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レントよりゆったりと〔随想録〕

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2016年11月の記事一覧

青い風花

青い風花

第一詩集『青い風花』 矢口蓮人 著

ビルの隙間風に舞うのは、枯葉でも花びらでもなく、いつかの日に溢れて拾い損ねた想いだった。
16の詩に乗せて謳う、青年の強がりと少女の孤独。
大人になってしまったあなたが、なくした鍵がここにある。

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けものみち  #随想

けものみち #随想

駅の階段を降りる、急ぎ足に。交差する人の流れの間で一際目立つ生き物が、視界の片隅から中央に近づいてくる。間違いない、あれは獣だ。ということは、ここはサバンナか。

猫背、というより狙いうかがうように背中を折りたたみ、寒くもないのに両手をポケットに突っ込んで、上肢帯は歩く度に根元から大きく交互に振れる。
雌を値踏みして歩く王さながらの、いやらしい顔つき。前方に突出した顎先から、野心の片鱗が垣間見える

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上流に向かって  #随想

上流に向かって #随想

瞼に垂れる車。揺れる車。それとも揺れているのは僕の車か、僕の体か。あの色はなんて言ったらいいだろう。ベージュかライトブラウン。どちらも車の色を形容するにはどこか頼りない。

古めかしい矩形のSUV車はボディが弱そうだ。光沢もない。それは隠すことや守ることを知らない、野性の肉体のような生々しさを思わせる。

四面に大きく開けた窓からは、運転手の横顔やら項やらが丸見えだ。清々しく水色の空を切って行く。

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