- 運営しているクリエイター
#小説
【掌編】五本指の龍狩
下降錘を減らして減速し、滑車槽から降りれば、二百八十七番の見張り梢に出る。洞から先の枝間は色褪せた網で編まれ、安定した床を成している。樹冠に設けられた小空間は、天井がなく吹き曝しだ。
雲一つない快晴、いつも通りの淡紫色。
先客が陣取っているのも、昨日と同じ。
「チゴノ博士、兆しは見えますか」
問われ、空に手をかざしていた老婆は、鷹揚に振り返る。
「おお、レザか。今日明日じゅうには墜ちるまい
【#才の祭小説】ベファーナの涙
ヒューン、パシッ。
怯えた黒猫めがけて飛んできた雪玉が、ルボーネが振りまわした杖にあたって砕ける。
「こんのクソガキども、タダじゃおかないよ!」
「うわ、出た! 魔女のババアだー!」
飾りが明滅する街へ、雪を蹴立てて逃げ去る子どもたち。
「……怪我ないかい、ネロ」
寄ってきて老婆の足にまとわりつく黒猫。
腰を労わりながら、すくいあげるように胸に抱える。ネロがショールに潜りこむのを見てルボーネは目を