Culture|Moi Sauna Moi Towada 〈03.ヴィヒタで感じる十和田の森〉
フィンランドが発祥とされるサウナ。ここ数年は日本でも人気が高まり、「ロウリュ」や「ヴィヒタ」といったフィンランド特有のサウナ文化も浸透してきていますが、まだまだ知らないことも多いはず。この連載では、今年の春にオープンしたサウナ施設・十和田サウナさんに、サウナにまつわる様々な話を伺います。
こんにちは。十和田サウナです。第1回、2回でもお伝えしたように、十和田サウナは五感全てをフル活用して、十和田の自然を感じていただくためのツール。皆さまにサウナを通して自然体験を提供することを目的に活動しています。
100℃近いサウナに入った後の水風呂は、目の前にある十和田湖。火照った身体を冷たい水でキュッとしめてから、森の外気浴へ。自然と自分が一体化するひとときを、じっくりと味わっていただくためのサウナが、十和田サウナです。
十和田ならではのウィスキング体験
そして、今回お話するのは「ウィスキング」のこと。十和田サウナではまだ本サービスには至っていないものの、今後自然体験のひとつとして取り入れるべく、日々研究を重ねています。(将来的には北欧に修業へ!)
そもそもウィスキングとは、フィンランドやロシア、東欧などで「ヴィヒタ(シラカンバなどの枝葉を束ねたブーケ)」を用いてマッサージをすること。血行促進などの作用をもたらし、使用する植物のアロマ成分の効果も期待できるといわれています。
北欧などでは自生するシラカンバを利用しますが、残念ながら十和田の土地にはほとんどありません。ないものを他の地域から仕入れるより、せっかくなら地元の植物を使って十和田らしいヴィヒタを作ってみたい!と私たちは考えました。十和田の森に自生する植物を束ねて顔に近づければ、その香りが鼻から身体に流れ込み、脳内は十和田の香り一色に。肌にそっと触れさせれば、森がまるで自分自身を抱きしめてくれるような感覚に。サウナ室内でもそんな体験ができたら…。
十和田の森でよく見かけるのは、落葉広葉樹のブナをはじめ、ミズナラ、カツラ、カエデやクロモジなど。特にクロモジの鼻にぬけるスッとした爽やかな香りは、感覚的にとても心地がよいのと、リラックス効果や肌への保湿も期待できると知り、ヴィヒタで試してみようということに。もうひとつはダケカンバ。十和田湖を囲む外輪山でも標高が高いところに自生しているのですが、シラカンバと同じカバノキ科。鎮静効果やリラックス効果があるということで、まずはこのふたつをメインに日々試作、実験をしています。(許可を得た場所で採取しています。)
十和田ヴィヒタの試作に密着
十和田サウナの管理人が森へ入る現場に密着してみます。十和田湖の外輪山、標高約750mに自生するダケカンバを採取しに森へと入ります。
枝がしっかりしていて、葉肉が厚いものを選びます。
束ねやすいよう大きさで分類。
麻ひもで縛る部分の枝は長さをそろえて剪定ハサミでカット。しっかりと縛ります。
日陰で少し乾燥させます。こうすることで香りがよく出るのと、葉のハリが増して身体に触れた時の程良い刺激が最高なのです。
サウナでもおなじみのロウリュを。アロマウォーターでなく、乾燥させたヴィヒタにしっかり水を含ませて、熱々のサウナストーンで温めるとナチュラルな香りがサウナ室全体に広がります。クロモジであればスーッとさわやかな香り、ダケカンバはウッディな土を思わせるやさしい香りが。ヴィヒタ効果でより深い自然の世界へと誘ってくれる瞬間です。
ウィスキングの提供は少し先の話になるかもしれませんが、ヴィヒタを使ったセルフロウリュは先行してお届けする予定です。
自然と共存する場所を目指して
今回は、十和田の自然を利用したヴィヒタについてお話ししましたが、これはフィンランドにある「自然享受権」にもつながると考えています。ありのままの自然を敬いつつ、誰もが自由にそれを利用できる権利。キノコ狩りなど森の恵みをいただくこと、夏の湖水浴や冬のスキー、もちろんサウナも。フィンランドでは人が自然を守りながらも、当たり前に共存して楽しむことができるのです。
私たち十和田サウナも、サウナやヴィヒタなど、かたちあるものを取り入れるだけではなく、自然に対する考え方として、自然享受権を十和田湖へ落とし込んでいきたいと思っています。十和田サウナを訪れる人が、本質的に自然を理解し、楽しめるような場所をみなさんに提供できるように。日々精進していきます!
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