「ひととなり」 part5 自作小説
「まず、俺がお前に協力するうえでの条件だ。これを承諾できないのならこの話はなしだ」
「わかったわ」
「条件は三つだ。一つ目、学校で俺に話しかけないこと。基本的なやり取りはメールで行う。緊急の場合は電話しろ、直接話しかけてくるな」
(やっぱり学校で話しかけてくるなってのは本音なのね...)
「二つ目、お前がどんな復讐をしようとしてるかは知らんが、法律を犯すな」
「そこは大丈夫よ。私捕まりたくないし、復讐が終わったら自殺するつもりだから」
「なんで?」
「そもそも生きる理由がないからよ。生きてて楽しかったことなんて生まれて一度もないわ。今までだって死んだように生きてきたわ」
「そうか、よく耐えたな」
「...あなたに慰められる筋合いはないわ」
「...そして最後に三つ目、月4万俺に渡せ」
「いいわよ」
「意外とあっさりだな。正直これが一番きついと思ってたんだが」
「お父さんのクレカがあるから基本何でも買えるわ。流石に月に100万も使ったら怒られるけど、4万あなたにあげるくらい大したことないわ。そのかわり、お金あげるんだからしっかり働いてもらうわよ」
「元よりそのつもりだ」
「なら、交渉成立ね」
とりあえず、協力してくれる運びになった。
こちらとしてはとてもありがたいが...
「じゃあ、次の話に移りましょ」
「そうだな、まずは俺は何をしたらいい?」
「わからないわ」
「は?」
「まだ何も考えてないもの。だからまずは策略を練るところからね」
「まじかよ...」
「1軍は最後でいいわ。初手は男子と2軍あたりを攻めましょう」
「俺も賛成だ」
そういって私はクラス名簿を机に広げた。
「まずは、私と大原君、それに私と関係が全くない人を名簿から消して...」
そういって私たちを含め7人にバツ印がつけられた。
「お前他全員にいじめられてんの?」
「あなたデリカシーないのね。そんなんだとモテないわよ」
「余計なお世話だ」
「まぁ常習的にいじめてきてるのはクラスの半分くらいだけど」
「そんなに...」
「一度や二度ならほぼ全員が該当するわね」
「まずは、この二人ね」
そういって私は、二人の名前に丸を付けた。
2年1組23番新名莞吹と2年1組24番早野俊作。
「こいつらってお前と関わりあったか?」
「まぁ関わることないからね。とりあえずあなたは新名莞吹と早野俊作の1週間の行動を調べてちょうだい。」
「わかったけど、お前は何すんだ?」
「待機よ」
「は?」
「私は週7でいじめられてるの。いじめられてる間は私はその場に拘束されてるようなものよ。だから自由が利くあなたに任せてるんでしょ。それにもし自由の利くときがあれば私は1軍女子の金魚の糞を一人片づけるわ。考えがあるの」
「了解。じゃあ、また1週間後にここで」
「わかったわ」
それからその日は解散し、私は帰宅した。
ガチャ...
自宅のドアを開けるとそこには鬼の形相でこちらに走ってくる執事がいた。
「お嬢様!どちらにいらっしゃったのですか?お迎えの車が学校の前でお嬢様をお待ちしていたのですよ!」
(そうだった...車が表にいるから裏口から出たんだった...)
「と、友達と遊んでただけよ。心配かけて悪かったわね」
執事はとても安堵した様子で、胸をなでおろした。
「そうでしたか。今後は一度運転手に連絡を入れてからにしてください」
「わかったわ。今度からは必ず一本連絡を入れるようにするわ」
「絶対ですよ!」
「わかったわよ」
「ところでそのお洋服はどなたのでしょうか」
「あ~これは友達に借りたのよ。転んで泥だらけになっちゃったから...」
「危ないので気を付けて外出してください。万が一のことがあったら怒られるのは私たちなのですから」
「次からは気を付けるわ」
そういって私は自室に戻り、着替えを済ませて彼から借りた服を洗濯するように執事に頼んだ。
「それにしても彼、随分と私への協力に前向きだったわね」
私は、彼に少し疑いを持ってしまったようだ。
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