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#小説
君の嘘と、やさしい死神
「末裔の中で一番落ちぶれたやつを助けてやろう。」
突然現れた死神に術をかけられた主人公。先祖の功徳の恩恵を受け、死神の姿を見ることができるようになる。勧められるままに医者の看板を出して一儲けするお調子者を描いた古典落語『死神』に登場する一節だ。元々はサゲ(オチ)で主人公が命を落とす。ただ、元旦などのめでたい席での演目に向かないことを理由に、ハッピーエンドで終わるものなど数パターンの派生した物語が
袖ふりあうのも他生の縁。
人間関係の難しさに日々戸惑う中で、ややかび臭さの香るこの言葉に、年を重ねるにつれ不思議な力を感じるようになった。人はひとりでは生きていけない。そんなことはわかっている。でも、誰かと関わり続ける辛さや煩わしさをずっと感じながら生きていく窮屈な気持ちは、いったいどこへ収めればいいのだろうか。冷静に振る舞うと角が立ち、感情的になると意固地になり、無駄なプライドをぶつけあう。それでも人は、誰かに救われて生
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