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好きな人を振り向かせる方法「アンバサダーマーケティング」

マーケティングを学び実践していると、つくづく感じるのは、マーケティングは恋愛に似ているということである。言い方を変えれば、恋愛とはつまりマーケティングである。

そもそもマーケティングとは何だろう。近代マーケティングの父フィリップ・コトラーの言葉だとこうなる。

「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること。」

フィリップ・コトラー『コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版』より引用

これを、恋愛風にしてみると、以下のようになる。

「どのような価値を提供すれば好きな人のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、好きな人に届け、そこから好きな人の好意を上げること。」

恋愛は、好きな人からの好意を得て、持続させるための活動である。これは、マーケティングと同じ活動と言える。

そのため、恋愛上手になりたければ、マーケティングを学ぶのが手っ取り早い。なぜなら、恋愛テクニックを語ったエビデンスが不明なネット記事に比べ、マーケティングは、多くの方法や理論が形作られ、また、成功事例・失敗事例も大量にあるからだ。

恋愛の教科書は、マーケティングと言えるのである。

マーケティングファネルと恋愛

例えば、恋愛における行動は、人の購買行動を示したマーケティングファネルで説明できる。

以下は、ユーザが商品やサービスを購入する過程を示したスタンダードなマーケティングファネルとなる。

人の購買行動・マーケティングファネル

ユーザが商品・サービスを購入する際には、その商品・サービスを知り(認知)、興味・関心を持ち(興味・関心)、値段や機能で他の商品と比較し(比較・検討)、ようやく購入に至る(購入)。購入後、その商品が気に入れば継続購入となる(継続購入)。

恋愛の場合、運命的な出会いもあるだろうし、今であればマッチングサイト、少し昔であれば合コンに参加して、誰かと出会う(認知)。その後、その誰かに興味を持ち(興味・関心)、他の異性と比較したり、経済条件や考え方などを検討し(比較・検討)、最後、告白して交際スタートとなる(購入)。交際後も、デートや同棲で親睦を深め、結婚へと至るのである(継続購入)。

アンバサダーマーケティングで好きな人を振り向かせる

恋愛における認知、つまり「いい出会いがない」という悩みに応えたのが、マッチングサイトや婚活サービスである。

これらサービスによって、いい出会いがあったとしても、次の障壁が立ち塞がる。相手が興味・関心を持ってくれないという障壁である。そのため、何とか相手の興味・関心を得たい。相手を振り向かせたい、となる。

その場合もやはり、マーケティング手法が役に立つ。

企業がユーザに興味・関心を持ってもらうことを目的に行う活動として、代表的なのがターゲティング広告である。ターゲティング広告は、インターネットの検索履歴や訪問履歴をもとに、興味・関心がありそうなユーザに絞って広告を出す手法だ。

また、興味・関心を引くことは、企業にとっても大きな障壁であり、そのため、ターゲティング広告に限らず、様々な手法が日々、実践されている。

SNSが発達した現在、多く使われる手法の一つが、口コミ効果を狙ったもので、インフルエンサーマーケティングや、近頃だとアンバサダーマーケティングと呼ばれるものである。

インフルエンサーマーケティングは、SNSで多数のフォロワーを持ち、強い発信力をもつインフルエンサーに、自社商品を紹介してもらう手法となる。アンバサダーマーケティングも似たような方法となるが、情報発信するのは、多数のフォロワーを持つ人である必要はない。自社商品に対して強い愛着を持つユーザをアンバサダー(大使)として、商品の紹介をしてもらう手法となる。

インフルエンサーマーケティングの場合、インフルエンサーが強い影響力を持つ人物であり、つまり、インフルエンサー自体に価値がある。

アンバサダーマーケティングの場合は、アンバサダーが提供する情報に価値がある。

企業(作り手)側がどんなにその商品・サービスのことを細かく説明しても、それはやはり、作り手側からの情報でしかない。しかし、その商品・サービスの熱心なファンであるアンバサダー(使い手)からの、具体的で細かい使い勝手などの情報は、他ユーザにとって信頼できて価値ある情報となるのである。

『メリーに首ったけ』に学ぶアンバサダーマーケティング

恋愛コメディ映画『メリーに首ったけ』(1998年)では、アンバサダーマーケティングと呼べる方法を行い、好きな人を振り向かせることに成功している。

『メリーに首ったけ』でマット・ディロン演じるヒーリーは、胡散臭い探偵で、主人公テッド(ベン・スティラー)から、彼が長年恋しているメリー(キャメロン・ディアス)の調査を依頼される。

ヒーリーは、メリーの身辺調査をするうち、彼女の魅力の虜になってしまう。そのため、彼女を振り向かせようと作戦を練る。

まずヒーリーは、探偵という仕事を活かしてメリーの好みを調査する。つまり、マーケティング・リサーチを行う。彼女のニーズを探るのである。彼女の理想の男が「建築家」で、その彼と「一緒にネパールに旅行したい」という情報を得ると、ヒーリーは、最近までネパールにいた建築家としてメリーの前に現れる。

さらにメリーの興味・関心を惹くため、アンバサダーマーケティングを発動する。

この場合、メリーに信頼できる価値ある情報を与えるアンバサダーは、犬となる。

メリーには、仲の良い隣人マグダがいる。彼女が飼う犬は、気難しいが悪い人には吠えない。そして、マグダはメリーに「もしも、ヒーリーに対してこの犬が吠えなかったら、彼が理想の男」と伝える。

その情報を知ったヒーリーは、早速、マグダが飼う犬に薬を与えて手なずける。そして、メリーとマグダの前で、犬が吠える事無くヒーリーに抱き抱えられる姿を見せるのである。

そうして計画通り、メリーはヒーリーに対して「理想の男かも!」と強い興味・関心を持つようになる。

アンバサダーマーケティングの恋愛活用術

好きな人に興味・関心をもってもらうために、本人がいきなり「好きです」と言っても、気持ち悪がられるだけである。

それよりも、好きな人が仲の良い人から、本人のことを指して「あの人、いい人だよね」とか「あの人、素敵だよね」とか言ってもらった方が興味を抱いてもらいやすい。

もっと踏み込んで、「あの人、あなたのこと可愛いいって言ってたよ」とか「あの人、あなたに好意があるみたいだよ」と言われたら、やはり興味をひかれるだろう。

このように、好きな人を振り向かせるためには、第三者の協力をもらうことが効果的と言える。本人が魅力的になることも必要であるが、しかし、どれだけ魅力的になっても、それが伝わらなければ意味がない。

魅力的ということをより効果を発揮させるため、好きな人が信頼している人を協力者として得ること。そして、協力者から信頼できる情報として、好きな人に本人の魅力を伝えてもらうこと。

マーケティングから学ぶ一つの恋愛術である。

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