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どんだけ燃えても好きだ

「清純派女優と不倫」

妻子持ちの人気俳優についての無価値な知らせが
目に入る。

有名人の不倫報道なんてよくあることだ。いちいちネットニュースなんて気に留めない。そもそもどうだっていいだろう。誰が不倫してても自分には関係ない。いつもならすぐに画面を閉じて、自分の世界に戻る。そしてそんな知らせはいつの間にか自分の中から消える。

でもこの知らせだけは
私をスマホの画面に捉えて離さなかった。

「清純派女優と」その言葉が目に入った瞬間
血の気が引いた。
清純派、?
その人気俳優の相手で「清純派」となると
どうしても彼女しか思いつかなかった。

その俳優のことなんざどうだっていい。その俳優自体が何を言われても何をされても私の知ったことではない。私はただ彼女のことだけを想った。私はただ、その彼女が彼女でないことを祈った。

彼女のことがすごく好きだ。
表情が移り変わる瞬間に、瞼がかすかに遠慮がちに震える瞬間に、彼女にぐっと惹きつけられる。彼女の声の柔らかさに包まれる。それに、、、
これ以上言うと変態だと思われるので、発言は差し控える。(もう変態だとバレてる気もするが)

見出しを開いて、記事は読まずに
相手の女優が誰なのかだけ確かめたくて
名前を探す。
画面をスクロールしていく。
2回目のスクロールで指が止まり
ガンッと頭を殴られたような感覚がした。

清純派女優の正体はやっぱり彼女だった。
予想はしていたものの、相手が彼女ではありませんように。と願っていた分だけ強く殴られたような衝撃だった。

ニュースが報道されたあとは世の中の残酷さを知った。火は一瞬で日本中に燃え移った。ネットニュース、あらゆる画面や週刊誌が彼らのことをネタにした。
そしてテレビのワイドショーで偉そうに座っているコメンテーターたちは彼や彼女について、ボキャ貧なりに思いつく限りの下劣な言葉で表現した。

この人、昔、薬物やってたよな?あれ、この人はセクハラで問題になってたよな?時効ってか?
ふざけんなよ。偉そうにコメンテーター席で座って大口叩くんじゃねえよ。

当時わたしは高校3年生だった。ニュースが報道された翌日だかにセンター試験があって、行きの電車で会った友人に、2人して手元で参考書を見ながら、彼女のことが心配で堪らないという話をしたら、その友人は参考書を閉じてわたしの頭を優しく撫でてくれた。彼女にはこんなふうに守ってくれる人がいるだろうか。とますます彼女のことが心配になった。

そして、そのあと、頭を撫でてもらったおかげかテストには集中できたが、あーこんなときに彼女のことを忘れてテストに集中するなんて最低だ。なんて冷たい人間なんだろう。と自分が嫌になった。わたしは彼女のファンであって、現実世界ではなんら関わりがないのでそんなことを思う権利もないのだけれど。

センター試験の日に頭を撫でてくれた友人もいたが、現実は厳しくて、クラスで彼女の批判をしていた女子生徒もいた。わたしは受けた恩を忘れない反面、すーーーごく根に持つタイプなので、約3年ほど経った今でもその女子生徒と、その女子生徒が彼女のことを口にした場面をはっきりと覚えているし、この先も忘れない。

言ったな?言いやがったな?この先、一生、何があっても不倫しないって言い切れるんだな?
立派だね。素晴らしいね。でもね、たとえあなたが不倫しなくても、この先、あなたの大事な人が不倫をして世の中からバッシングを受けたら、その言葉をその大事な人に言えよ?

と口には出さずに教室の隅から思っていた。
我ながら怖い。

そして、わたしが彼女のファンだというのは抜きに考えてみると、わたしが彼女の立場だったら不倫しなかった。なんて言い切れないと思うのだ。

上京したてで、映画のヒロイン。重圧もあるなかで右も左も分からないまま日々役に向き合う。そんなときかっこいい先輩俳優が優しくしてくれたらそれだけで嬉しいし、救われる。
その上、ときめく瞬間があったら?関係を迫られたら?もう止められないと思うのだ。
奥さんが素敵だと尚更だと思う。奥さんがあんなに素敵な人なのに?わたしが好きなの?とますます嬉しくなってしまう気がする。(わたし特有なのかも知れないが)

逆に奥さんの立場になってみるとそれはそれで辛さがわかる。いや、わかる。なんて気安く言ってはいけないが、どれだけ辛かっただろうか。と想うことはできる。結婚って怖いな。と改めて思ったりもした。

色々分からなくなってきたが、無理矢理まとめていこうと思う。とにかく、恋愛や不倫、その他諸々、他人のあれこれについて賞賛するならまだしも、批判やバッシングなんてするなよ。黙ってろよ。お前らに全く関係ないだろ。嫌な気持ちになった?不快?だったらニュース見るな。いや見るなとは言わないが責める相手はメディアにしろ。でもメディアだって世間が見たいものを提供しているまでだからメディアも別に悪くないのか。いや、とにかくニュースダイエット読めよ。リンク、貼っとくからさ。

いやいやいやいや、また話逸れたよ全くもう。
とにかくね、とにかく、そういう他人のことも、
もうほんとに、ほんとにさ、どうでもいいや。
最近、彼女がメディア露出を再開したんだからもうそれだけで充分だ。

わたしも映画の試写会でおかえりって言いたかった。言ってあげる。じゃなくて、言いたかった。申し訳ないと本当に思ってるならスクリーンから消えないで、また戻って来て。と思ってしまってごめんなさい。の意味も込めて、おかえり。と言いたかった。でももうそれも良い。どうでも良い。くらいにもう良いや。隅に置いておけるくらいに良い。
今の彼女の姿が目に映るたびに泣きそうになるくらいに、有難うって彼女に思う。

推すってなんだろう。推しってなに?
彼女が戻ってくるまでは分からなかった。
好きだなと思うことはあっても、推しとはなんとなく違う気がしてた。
他人だし、現実世界でなんの関係もない人に熱狂的になれるってどういうこと?
直接話してみないと分からないことの方が多いだろうに、なんで好きになれるの?
と斜めに僻んでいた。羨ましかった。
でも今はなんとなく分かる気がする。

やっぱり、捻くれ者なので
彼女を「推し」と簡単に呼びたくないけど。

彼女が笑うと嬉しい。彼女が泣くと抱きしめたくなる。アイライナーが涙で滲むなら、涙するたびに綺麗に引き直してあげたい。背中を温めてあげたい。

色々と想像してみる。
色々と想像してみても、好きだ。

ほんとは女じゃなくて、男だった。としても、靴下が今まで出会った人の中で劇的に1番ダサかったとしても、犯罪歴があったとしても、、、
もう他に思いつかない!
けどまあ好きなんだって絶対。

これから先、しわくちゃになっても好きだと思う。顔が変わっても、好きだと思う。声が枯れても好きだと思う。体型が変わったって、演技が下手になったって、好きだ。減っても増えても、どんなふうに変わっても、1ミリでもあなたが残ってるなら、好きだ。唐田えりか、すきだ。

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