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【解決編】「3つのキャッシュフロー」を見れば、会社のお金の流れは簡単に把握できる②

こんにちは、信金マン兼個人コンサル事務所代表の山西です。

前回の記事では、中小企業の経営者が資金繰りを把握できない理由、そして3つのキャッシュフローの大小関係を見れば会社のお金の流れを簡単に把握できることをご説明いたしました。


ここからは、3つのキャッシュフローからどのようにお金の流れを把握できるか見ていきます。

「3つのキャッシュフロー」とは?

キャッシュフローとは、簡単に言えば「現預金の増減」のことです。このキャッシュフロー(現預金の増減)には、3種類しかありません。

■営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)
 本業による現預金の増減
■投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)
 設備の購入・売却による現預金の増減
■財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
 借入・返済による現預金の増減

この3指標の大小関係を見ていけば、会社のお金の流れが大まかに分かりますし、今後の資金繰り戦略も見えてきます。

キャッシュフローって決算書のどこに載っているの?

では、この「3つのキャッシュフロー」は、決算書のどこに載っているのでしょう。

おそらくあなたの会社の決算書には載っていないと思います。それもそのはず、中小企業には「3つのキャッシュフロー」が載っている「キャッシュフロー計算書」の作成義務がないのです。

キャッシュフロー計算書の簡単な作成方法

手元にキャッシュフロー計算書がない場合はどうするべきか。

これも簡単で、無ければ作れば良いのです。慣れれば5分もかからず作れるようになります。

まずは、お手元に直近2期分の貸借対照表、損益計算書をご準備ください。
そして以下の計算式に従って、数字を抜き出して下さい。

営業CF=当期純利益+当期減価償却費−運転資金の増加分
 ※運転資金=売掛金+受取手形+棚卸資産−(買掛金+支払手形)
投資CF=有形固定資産の増加分+当期減価償却費
財務CF=借入金の増加分+資本金の増加分+当期配当金

厳密に言えば、もっと細かく見ていく必要がありますが、最低限、簡易的に算出すれば問題ありません。

「3つのキャッシュフロー」の基本的な見方

キャッシュフロー計算書でお金の流れを見る方法は非常に簡単です。3つのキャッシュフローのうち、「プラスの項目からマイナスの項目へお金が流れている」と見ればいいだけです。

例えば、以下のような企業があったとします。
・営業CF 200万円
・投資CF -100万円
・財務CF -50万円
この場合は、営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスなので、本業で稼いだお金を使って設備投資や借入返済をしているということです。そして差引の50万円は手元現預金として残ります。

たったこれだけで会社全体のお金の流れが把握できます。

ここからどうやってお金の流れの善悪を判断して、経営の意思決定につなげていけば良いのでしょうか。これも非常に簡単です。

資金繰り健全性の2つの判断基準

①営業CFがプラスか(営業CF≧0)
②フリーCFで財務CFを賄えているか(フリーCF≧-財務CF)

※フリーCF=営業CF+投資CF
この2つを満たしていれば、健全なお金の流れだと判断できます。なぜなら、本業でキャッシュを生み、その範囲内で借入返済が出来ているためです。

例えば、当期首で1,200万円の借入(5年返済)で設備投資をした以下の企業の場合はどうでしょう。
・営業CF 100万円
・投資CF -1,200万円
・財務CF 1,000万円
 こちらの場合、きちんと本業(営業CF)で稼げていますが、設備投資(投資CF)が大きすぎて判断基準の②を満たしていません。(借入返済額にもよりますが)借入のお陰で当期の資金繰りは良いですが、設備投資の借入が増えているため、翌期以降の資金繰りの懸念(財務CFの悪化を賄えない)があります。設備投資が身の丈に合っていなかったと判断できます。

なお、巷では「フリーCFはプラスでなければならない」と言われますが、必ずしもそうではありません。設備投資をしたタイミングでは、それが適切な投資であったとしても、その瞬間だけフリーCFがマイナスになることはあります。しかし、長期的に見て営業CFで借入返済を賄えるようでしたら問題ありません。

キャッシュフロー分析から、経営の意思決定につなげる方法

以上のキャッシュフロー分析は、資金繰りの指標設定に活かすことができます。この具体的なイメージが分かれば、今後の経営の意思決定の指標になります。

具体的には、「資金繰り健全性の判断基準」を基に、来期の「3つのキャッシュフロー」の数値を定めていけばいいのです。

例えば、当期の業績が以下のような企業があるとします。
・営業CF 400万円
・投資CF −200万円
・財務CF −300万円
設備の更新で来期の中間ごろに500万円(5年返済)必要となり、そのお金は全額借入で賄う予定です。また、別の既存借入返済が200万円あるとします。とりあえず他の設備投資や借入は考えていません。

この時点で、
・投資CF -500万円
・財務CF 250万円
※財務CFは、新規借入500万円-(既存返済200万円+新規返済50万円返済)
は確定しています。

そして、「資金繰り健全性の2つの判断基準」を満たすためには、少なくとも、営業CFで250万円(「投資CF+財務CF」を賄える金額)を稼ぐ必要があることが分かります。

これで、来期の資金繰りの指標設定ができました(営業CF250万円、投資CF-500万円、財務CF250万円)。

なお、この設定に無理があるのであれば、投資CFや財務CFを見直して、新たな設備投資や借入条件の変更を検討する必要があります。

ここまでくれば、現在のお金の流れだけでなく、来期のお金の流れのイメージもかなり明確になってきます。

そして、この営業CFが分かれば、目標となる営業利益や売上高も設定することができます。目標売上高の設定方法等については、どこかのタイミングで記事にする予定です。

とにかく目標設定のためには、「3つのキャッシュフロー」のうち、確定しているところから埋めていき、残りを自動的に算出していくイメージです。

「3つのキャッシュフロー」からお金の流れを把握する手順まとめ

①「3つのキャッシュフロー」を把握する
②プラスの項目からマイナスの項目にお金が流れていることを認識する
③「資金繰り健全性」を判断する
④「資金繰り指標」を設定する

以上です。いかがだったでしょうか。

本記事では、必要最低限のお金の流れの把握方法にしか触れていませんが、大局的な経営の意思決定に大いに役立つものです。さらに詳しく分析する方法は、いつか記事にする予定です。

次回予告

次回は、「3つのキャッシュフロー」を実践で使えるようになるため、今回の内容を踏まえた「3つのキャッシュフロー パターン別ドリル」を数問を投稿予定です。

全て実務で現れたものをベースにしたドリルにする予定なので、ぜひ実際の経営に活かしてみてください。


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