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#詩
インサイドアウト・イエローレイン 【詩】
言い伝えにあった黄色い雨は
坂に降り 丘に降り
ビルにも降ったが
どれもが紛い物だった
本物は そう
大樹の内側で ひっそりと
まるで 黒衣の僧たち数人が
粛々と蛇行したあいだを
きちんと埋めるかのように
黄色い雨は そうして
しゃらんしゃらんと降りしきった
みずいろのTシャツを着た少年がひとり
溶け始めのアイスクリームのように
笑った 染め上げられながら
大樹の天井のずっと奥に
水と光を放
永遠の鈍色の内 【詩】
雨だれ 七色
次の粒が落ちるまでの
期待の色と 中間色の もどかしい
望んだものは 手に入らない 当然
意識は 数秒さかのぼって
他の色を欲しがるものだ
雨だれ カスミ草
主役の不在を嘆いた人の
期待の花と 世間知らずの くだらない
確固たるものは 目に映らない 当然
意識は 勝手に先回って
他の花を飾り立てているものだ
倉庫の天井のような空
見上げるのをやめたら
右手に握られていたドライフラ
限られた壁の向こうに【詩】
光、無量に差すれども
生涯、照らされなかった言葉を
アイビーの蔦這う壁に
でかくでっかく 吹きつけた
路地裏はあまりに狭いものだから
誰の目にも留まらないし
この目にも
もはや言葉としては 映らなくなった
只管に密度を増してゆく蔦葉らが
投げてくる言葉は唯ひとつ
「ここを去れ」と
嘆息との虚しい往来
──かつて
纏わる煤を友愛の証に換えた
煙突掃除夫たちのように
suppression【詩】
面倒くさい空だ
コバルトブルーに澄み
ほどよく千切れた雲を散りばめ
どこにでも 我が物顔で 居すわる空
いつ誰にでも
美しいと
見上げられると
思うな
幾筋もの面倒くさい道の先に広がる
むずがゆい空め
その始点は紛れもなく私
奴らが面倒くさいのを 責めようがない
これ以上 空が無様に滲まないよう
もう何もしないことに決めた
もう 何も しない と
焦燥の熱で雲が膨れ
時のひしめく音