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インサイドアウト・イエローレイン 【詩】

言い伝えにあった黄色い雨は
坂に降り 丘に降り
ビルにも降ったが
どれもが紛い物だった

本物は そう
大樹の内側で ひっそりと
まるで 黒衣の僧たち数人が
粛々と蛇行したあいだを
きちんと埋めるかのように

黄色い雨は そうして
しゃらんしゃらんと降りしきった

みずいろのTシャツを着た少年がひとり
溶け始めのアイスクリームのように
笑った 染め上げられながら
大樹の天井のずっと奥に
水と光を放つ何かがあると 直観しながら

この子もまた僧の見習い
いずれは斜め下に目を落とし
足を運ぶだけの日々に堕ちるわけだが
いまは 歯を見せて 笑えるのだ
枝葉が脈々と 空と僕らを無意味に繋ぐこと
知っている いまだけは

他には誰も見当たらない

レモンの皮に
親指の爪を立てたときの喪失感で
みな脱走したのだろうか

一度限りの香りの発露
その模倣の日々に飽き飽きしたから
みな旅に出たのだろうか

少年と僧のあいだ
 自由時間を与えられた僕らは
退屈をブルーに驚嘆をイエローにと決めつけず
たまたまの色 つどつどの色を 享楽すれば

いよいよ大樹を裏っ返しにして
今度こそ
本物の黄色い雨を世界に降らそうじゃないか


#詩

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