そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ
本屋大賞にも選ばれていいて、ありとあらゆる本屋に平積みされているのを数年前に見ていた。読みたい、読みたいと思いつつ機会がなかったのだが、今回は巡り会った。
瀬尾さんの作品を読むのはこの作品が初めて。まず、驚かされたのはストーリー設定。父が2人、母が3人という異色の設定にも関わらず、なぜかすんなりと受け入れてしまうのは瀬尾さんの巧みな語り口と登場人物の嫌味のなさからくるのかな。
私は個人的に森宮さんが大好きだ。自分が変わり者と自覚していなくちょっぴりズレている彼の発想や主人公優子とのコンビネーションがくすりと笑えたり、声を出して笑ったり、そしてホロリとしてしまったり。
登場人物はみんな魅力的で素敵な人達。でも、みんな良い意味で良い子ちゃんすぎないというか。いじわるな人たちじゃなくても、思いがけなく嫌なやつになってしまったり。優子やクラスメイトは10代ならではの意地をはってしまったり、ちょっとしたきっかけでうまくパズルが組み合わず仲たがいしてしまい思った以上に大ごとになってしまって。でも引っ込みつかなかったり。大きかれ小さかれ誰もが通っているだろうストーリーが入っていたり。学校生活がすごくリアルだなと思っていたら、瀬尾さん先生だったそうで。先生たちの観察眼ってすごいんだろうなって改めて思いました。
そんなこんなで、とっても読みやすくて、あっという間に読み終わってしまいました。
あとがきにもあったけれども、この本に学生時代に出会っていたら。結婚する時に読んだら、子供ができたときに読んだら...と人生の節目や成長過程のいつ読んでも寄り添ってくれるんだろうなって。どんな時に読んでも優しく包みこんでもらえそう、そんな作品は中々少ないのではと思う。そして、読むときの自分の環境によって物語の輝く部分、グッとくる部分は違ってくるのだろうなって、また少し歳を重ねたときに再読するのが楽しみ。将来の私はどんな場面に笑い、涙し、勇気をもらうのだろう。長く人生に寄り添ってくれる。そんな作品でした。
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