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自分のことばを失くさないために.

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青年と夕刻

いつからか、自分が世界の中心ではないと知るようになる。 自分が転がしていると思っていた地球が、時間が、 何もしなくても、ここにいなくても、勝手に回っていくと知る…

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3年前

グライダーからの応答

はじめは、わけもわからず飛び出したよなあ。 飛び出していたこともわからなかった。 自分が飛んでいるのか、堕ちているのか。 進んでいるのか、止まっているのか。 時間…

taichi
3年前
1

いつもと違う、いつもと同じそら

名前のない空の色. 変わり続ける雲の手触り. 見えない太陽との距離. 言葉の網に絡めとられぬように. 言葉にならない質感を,ずっと見つめていたい. 元旦の,いつもと…

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4年前
3

選ぶこと。 書くこと。 生きること。

あの日を思い出しては、悔しくなる。 いつかを想像しては、怖くなる。 あっちの道は危険なんじゃないか。誰もいない真っ暗闇なんじゃないか。 やはりこっちの方が安…

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4年前
4

止まりかけの時間

太陽が落ち始めたことに、ふと気がついて、 ああ、部屋の電気をつけようか、と宙を見上げる頃。 宅配便のトラックと、はしゃぐ子どもと、カラスの気だるい声が、霞むよう…

taichi
4年前
1
青年と夕刻

青年と夕刻

いつからか、自分が世界の中心ではないと知るようになる。

自分が転がしていると思っていた地球が、時間が、
何もしなくても、ここにいなくても、勝手に回っていくと知る。

追いつこうとしても無駄だ。周回遅れ。

こんなに頑張ってるんだ。
僕が止まったら、世界も止まって欲しい。

青年の虚無など、つゆ知らず。

空が今日も煌々と赤い。

西へ落ちる血潮が、心を朱に染める。

グライダーからの応答

グライダーからの応答

はじめは、わけもわからず飛び出したよなあ。
飛び出していたこともわからなかった。

自分が飛んでいるのか、堕ちているのか。
進んでいるのか、止まっているのか。
時間だけが過ぎていく。

大抵、期待した答えは返ってこないし、
褒めてくれなければ、止めてもくれない。
誰のためなのか、自分のためなのか、自分が誰なのかもわからない。

たくさん迷って、たくさん諦めてきた。
それでも頭はいつも考えている。休

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いつもと違う、いつもと同じそら

いつもと違う、いつもと同じそら



名前のない空の色.

変わり続ける雲の手触り.

見えない太陽との距離.

言葉の網に絡めとられぬように.

言葉にならない質感を,ずっと見つめていたい.

元旦の,いつもと違う,いつもと同じそらを眺める. 静かな決意.

選ぶこと。 書くこと。 生きること。

選ぶこと。 書くこと。 生きること。

あの日を思い出しては、悔しくなる。

いつかを想像しては、怖くなる。

あっちの道は危険なんじゃないか。誰もいない真っ暗闇なんじゃないか。

やはりこっちの方が安全だろう。だって、みんなそっちがいいと言う。

もしあの別れがなかったら、この出会いはなかったのだろうか。

もしこの出会いがなかったら、別の出会いがあったのだろうか。

人間は、"想像" という厄介な能力を授かった生き物だ。

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止まりかけの時間

止まりかけの時間

太陽が落ち始めたことに、ふと気がついて、

ああ、部屋の電気をつけようか、と宙を見上げる頃。

宅配便のトラックと、はしゃぐ子どもと、カラスの気だるい声が、霞むように響く頃。

この時間が、僕は苦手だ。

無個性で平らな時間が僕を包んで、永遠へ連れ去ってしまうような。

止まっていく時間に取り残されて、ひとりぼっちになってしまうような。

そんな気がして、僕は逃げるように外に飛び出し、この時間をや

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