[食べて歴史を考えよう]ベトナムのプリン「バインフラン」は練乳入り?フランスのプリンとはどう違う?
◎はじめに(バインフランとカラメンについて)
世界旅行中、ハノイに5泊しました。のんびりとした滞在になったので、興味のあるベトナムのローカルフード・デザートなどを食べ歩き。勝手な想像の歴史と共に少しご紹介します。今日はバインフラン・・・ではなくカラメンについて。
・カラメン/Caramen(ハノイなど北部ベトナムにおけるプリンのこと。Kem Caramenとも。ホー・チ・ミンなど南部ではバインフラン/Banh franと呼ばれている。)
カラメンは2店舗で。Minci PuddingとKem Caramen DongHoa たぶん50m程しか離れていないのですが旧市街に程近いハノイの人気店です。どちらも1個70,000ドン(約35円)
◎ベトナムの乳・酪農事情
↑フリー素材の牛さん
ベトナムのプリンは練乳を使っているのが特徴だそう。もしかすると現代では差別化のために牛乳を加えたりもしているかもしれませんが、単価を考えるとやはり練乳が今でも主ではないかと思います。
東南アジアは気候的に酪農に向かないので、乳の食文化は従来希薄でした。粉乳を他国から購入して練乳に加工しての使用が多かった様。(加熱するので保存流通の面でも合理的)
その後、国によってはインドの移民が、植民地化により宗主国が持ち込んで少しづつ根付いたみたい。ベトナムはご存知フランス統治時代がはじまりだけれど、その後はアメリカからの安価な粉乳に切り替わり定着せず、ここ50年ほどで徐々に進んできたよう。
近年は生活水準が上がってきて食生活も多様化傾向でどんどん国内需要が増えて、国の資本が入った大企業(Vinamilk)も出来て乳業メーカーのM&Aが盛んなのだとか。(「酪農者は稼ぎに満足しているので、取材中も笑顔がおさまらない」という写真とキャプションを見た。)
◎ハノイのカラメンを食べ比べ
食べるとどちらのお店も「とっても柔らかい(なめらかクリーミーとは違う)」「カラメルのビター感」が特徴です。そして、良い意味で余計なコクがなく、2個は平気で食べられそうです。
Minciの方が少し卵の風味を感じられて好み。DongHoaのほうは茶碗蒸しと卵の間のような味わいです。柔らかいけれど、プッチン!とひっくり返せる不思議。カラメルのビター感はコーヒーを入れて強調させているレシピもあるよう。
↑DongHoaのカラメン。
カップから出すとポヨーンと想像以上に広がるやわらかさ。
↑Minciのプリンはそこまで広がらないので卵が多そう。
◎南北ベトナムプリンの歴史妄想
ベトナムのプリン食はフランスによる統治時代から広まったとされています。フランスの偉い方が長期滞在する先のホテルや宿のシェフにお願いして作ってもらったのが始まりでしょうか?(勝手な想像です)
グルメなフランス人なので、普段美味しい食事を作ってくれるベトナム人のシェフには心を開いて、友好的にあーだこーだ試食試作をして一つの形になったのではないかしら?(そんな穏やかな世ではなかったか・・・)
脱線しますが、ホー・チ・ミン大先生は一時、ボストンでペストリーシェフ(パティシエ)をしていたそう。ベトナムのプリン食にホー・チ・ミン先生がかかわっていたら歴史的に一層ユニークですね。(そんな文献はありません)
南部の呼び名「バインフラン」はベトナム語のバイン/Bahn+フランス語のフラン/Franですね。バイン=「餅」、フラン=フランスのプリンに粉を入れて少し食感を出したおやつです(粉が入っていないタイプもありますが)。ベトナム料理でバイン(Bahn)がつくのはバインミーやバインセオなど「粉・主に米粉」を使ったものが多いですが、現代のバインフランにはおそらく入っていません。言葉から想像するに、昔のバインフランには粉が入っていてフランスのフランに近かったのではないかな?(妄想)
↑パンやクレープの「粉もの」には「Bahn」がつく。
北部の呼び名「カラメン」はカラメル/Caramelというフランス語にとても近く、Kem Caramen=Creme Caramel(フランスのプリンの一種)と言葉が完全に一致するのはこちら。北部は粉を用いずはじめから滑らかな状態だった・・・りして。
南北それぞれで伝わったので違う名前なのか、南北どちらかに先に伝わって全土に広がり差別化のために名前が違うのか・・・。 文献では「南部ホー・チ・ミンのプリンは固め」らしいので、名前の由来はヒットする部分もあったりして。今回、南部には行けなかったので南北跨いでの食べ比べは出来ておらず、いつか訪問し、妄想や裏付けの補完をしたいものです。
尚、フィリピンにもレチェフランなる練乳入りのプリンがあるそう。こちらは卵黄が多めらしくレチェ=スペイン語の「乳」なので、宗主国であったスペインのクレマカタラーナのような濃厚なめらかテイストである?とこちらも勝手に想像。
以上、取り止めのない妄想雑記にお付き合いいただきありがとうございました。次はチェー/Chè編を書いています。
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