ラオス料理を考える

和・洋・タイの料理を齧って、ラオスに住んで帰国して、ラオス料理を追いかけています。

ラオス料理を考える

和・洋・タイの料理を齧って、ラオスに住んで帰国して、ラオス料理を追いかけています。

最近の記事

旅のメモ7 旅先のラープ

「ラオス料理とは何か?」という問いかけが始まった同時に「ラープとは何か?」というテーマが自然発生しました。 「ラオスの代表料理」、「幸せの料理」、など紹介されていますが、タイ北部や東北部(イサーン)にもラープはあります。ラオスとタイ、その違いは何でしょうか。そして、ラオス国内の地方ごとのラープの違いは何でしょうか。類似している料理、サー、ゴイ、などとの違いは何でしょうか。考えていくと色々なことが出て来ます。 ラープ・コム ラープを広義、「幸せ」と訳すとしたら、これは「苦

    • 旅のメモ6 ラオスの歴史と食文化

      ラオスから帰国してから、あるきっかけで「ラオス料理とは何か?」を知りたくなり、また料理の道に戻りました。ラオス料理を知る、それは、ラオスを知る、そして「ラオ(族)とは何か?」という質問にも繋がってきます。 ラオ族は北から流れて来た、でも、国家としてのラオスに繋がる王朝は、南からやって来たということに、歴史上なっています。 この南北の流れを食文化の流れに照らし合わせてみると、北からの稲作に伴う熟鮓(なれずし)などの発酵文化に対して、南からの魚醤文化。これらが融合してできたの

      • 旅のメモ5 少数民族の村

        2017年から足かけ7年(コロナ禍を除き)通っている村があります。 彫刻、織物、生活様式など、すべての文化が精巧で、食に関しても、電気もガスもない生活の中で、様々な加工技術を継承してきました。そんな村で見つけた、押し出し式の食品。 カオ・フン 浸水した米を潰した”しとぎ”に石灰を加えて加熱しながら練り込んでいきます。それを小さな穴のあいた容器に入れて押し出し、冷却されると固まります。動画では線状ですが、塊で冷却して切り分けたものもあります。中国では、涼粉(リャンフェン)

        • 旅のメモ4 ルアンナムター

          都市から村へ。 食べものも少しづつワイルドになってきます。 村のお寺では、男衆が集まって何やら賑やかです。聞くと、寺の大太鼓が破れたので、皮を張り替えていました。 新しい皮を張り、三日三晩、水で濡らしながら男衆が交代で叩き続けます。 その完成の間近、食べられていたのが、破れてしまった旧い牛皮を柔らかく煮て、米、ニンニク、唐辛子を常温でつけ置いた乳酸醗酵食品。 ナンソム この地域では、昔から魚醤を好まず、代わりに塩漬けや乳酸醗酵の肉醤、納豆味噌の旨みを調味の中心に置

        旅のメモ7 旅先のラープ

          旅のメモ3 古都ルアンパバーン

          この4年間に起きたことを、おさらいしながら、少しづつ北上しています。 『ラオスにいったい何があるというんですか?』というタイトルでエッセイ集を上梓されたのは村上春樹さんですが、一帯一路の大義のもとに、『ラオスに我あり』と内外にホットトピックを提供したのは高速鉄道でした。 かつての静寂と安らぎ、美しく小さな町並みを保存する古都ルアンパバーンは、突如生まれた、かつてない『動』を、受け、流し、いまバランスを取りつつある、そんなようにも見えました。かつてを知る旅人は、古都の秩序と

          旅のメモ3 古都ルアンパバーン

          旅のメモ2 バンビエン

          ビエンチャンを抜け出して、観光地バンビエンへ。風光明媚な景観と自然派アクティビティが盛り沢山で西洋の特に若者向けに人気のエリアになっている。 だから、食べ物は、正直、全く期待していなかった。ピザ、パンケーキ、ハンバーガー、最近では、韓国焼肉やガチ中華まで、外国料理の看板が目立つ。 そんな中、ナイトマーケットの始まりに、一際素朴な露店を発見。聞くと、川越えた洞窟の近くの村からやって来たそう。 私たちの伝統お菓子ですよ、と。 包まれたバナナの葉を剥いていくと、ジャイアント

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          2024年2〜3月 旅のメモ1 ビエンチャン都

          4年ぶりのラオス、そして、首都ビエンチャン。 コロナ前の年一の渡航でも、都市に入っても、すぐに田舎に向かうことが多かった。今回は、いくつかのミッションのため、いつもより長い5日間のステイになり、でも、基本的には旅行気分、何をしようかな、なんて考えてた筈が・・・ ここ近年は会いたい人に会えなくなることも多くなり(これからは更に)、そう思うと、急遽、いろんな人に連絡をとり始め、みなさん忙しい中、お時間作ってくださって・・・ という感謝のビエンチャン滞在になりました。 それと

          2024年2〜3月 旅のメモ1 ビエンチャン都

          ラープについての考察 2020

          ラオス料理の追求を始めるきっかけの一つとなったのがラープという料理。幸せという意味を持ち、ラオスの祭事には欠かせない。親族や友人と楽しく食事することを大切にするラオス人の「幸せの形」がここに込められている。人の集まるところに「ラープ」あり、「ラープ」を分かち合い、各々が家路に着く。 では、なぜ、ラオスの人々は、この料理だけに幸せという意味を込めたのだろうか。その追求を3年前から始めた。そして、調べていくと、ラープには同類の様々なバリエーションが存在することに遭遇した。 ラ

          ラープについての考察 2020

          穀醤トゥアナオ

          東南アジアといえば魚醤を多用することで有名ですが、日本の醤油や味噌のように大豆から作られた穀醤もあります。 ラオス北部のルー族というタイ系諸族の一派は、トゥアナオという食品を作り日常的に使用しています。トゥアは豆、ナオは腐ったいう意味で、腐った豆、つまり、納豆のことですが、日本のように生食はせず、納豆として発酵させたものを潰し、塩と唐辛子で半年以上漬け込み、さらに熟成させます。味噌のようなペースト状でも、納豆の香りを持つ、調味料が出来上がります。 炒め物の際に、にんにくや

          穀醤トゥアナオ

          なれずし

          大陸から稲作とともに日本に伝わった熟鮓(なれずし)は、日本の寿司の原型と言われています。 ラオスのソムパーという食品は、ソム(酸っぱい)パー(魚)の単語が合わさっていますが、魚の切り身に塩、もち米をまぶし常温で2〜3日置くと、乳酸発酵による乳酸菌でコーティングされ、雑菌からの腐敗を防ぎます。冷蔵庫が無かった時代の保存の知恵ですが、現在でも、焼いたり、揚げたり、人々に好んで食されています。魚肉をミンチにして塩、もち米、にんにくと一緒にバナナの葉で包み発酵させる食品(これもソム

          香る物

          ラオス料理書に、頻繁に登場するクアン・ホーム(香る物)という項目があります。 ホムデーン(赤小玉ねぎ)、ガティアム(にんにく)、マクペット(唐辛子)をグリルして乳鉢で叩き潰したものを指し、様々な味のベースとなります。ここに料理に合わせたハーブを加えていきます。 クアン・ホームと一緒に叩き潰すこともあれば、スライスや叩いて繊維を柔らかくしたものを煮込んだり。 玉ねぎは、グリルすることで、独特の臭みが抜け、甘みが増します。にんにくは皮付きでグリルすると中が蒸し焼き状態になり

          ハーブの使い方

          熱帯の国ラオスでは様々な食用ハーブが使われます。まずは、東南アジアで使用頻度の高いレモングラス、ライムリーフ(こぶみかんの葉)、ガランガル(南姜)、このほかにタイバジル(台湾バジル)、レモンバジル、スペアミント、ディル、のこぎりコリアンダー、パクチーなどがあります。ちなみにラオスではパクチーというとディルのことを指し、日本でパクチー(香菜)と呼ばれているものは、ラオスではパクホームという名前になります。 レモングラス、ライムリーフ、ガランガルは、乳鉢で叩き潰しペーストにして

          魚醤パーデーク

          魚醤といえば、日本ではナンプラー、ヌクマムが有名です。ナンプラーはタイ産、ヌクマムはベトナム産。お隣のラオスでは、パーデークという魚醤が作られています。ナンプラーやヌクマムが海魚を使うのに対し、ラオスは海がないので川魚を使います。 違いはそれだけではなく、ナンプラーやヌクマムなどの魚醤は魚を塩蔵して長期発酵させることで滲み出た液体を濾して完成形としますが、ラオスでは、魚の塩蔵に米糠を混ぜ漬け込みます。これで乳酸発酵を促し、独特の風味と旨味が醸成された魚醤が出来上がります。

          米の使い方

          ラオスの主食はもち米(カオニャオ)です。一晩浸水したもち米を翌朝早くに独特な蒸し器(フアット&モー・ヌン・カオ)で蒸し上げ、平らな板の上に広げ蒸気を一度逃し、適度な保湿性のある竹編みの籠(ティップ・カオ)に入れて保存します。夕方に硬くなったもち米は、また蒸し直して食前に並びます。 加熱調理する前の、もち米の粒を煎り、乳鉢と乳棒で叩いてパウダー状にすると、カオ・クア(煎米粉)が出来ます。ラープなどの和え物に香ばしさを加味し、調味料と具材を絡ませる役目も担います。 食べ残った

          料理2

          代表的なラオスの料理。 4 ピン ピンはグリルのことを指します。その中で、ピン・ガイ(鶏のグリル)は代表的なもの。炭火を使い遠火でじっくりと、が本場ラオスの基本。首都ビエンチャン中心部のメコン川沿いがアスファルトで覆われていなかった時のこと、赤土とメコンに沈む夕日を眺めながらビアラオ(ラオス国産ビール)を片手に、ピンガイとカオニャオ(もち米)が最高のひと時でした。 5 オ 煮込み。サカーン(ペッパーウッド)を使った北部ルアンパバーンのオ・ラームが有名ですが、中部や南部にも

          料理1

          ラオスに見られる代表的な料理を挙げてみます。 1 ラープ 肉や魚をミンチ状、またはスライスし、魚醤、香草、酸味果汁、唐辛子、煎米粉などと合えた常温菜で生野菜などを付け合わせに食べます。材料には、鶏(ガイ)、野鶏(ガイ・パー)、合鴨(ペット)、魚(パー)、蛙(ゴップ)、牛(グア)、水牛(クワーイ)、豚(ムー)など様々な自然食材が使われています。加熱して粗熱が取れてから各種材料を合わせた常温菜が一般的ですが、牛、水牛、魚の生食を好む人もいて、ラオス北部やタイ北部では、豚の生食も