を宣言したGNAの拠点のトリポリでは22日、数百名の市民が抗議運動を起こし、政府の腐敗のほか、停電や断水など生活水準の悪化を訴えた。

世界銀行によると2019年のリビアの世界の若者の失業率は、中東北アフリカ地域最悪で50%だ。昨年4月に始まったハフタル勢力による軍事侵攻が経済に影響。同勢力は今年1月より、リビアの主要な油田につながる港を封鎖している。

中東調査会の記事はGNAが停戦を宣言した背景に「東部の石油輸出封鎖を早期に解除したい動機があると考えられる」と指摘。「市民生活に直結する問題(慢性的な停電や断水、ゴミ収集の遅れ、現金不足等)や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に具体的な対応策を打ち出せていないことで、GNAに対する国民の不満が一段と高まり始めた」


同日の抗議運動では、市民に対して武装勢力が空砲を撃つ模様が目撃されている。1名が負傷したという。
GNA内務省は平和的な抗議運動に「侵入者」が暴力を行使したとして犯人を非難するとともに、捜査を行っているとした。

国連もGNAに対して調査を行うよう要請している。

こうした動きに反して、トリポリ中心部では24日にもデモが継続。抗議の後にはごみの片付けを行う人びとの姿も見られたという。


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リビア国営石油会社 (NOC) は今週、7ヶ月ぶりに石油の輸出を再開する準備を進めていることを発表した。


だが、今後の動向に注視が必要だ。
ハフタル勢力は23日、GNAによる停戦宣言を却下。GNAが宣言をアピールに利用していると非難し、シルトとアル・ジュフラについて、あらゆる攻撃に備える姿勢を示した。


GNA軍は27日、ハフタル勢力が停戦を破って戦闘を続けていることを指摘している。
武装勢力とロシアの民間軍事会社ワグナー・グループの傭兵らがGNAの勢力に対して12発以上のグラッド・ミサイルを撃ったと主張した。


2. 新型コロナウイルス

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リビアでは13日(現地時間)時点で、累計11,834名の感染者が確認されいている。前の週から新たに2,371名の感染が確認された格好。1日に約340名の新規感染者が確認されている計算だ。
累計死者数は210名で、1週間で41名の増加。


感染者数は5月まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月。1週間の新規感染者数が前の週を大きく超える状態が続いてきた。

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リビアの人口は665万人ほど。

GNAは26日の夜から24時間の外出禁止令を発令。「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため」としているが、続いていた抗議運動を鎮静化する狙いがあったとされている。

GNA政府は7月30日にも感染拡大防止のため、ロックダウンを実施することを発表している。対象はトリポリなど同政府の支配する地域で、同国の一部に限られる。

情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民らが地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいる。


3. 移民・難民

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西部の町ズワラの沖合で23日、リビアの赤新月社が移民・難民22名の遺体を発見した。国際移住機関 (IOM) が発表した。
リビアのIOMの代表、フェデリコ・ソダ氏は「これらの痛ましい死は紛争から逃れている人に対する(厳しい)政策の激化、極度の貧困のほか、移民の流れに対する人道的な対応の失敗の結果だ」と話している。

リビア沖では17日にも移民・難民らを乗せた船が転覆し、少なくとも45名が死亡した。今年に入って最も多くの死者が出た転覆事故となった。

ズワラの位置はこちら。


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リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。


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