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【市役所職員が思う】選択肢の多さと決定権と幸せの相関関係

市役所は今、新年度予算要求の準備をしています。

私はその新年度予算の編成方針を企画政策部門で担当しています。

…いったいどんな投資をすれば、住む人が「幸せ」になるのか。


今日は、「幸せ」についてお話したいと思います。

住む人の密度と幸せについて

一部の都会を除いて、人口が減っています。

と言うと、よく聞かれる質問は「人口が減ると何に困るのですか?」です。

私は「買い物に影響が出ます。」と言っています。


人口減少で買い物が楽しくなくなる

例えばお店。スーパーマーケット。
その商圏の人口が減ると、お客さんは減ります。お客さんが減ると、売り上げが減ります。

ライフイベントを迎える若い世代こそ住む場所を移るので、人口が減少するエリアに残っているお客さんは、高齢世代の割合が高まります。人口減少地域のお店のお客さんは、減りながら高齢化していくのです。

年金生活になった高齢者は、簡単には付加価値の高いものを買ってくれません。なんなら、高齢者にはお金に余裕がなくても時間に余裕があるので、半額シールが貼られるまで待つかもしれません。普段からお値段をチェックしているので、安さには敏感で、特売品しか買わないかもしれません。忙しいから買っちゃうという買い物が少ないと思われます。そうなると、客単価は下がり、売り上げ減少は加速します。経費削減を工夫したとしても、経営には限界があります。

廃業すれば雇用もなくなり、残るのは、買い物が難しくなった少子高齢化地域です。

例として顕著なのは、ケーキ屋さんです。

ケーキ屋さんは誕生日ケーキやクリスマスケーキ、バレンタインチョコなど、若い世代こそ利用します。といっても、年に何回かですが。高齢世代は、糖尿病やお財布が気になるので利用頻度はさらに低いでしょう。誕生日はケーキ屋さんのケーキよりも、菓子パンコーナーにある100円のお菓子でいい、になります。100円の菓子パンコーナーのお菓子を買うお客さんばかりになると、ケーキ屋さんのお客さんは絶滅危惧です。

ケーキ屋さんがなくなったエリアに住む人は、お誕生日お祝いのケーキを買いに行くのに苦労するようになります。イチゴのケーキか、チョコのケーキか、アイスのケーキか、モンブランか、ティラミスか、フルーツたっぷりのケーキか、チーズケーキか、プリンか、シュークリームか、選べなくなるのです。なんなら、ケーキにたどり着けないかも。なんか、面白くないですよね。

人口減少とは、そのエリアのマーケットの量と質の悪化です。


人口減少で不便を感じる交通

交通。
交通が不便というのは、移動手段に選択肢がなくなるということです。2時間に1本のバスしかない、帰りはタクシーしかない、タクシーもなく親戚に頼むしかない。東京には、時刻表なんて気にせずすぐ地下鉄が来て、なんなら1本遅らせても行きたい場所に安く移動できるメトロもバスもJRもあります。


仕事がないというのは、本当に仕事がないのではなく、仕事に選択肢がないということ。したい仕事がない、条件のよい仕事がない、仕事が選べないと、仕事がないという不満につながります。

選択肢と「幸せ」は関連していますよね。


選択する幸せを知らないと…

少し話がそれますが、

ソ連時代にモスクワの人が、「資本主義の人はかわいそうだ、こんなにたくさんの種類の中から自分の一つを選ぶのは大変だ。」と言ったとか言わなかったとか。

私の体験ですが、インドに行って帰ってきたら、商品に値段が決まってあることに違和感を感じました。「値段は、買う私が決めるんじゃない?」なんて思ったんです。もちろんすぐに感覚は元通りになりましたが。


人口増=良いことなのか?

よく聞かれる質問その2「人口が増えるのは良いことなのですか?」

そういうことではありません。人口が増えたから良いのではなく、人口が多ければ一般的に生活の選択肢が多くなり、選択肢の多さが、幸せを感じることがより簡単になる、と思います。


私たちは幸せを感じたい

都会の生活には多くの選択肢があります。

仕事も移動手段も買い物も遊び方も、結婚してもしなくても、子どもを生んでも生まなくても、洋食も和食もインド料理も、ファーストフードもゴージャスディナーも、女装しても男装しても、人が集まるところに行くことも行かないことも、車に乗っても乗らなくても。


自分らしい選択肢

地方には選択肢の少なさに加え、「周りの目」が、自分らしい行動の選択肢をさらに狭めます。

…最も顕著な「周りの目」は、ジェンダーです。

特に、若い女性が都会へ移動しています。おそらく、リベラルな知的な女性が、自由と選択肢を求めて都会に移動しているのではないかと思います。自分の意志で決めて生きていきたいと願う女性は都会へ、地方には、保守的で受け身な女性、都会の隙間に入れなかった女性が残っているのではないかと思います。

これは男性も同じです。幸せという、選択肢と自己決定権を求めて都会に行きます。

特に女性の方が、ジェンダーという決めつけが厳しいかもしれません。日本はジェンダー後進国です。


選択肢が多い都会

そこで都会では、競って面白がって新しいことにチャレンジし、ステキな場所や体験を創り出し、どんどん都会は楽しい選択肢が増えるのです。

地方に残った人は、長老や周りの目を気にしながら生活しています。選択肢が少ない窮屈な生活。不満な気持ちは、なんとなく不幸せな気持ちを招きます。


地方の選択は自己決定

しかし、地方でも、自分で選択し、決定し、人生を幸せにしている人が多くいることを、私は知っています。地方に住む幸せは、選択肢の数というよりも、選択に関わり、「自分で決めた」ことが幸せと関係する思うのです。


人口が減少する地方は、「自分で決めること」、すなわち、「住民自治」が「幸せ」につながると考えて、チャレンジしなければならないと思うのです。


ということで、長々と書き連ねました。

ああ、うまくこれを組織の合意、総意にして、予算編成方針として浸透させたい…。ああ、言葉に力がほしい。目や指や声に力が欲しい…。


市長が私以上に地方創生を真剣に考えてくれてたらいいのに。

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