taichi

自分のことばを失くさないために.

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最近の記事

青年と夕刻

いつからか、自分が世界の中心ではないと知るようになる。 自分が転がしていると思っていた地球が、時間が、 何もしなくても、ここにいなくても、勝手に回っていくと知る。 追いつこうとしても無駄だ。周回遅れ。 こんなに頑張ってるんだ。 僕が止まったら、世界も止まって欲しい。 青年の虚無など、つゆ知らず。 空が今日も煌々と赤い。 西へ落ちる血潮が、心を朱に染める。

    • グライダーからの応答

      はじめは、わけもわからず飛び出したよなあ。 飛び出していたこともわからなかった。 自分が飛んでいるのか、堕ちているのか。 進んでいるのか、止まっているのか。 時間だけが過ぎていく。 大抵、期待した答えは返ってこないし、 褒めてくれなければ、止めてもくれない。 誰のためなのか、自分のためなのか、自分が誰なのかもわからない。 たくさん迷って、たくさん諦めてきた。 それでも頭はいつも考えている。休むことを知らない。よく働く。 気づけば歯を食いしばっている。楽観的になんてなれな

      • いつもと違う、いつもと同じそら

        名前のない空の色. 変わり続ける雲の手触り. 見えない太陽との距離. 言葉の網に絡めとられぬように. 言葉にならない質感を,ずっと見つめていたい. 元旦の,いつもと違う,いつもと同じそらを眺める. 静かな決意.

        • 選ぶこと。 書くこと。 生きること。

          あの日を思い出しては、悔しくなる。 いつかを想像しては、怖くなる。 あっちの道は危険なんじゃないか。誰もいない真っ暗闇なんじゃないか。 やはりこっちの方が安全だろう。だって、みんなそっちがいいと言う。 もしあの別れがなかったら、この出会いはなかったのだろうか。 もしこの出会いがなかったら、別の出会いがあったのだろうか。 人間は、"想像" という厄介な能力を授かった生き物だ。 自分の過去や未来について、回想し、空想せずにはいられない。 その時、自

        青年と夕刻

          止まりかけの時間

          太陽が落ち始めたことに、ふと気がついて、 ああ、部屋の電気をつけようか、と宙を見上げる頃。 宅配便のトラックと、はしゃぐ子どもと、カラスの気だるい声が、霞むように響く頃。 この時間が、僕は苦手だ。 無個性で平らな時間が僕を包んで、永遠へ連れ去ってしまうような。 止まっていく時間に取り残されて、ひとりぼっちになってしまうような。 そんな気がして、僕は逃げるように外に飛び出し、この時間をやり過ごした。 逃げるように遊び、逃げるように働いた。 今も昔も変わらない。

          止まりかけの時間